あらくれ兄弟
初めまして、雨中仁です
今回はこの作品に興味を持って頂き誠にありがとうございます。
よろしかったら感想を書いて頂けると幸いです。
皆さんの意見、お待ちしております
「人は幸せになるため生まれた生き物です。」
「ほぅ、その心は」
「そのために生きているからです。」
「ほぅ、ほぅ...」
「人が生きる意味。それこそが幸せになるためだからです。」
「...それで、これとそれは何の関係があるんだい?」
「えぇ、我らが神、”ディオス様”についていけば必ずやその幸せに巡り合えるからです。」
「...そうか。」
「えぇ、今なら入信料は頂いておりません。どうです?貴方も幸せになってみては。」
「あぁ...じゃあ俺もしあわせになれるんだね?」
「おぉ、でしたらここにサインをグホォッ」
「これが俺の幸せ。わかる?」
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小さな部屋の中に二人の男がいる。
一人は退屈そうに寝ころぶ金髪の男、一人はせっせと何か作業をしている小柄で黒髪の男。
「...なぁ、つまらないと思わないか弟よ。」
「......(なんだい兄さん)」
「今日稼げたのはたったの50pis。明日もこの調子だと、俺たち遊んで暮らせないということだ弟よ。」
「......(あぁ、金がなさすぎて今の生活がつまらないってことかい兄さん)」
「そうだ。今の殺し屋の仕事が俺たちの性分に合ってるのは間違いないだろう?弟よ。」
「......(じゃあ今の仕事を頑張ればいいんじゃないかな兄さん)」
「そう簡単に行くもんじゃないんだよこの仕事。そこでひとつ提案があるんだ弟よ。」
「......(なんだい兄さん)」
「出稼ぎしようぜ。もっと華やかな街に。いいアイディアだと思わないか?弟よ。」
「......(いいね、でも街への移動手段はどうするんだい?)」
「あー...歩いてもでかい街には半年くらいかかるからなぁ。...そうだ、やっぱり貨物船に乗り込んで運んでもらおうぜ弟よ。」
「......(いいアイディアだね。作戦は任せるよ。兄さん。)」
「そうと決まれば出発だ!!!行くぞ弟よ!!!」
「......(あぁ、そういうと思ったよ兄さん。)」
こうして殺し屋の兄、カルロス・フレデリカ、弟のアルフレッド・フレデリカ兄弟は華やかな街行きの貨物船へと乗り込んだのであった...
~数日後~
「......(ここの食料を食べて生活するっていいアイディアだと思ったんだけどな)」
「まだまだ甘いなぁ?あんな廃れた町から華やかな街行きの貨物船にそんな大層な飯があると思うか?弟よ。」
「......(ううん、よく考えるとそんなことあるわけなかったね兄さん)」
「ここにあるのはTHE・小麦くらいだ。ここはあえて一息つこう。釣りでもしようじゃないか、弟よ。」
「......(いいアイディアだね、兄さん)」
『誰かいるのか!?』
「おぉっと、早いとこ釣り場を決めないと、他の奴にとられちまうぞ弟よ。」
「......(そうだね、早く行こう兄さん)」
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「いやぁしっかし釣れたなぁ弟よ!!!!」
「......(これは大漁だね兄さん。)」
『待てゴルァアアアアアア!!!!!!!!』
『侵入者を捕らえろ!!!!早く!!!!!』
大きな袋を持った兄弟と、それを必死に追いかける船員達。
彼らの言っていた”釣り”とは、わざと騒ぎを起こし、その隙に船員達の食料を奪うという物だった。
そう、彼らの抱えてる大きな袋には、この船の船員達全員の食料が入っているのだ。
「こんな大量に釣れたんだ、今夜は盛大に祝おうぞ弟よ!!!」
「......(そうだね。...こんな素敵な日だよ、一体どうやって祝うんだい兄さん)」
「...うへへ」
不敵に笑みを浮かべるカルロス。
「きぃぃぃぃまってんだろぉぉぉぉぉぉ!?!?!?!?!?!?」
カルロスは突然後ろに振り返った。
「シャンパン開けてぇぇえええ!?!?!?」
腰にぶら下げた袋から液体の入った小さな瓶を取り出し、
