おのれハタケンジャー!次あったらただじゃおかないぞ!
「彼女とか、いたことも無いんですか?」
「ないね」
「えー?モテそうなのに!」
でたわ。思ってもないことをさらっと言えてしまうヤツ。
しかし、僕がアイドルと一緒に帰ってるなんて現実とは思えんな。
「賢道と1週間付き合ってたって聞いたけど」
「それは……」
あれ、これはマズイことを聞いたのか……。
「すまん。賢道から聞いちまった」
「いいんです。案外さらっと、笑顔で別れました」
こっちは賢道と合体したのかどうかが気になって仕方ないんだよ。しかし、下ネタなんか話す内容として下の下の下の下の最底辺なのは分かってる。分かってるんだー。分かってるんだが。
「どうだった?賢道は」
「どうって何がですか?」
「その……相性っていうのか、僕は彼女いたことないから分かんないけど……」
「何いってるんですか、合わなかったから別れたんですよ」
「確かに……」
これでは体のことなのか心のことなのか分からんじゃないかー。
「な、ななな何曜日だったの?」
「……あぁ、当時は今みたいなシステムじゃなかったんですよ」
「そうなのか……」
「というか、私の家に呼んでました」
「え、」
やっぱりか……。ダメだ。生々しすぎる。
「賢道先輩、料理上手なんですよね」
「あぁ確かに」
なんかもう、聞きたくねぇわ。いや、聞きたいかも。
「どうやって知り合ったの?」
「なんで賢道先輩のことばっかなんですかー?」
「ぇっ、ごめん……なさい」
「別にいいですよ。次の質問をどうぞ」
「じゃあ、なんでアイドルやってるの?」
「長くなりますよ」
「どうぞどうぞ」
「元々Twitterがスタートで顔出し写真とか上げたら結構可愛いって言われてて、軽いネットアイドルみたいになってたんですよ」
「現代的だ」
「それでネットの友達がうちのオーディションを紹介してくれて、受かったら絶対応援するー!って言ってくれたんでやりました。まぁその子とはもう連絡とって無いんですけど」
さらっと言うなぁ……。
「あ、ここがうちの家です。狭いですがどうぞ」
「お邪魔します」
「くんくんくん、他の女の匂いがする……。なんつって」
可愛い。
「そ、そりゃ賢道が連れてきたからね」
「60点!その返しは60点です安藤先輩!」
可愛い。
「て、手厳しいですね……」
「お疲れさま、お父さん。ごはんできてますから。ささ、上着脱いで下さい」
可愛い。
「自分で脱ぎますから」
「はい55点!」
可愛い。
「あの、むこう向いてるから着替えちゃいなよ」
「汗かいてるんでシャワー浴びてもいいですか?」
「いやいやいやいや」
「そこまではマズイですかね」
「いや、歌って踊って汗かいたよね!どうぞご自由に!」
賢道なら気にしないのに浴槽の汚れとか水垢とかとか見られるんじゃないかと思うと、掃除しておけば良かった……。シャワー浴びるは反則だろ!
アカン、妄想が……。
そして今。
「どうです?私結構うまいんですよー」
「あ、はい気持ちいです」
「なんで敬語になってるんですかー」
「あぁごめんごめん」
肩を揉まれている。
「ファンの人ってずっと腕振ってるので筋肉張っちゃうらしいですよ」
「な、なるほどね」
お風呂上がりのほんわか体温に薄着を通して触れあう肌、とかキモいことを考えてる童貞。
「ここは目の疲れにきくツボらしいですよー」
「首から肩までのこの部分の筋肉のちょうど真ん中、ここ痛くないですかー?」
「私の力足りてます?」
5分くらいたっただろうか。
「じゃあ今度は私にもやってください」
「え!?」
「私も今日は疲れてるんで」
「いや、やり方知らないし」
「何となく揉んでくださればいいですよ」
揉む。揉む。揉むねえ。
「失礼します」
「お願いします」
「こうかな?」
「あぁー気持ちい」
いけませんよ!!!
「こ、こうですか……」
「いいですー」
なん、か、自分の、息が、荒く、なって、きたぁ、
この鼻息が長坂さんの首にかかりそうになって、慌てて距離をとった。
「どうしたんですか?」
「あ、あの、こんなことしたらマズイですよ」
こんなことをやってたら間違いなく間違いをおかす。
「変じゃないですから続きをお願いします」
「ごめんなさい!僕はさっきから頭が変なことばかり考えてしまって」
「女に恥かかせるなんて最低です!」
「え?」
「だから童貞なんですよ!1度雰囲気壊したら気まずくなるに決まってるじゃないですか!」
「ごめんなさい……」
「もう帰ります!」
僕は何も言えずに呆然としていた。
さて、翌日の夕方。
気がついたら僕は長坂さんを追跡していた。
駅前の○ン・キホーテを女友達と長坂さんが一緒に出ていくところを見かけ「昨日さー」なんて彼女が言うもんだから話を聞かずにはいられない。
念のため言っておくが偶然見かけたんだからね。
「そりゃないわー」
「でしょ?あそこまでやっといてダメって言う女いるわけないじゃん」
「いやーたまにいるよ。家に連れ込んどいて軽い女は嫌いとか言う男」
「男でしょ?」
「その童貞君がそうだったんじゃない?」
「童貞の癖にそんなんだから童貞なんだよ」
「じゃあ金曜日の彼氏は空きが出来たまんまなんだ」
「そういうこと」
「別にあんたはファンが幾らでも居るんだからそっから探せばいいんじゃない?」
「うちのグループのファンはいろいろ食い散らかしちゃったからだいぶカオスってるんだよねー」
「マジそれウケるわ」
僕は追跡を止めた。
生憎、僕は童貞だ。
今考えてることは裏切られたとか、クソビッチとか、より戻したいとかではない。
あのままやってれば童貞卒業できたかもしれないのになぁ。
テーマは「頭のなか性欲まみれ」です。
こんな小説書いてるヤツだと思われたくないのでどうか忘れてください。