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NO DIE!!!  作者: 雨中仁
8/8

路地裏抗争









その戦いの一部始終を理解するには、少し時間がかかった。








あの兄弟が路地裏の入り口に現れ、一言


「その汚ぇ手どけろ、ウスノロ」


と発した瞬間、フレデリカ兄弟の兄、カルロスが小銃を取り出し


3発。


小銃を3発撃った。


それと同時に兄弟2人同時に走り出す。


俺の胸倉をつかんでいた男はこのような状況に慣れているのか


即座に胸ポケットに持っていた銃を取り出し、こちらは2発撃った。


カルロスの弾丸は俺達2人を囲っていた男達のうち3人の膝に命中し、


兄弟はその男達の背中へ飛び乗り、頭上へ飛び上がった。


反対に男の弾丸は兄弟たちに命中しておらず、頭上の兄弟に再び照準を合わせようとしていた。




カルロスは胸ポケットから何かを取り出し、男達へ投げつけた。


それは日本でいう所謂クナイ。


鋭い一撃は頭上からの投擲ということもあってか、顔面に直撃するものもいた。


弟のアルフレッドは、銃を数発撃ち、男たちを倒していく。


兄弟が着地した時には、金髪の男一人を除いては地に伏せていた。







「...何モンだ、てめぇ...」


男が震えた声で漏らす。


この一瞬で大人数を2人で無力化するなど、常人にできたものではない。


そう。彼らが誰なのかは俺達も知っている。


自らの殺しの技術に絶対の自信を持った兄、カルロス・フレデリカと、


武器、道具作成によって兄を支援する弟、アルフレッド・フレデリカの兄弟。


昨日まで俺達2人を殺そうとしていた2人だ。





「...おい、そこの2人さん」


「ん!?な、なんだい」


「ここじゃ話すには少々埃塗れだ。場所を変えるぞ」


「お...おう...」


この殺陣を見せられたのだ。少々の威圧感という物では語れない何かが俺を抑えつけた。


一度は彼に標的にされたとはいえ、こいつのオーラには敵わなかった。


「い、行こうか...」


「...えぇ」


辻宮さんも同じように彼の威圧感に押されたのか、足早に路地裏を出ようとした。


その時。






「ま、待てごらぁ!!!!!!」


突然叫び声が響いた。


声の主は先程の金髪の男だった。


その手には先程まで構えていた銃があった。


「この俺を無視していこうなんざ気に食わねぇ連中だ!!ここで全員地獄送りにしてやるよ!!」


「...はぁ...」


カルロスがため息をつきながら振り向く。


「あのなぁ...お前が金髪って時点でキャラ被ってんだよ。そんな奴と長時間いてみろ。俺の金髪が弱くなるだろ。なぁ?」


「わけわかんねぇこといってんじゃねぇぞ!!タコ!!!!」


「ほぅ、ウスノロにタコと言われたか。それに、誰の頼みもないのに人に地獄へ落とすなんて言ったもんじゃないよ。俺もな、お前を地獄送りにしたくて仕方ないんだぜ?実際。ウスノロにタコなんて言われちゃあこっちも堪らねぇぜ?」


「うるせぇ!!!地獄に落ちやがれこの悪魔!!!!」


男は気が動転しているのか、目が血走っている。


銃を構える手も震え、今にも引き金を引きそうな勢いだ。


「まずい、あいつ撃つぞ、ここは逃げよう」


「......(いや、兄さんを撃つなんてできないよ、あいつは。)」


「...え?」


「......(あんな奴に殺せるわけがない。兄さんが。)」


弟のアルフレッドの兄への信頼感は途轍もないものだ。


兄が自信家というのも相まって、二人は相当な信頼関係にあるようだ。


「いいだろう、引いてみろよ、その引き金をよ。」


カルロスがゆっくりと歩みを進める。


「く、来るんじゃねぇ!それ以上来たら撃つぞクソ野郎!!!」


「撃ってみろって言ってんだよ、なぁに、引き金引くだけだろ?簡単じゃねぇか、やってみろよ」


1歩、2歩と歩みを進めるカルロス。


金髪の男の震えが全身に移っていく。


さっきの俺のようだ。






「う、うおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!」






男が叫んだ。ついに引き金を撃つようだ。


カルロスとはまだ距離がある。


その時だった。






一瞬この場が凍り付くような殺気に埋め尽くされた。


先程までゆっくりと歩みを進めていたカルロスが、既に金髪の男の背後に立っていた。


カルロスは男の腕を持ち、腕を折り曲げさせた。


金髪の男が持っている銃の銃口を










金髪の男の頭に向けさせて。










「..................撃て。」











カルロスは小さな声で呟く。




金髪の男はカルロスを撃とうとして銃の引き金を引く。




その刹那、カルロスの手によって男は自分の頭に銃を向けていた。




結果はわかりきっていた。















バン!!!という大きな銃声とともに、金髪の男は頭を振っ飛ばして死んだ。



「......」


「......」

  

「......(ね、兄さんを撃てても、()()()()()()()()()訳がないんだよ。)」


俺と辻宮さんは固まった。


この男にこんな芸当ができるとは、いや、思っていたが思いたくなかったのかもしれない。


出来るかもしれないと思っていたのかもしれない。


この時2人は確信した。


この兄弟は恐ろしいと。





「...と、こいつは俺が殺したんじゃない。こいつは自分の手で自分の脳天をブチ抜いた。わかったな?」


カルロスが何食わぬ顔で路地裏を出る。


路地裏の外は明るく、いつもの静かな街に戻っていた。


...遠くから聞こえる大量のサイレンの音は例外だが。


「とにかく場所を変えるぞ、そこでたっぷりと話を聞かせてもらうぜ、お二人さん」


平然とした態度に、俺は驚きを隠せなかったと同時に、理解した。


そうだ。この兄弟は何人を人を殺してきた男だ。


人を1人自殺させた(?)くらいで気が病むような奴らじゃない。


「...お前ら、何もんだよ...」


俺は思わず口に出してしまった。


この男たちに恐怖と疑念、単純に知りたいという好奇心もある。


「自己紹介は後だ。...まぁ、これだけは言っとくぜ。」


カルロスが振り返る。













「一流の殺し屋兄弟さ。」













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