「でっかい花火でも打ち上げッかなぁあああ!?!?」
それを思いっきり追手にぶちまける。
割れた小瓶から飛び散る液体。それとともに液体は爆裂し、追手や付近の部屋もろとも吹っ飛ばした。
......勿論、兄弟も。
「ぃぃぃいいいいいいやっほぉぉぉぉおおおおおおううう!!!!!!!!!!」
兄弟はその爆風に乗って通路の先の窓を蹴破り、自らを窓の外へ放り出した。
「アルフレッド!!!!!!!」
「......ッッ!!!(任せて!!)」
窓の外へ放り出された途端、アルフレッドは瞬時に真下の海へ何かを放り投げた。
二人はそのまま海へと落ちていく。
......と思ったその時、突如海からブワッッッと大きな青い袋が膨らんだ。
いや、袋というよりはボートだ。
二人はその上に着地し、そのまま貨物船から離れていく。
「いやぁ、楽しいパーティーはここらへんにしとこうぜ弟よ。」
「......(楽しんでたのは兄さんだけだよ。でも、これでまたゆっくり”釣り”が楽しめるね兄さん。)」
「お?あ、あぁ、そうだったな。この夜釣りの趣を、たっぷりと感じようじゃあないか弟よ。」
~数か月後~
「......めっちゃ時間かかったな弟よ」
「......(壊血病まっしぐらだよ兄さん)」
「ここがあの貨物船の目的地だったのか?弟よ。」
「......(うん。記憶が正しければ、確かにここが目的地の...
”日本”だよ、兄さん。」
「うっひょおおおおおおおお!?!?!?」
彼らがたどり着いたのは、日本の”東京”という場所だった。
「見ろよ弟!!見渡せば人!人!人!こんな数見たことないぞ弟よ!」
「......(そうだね。人がたくさんいるとは思っていたけど、まさかここまでだなんて。...兄さん。)」
「...ん?どうした弟よ。」
「......(この格好だと逆に目立つ気がするよ兄さん)」
「...いや、もう目立ってるぞ」
みずぼらしい...というよりは少し異質な格好の兄弟の姿を見て、通りすがりの人達は目を奪われた。
『なんだ?あのコスプレ』
『すっげークオリティ高ぇ...』
『あんな汚れのメイクまでして...さぞかし気合入ってんな...』
「...お前は喋るのが苦手だからよ、俺がちょっくら宣伝してきてやるよ!」
「......(あぁ、頼むよ兄さん。)」
「えー、コホン、やぁやぁここにいる紳士淑女の方々!ここにいるのはかの有名な殺人兄弟、カルロスとその弟!!!フレデリックでございます!!!皆様、日ごろの不満溜まってませんかぁ?ここにいる兄弟が、その不満解決いたします!嫌いな人間、不愉快な人間!お金を払えば誰でもぶっ壊しちゃいます!!!どうか!!どうか我々カルロス、フレデリックの兄弟をよろしくお願いいたします!!!!」
『...え?殺人兄弟?』
『あんな設定まで作って役に入り込んじゃってるよ...かわいそう』
『何言ってんだろうあの人達...』
「...ふぅ、これで噂が広まって依頼が来るようになるだろ。な、弟よ。」
「......(完璧だよ兄さん)」
行き交う人々は徐に写真を撮ったり、指さして笑ったりして、兄弟のことを何かのイベントと勘違いして喜んでいる。
『そこの兄さんがた!!ほんとに何でもぶっ壊せるなら、何か壊して見せてよ!』
とある一人の男が、マジックショーと勘違いしたのかヤジを飛ばす。
「ほぅ、ほぅ。お望みとあらば壊すしかないよねぇ弟よ。」
「......(ここでキメれば僕らの評価も確実だよ兄さん)」
「よぉーし!お兄さんがんばっちゃうぞ!ロケェェェットセェェッツ!フレデリック!」
「......(了解!!!)」
カルロスとフレデリックは大きなロケットランチャーを用意した。
『うわ、ロケランだぜあれ。』
『何が起こるんだろ...』
「いっっきまぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっっっっす!!!!!」
「......(発射!!!!!!!)」
ロケットランチャーを肩に担いだカルロスは、すぐ近くにあった大きな建物めがけて引き金を引いた。
ロケットランチャーから勢いよくミサイルが噴出し......
建物の窓を壊して爆破した。