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NO DIE!!!  作者: 雨中仁
1/8

俺の人生とは

死。それの定義が何であるかは僕はよくわかっていない。


意思疎通が完全にできなくなった時。


脈拍が止まった時。


この世から消えた時。


魂が天へ召された時。


どれだって死と言えるだろうし、死と言えないのかもしれない。


ただ1つ言えることは


人が記憶という物を持っている限り


人は永遠にその中で生き続けるということだ。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



ここはO県、O市。

俺はこの町で育った。

お世辞にも裕福とは言えない生活だが、それなりにどうにか暮らしてる。

特に変わった土地柄でもなく、ただ日が照ってる日が多いってだけだ。

今はここの高校に通っていて、勉強もそれなりにこなして、友達もたくさんいる。

......だが、俺にはとてつもない不安が1つあるんだ。

それが......




「おい千鳥ヶ崎(ちどりがさき)くぅん???」

「......なんだよ」

「約束のあれ、ちゃんと持ってきてるんだよねぇ???」

「......今日は無理だよ......」

「はぁ?」

「おいおい千鳥ヶ崎ィ、俺たちちゃぁーーーんと約束したよね?」

「......毎日は流石に厳しいかな......」

「今日も金持ってこい言ってただろうがァ!?あァ!?」

「みんなの前でさぁ?いじめられてるアピールでもするか?あ????」

「おいなんとか言えや千鳥ヶ崎」

「......ごめん」

「謝って済む問題じゃねぇんだよ!!!アァン!!!???」




......これだ。

いま俺は友達に裏切られようとしている。

とはいっても向こうから強制的になった友達で、所謂”友達料”を請求するタイプだ。

ここ毎日、3千円~5千円程の料金を請求してくる。

毎日母親に”参考書代”だとか”筆記用具代”だとかでいろいろ誤魔化してきたが、

流石にもう言い訳も思いつかないし、母親にも合わせる顔がないレベルで罪悪感を背負っている。

父と早くに離婚し、女手一つで育ててくれた母親をこれ以上困らせたくはない。

もう友達をやめて、母親に謝ろうとしていたんだ。





―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




「......イテテテ......」

結局こうなった。ああいう男たちはすぐ暴力で解決しようとする。

腕っぷしが強いだけで虚勢張りやがって。

自分は紳士的な人間だ、そう暴力では勝とうとはしない、と自分に言い聞かせて

今日の事件を心にしまい込む。

そうでもしないと今にも泣き崩れそうだ。

勉強ができるわけでもない、ましてや恋人なんてできた試しがない。

友達は金で作られた偽物、図書館で本を読んでいても輩の邪魔が入る。

俺の居場所はどこにもなかった。

家に帰れば

母親は遅くまで仕事をして不在、自分一人で夕食を作り

風呂や歯磨きを済ませ一人で就寝。


孤独を感じずにはいられなかった。


「......」

布団を被りふと考える。

自分の存在価値について。

もし自分に誰でも一瞬で薙ぎ倒す力があったら。

もし自分に世界を制圧できるほどの超能力があったら、と。

「......」

目を開けても、真っ暗な天井しか映らない。

「......はぁ。」

ため息をついても変わらない。

「......自殺、するかなぁ」

つい思ってもみない言葉を口に出した。

今ならそこらの電源コードを使って首が吊れる。

俺はおもむろに起き上がり、部屋の中心に椅子を置いた。

近くにあったゲームの電源コードを天井にくくり、

椅子の上にあがって頭が通るくらいの輪っかを作った。

一息ついて、そのコードを首に通す。

「本気で自殺するのか?」

「そうだな......」

誰に止められようとも、今の俺ならすぐ自殺できそうだ。

そう、今の俺なら......





......ん?

「誰だ!?!?」

「誰ってお前、自殺する気なんだろ?」

「はっ!?」

どこからか声が聞こえる。

声からするとそれなりに年のいった男性の声だ。

イメージで言うとダンディな40代の男性の声だ。

だが、こんな夜更けに誰の声だ。ただのホラーじゃないか。

俺以外は誰もいないはず。

暑いからと窓を開けていたのだが、どうやらそこから声が聞こえるらしい......

「お前が物騒なこと言うから止めようと思ってな」

空いた窓から月の光が差し込んでいて

その声の主が何者なのかはシルエットで容易に特定できた。

「よぅ、元気か小僧」

その声の主は......











近所の黒猫だ。











――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――










一瞬ぱっと見ただけでは理解できなかった。

しかしこの状況でしゃべっているのはこの黒猫としか思えないのだ。

声の発生源との距離的に、その猫以外とは思えなかった。

「小僧、お前昔っからナヨってたよなぁ?小学生のころ。」

「......はぁ?」

「お前さん、そこの角のところの林間(はやしま)のガキにランドセル奪われたまんま、

家の中に帰られてもまっすぐこっちに帰ってきてたな?」

「......」

何故そんな話を知っている。母が親御さんと話しつけてくれて返してもらったっけか。

「そして中学だ。お前、頭からジュースかけられながら帰ってたろ。ありゃかなりベタついただろうよ。それと知ってるか?お前んチャリンコいっつも空気抜けてたの。ありゃ2丁目の山田のガキだ。お前より年下だが、どうもお前のこと下に見てるぞ。」

「......」

そんなこともあった。自転車の空気が抜けていたのは山田のとこの弟か。確かにやりそうだな......

「って、なんでもっと早く教えてくれないんだよそれ!」

「仕方ねぇだろ、こういう日にしか話せねぇんだからよ」

「...こういう日?」

「そうさ。今日が何の日か知ってるか?」

「...さぁ、何かの日か...?」

「今日は......死神がこの地に降りる解禁日なんだ」

「...は?」

何言ってるんだこの猫。

「俺はもともと死神だ。とあるクソめんどくさいジジイに封印されてな。今じゃこの有様よ。」

「...は?」

「いやいや、ガキ臭いファンタジーの話をしてるんじゃあないぜ。これは本当の話さ。

俺は死神...いや、猫としてこの町を見てきた。だがよぉ、いま俺の目の前にいるお前さんだけはどうしようもなくダメだ。この町きってのダメな奴だ。」

「なんだとこのクソ猫!!!!!!!」

「まぁまぁそうカッカすんなって。本題は別だ。お前は今自らの命を絶とうとしてるな?

それについてなんだが、自殺ってのは死神にとっちゃあ面倒くさい案件なんだ。

死を予定してなかった者が急に死ぬんだかな。

そこでだ。俺からの提案をちょっと受けてみちゃあくれないか?」

「...何が言いたいんだよ...お前...」

「俺からの提案だ。











お前さん、死なない力に興味あるか?」












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