8話 「キメている。」
そうしてこちらより少しばかり背の高いゴブリンと共に行動を開始した。
名前は「・・・ウナ・・?」と自分でもおぼろげながらそんな感じの名だったとのことで
「なあ、ウナちゃん何か武器持っとく?」
ちなみに、喋り掛けても普通に受け答えも可能ではあった。
なぜちゃん付けといいますと・・・雌?♀?オンナノコ。らしいからです。中性的に思えたがね・・・。
「ン・・・。ナイフ、オソロイ・・・イイ。」
それなりに、会話もしやすくなった。だがなんだか懐かれてるのかな?
目は、少し眠たげに思えるほどほっそりとしか開けず、タレ目な感じの印象も受ける。
「今使ってるのを渡すよ。代わりに俺はさっきのバンダナ野郎のナイフを・・・」
今まで持っていたナイフを渡すとうれしそうにしていたが、こちらが大振りのナイフを取り出すと
「ム・・・。ソッチ、カッコイイ。」
「ン。」っといいながら手を出してきたので持たせてみる。
うん。プルプルしてるね。まあ、非力な女の子?ってことかな。
「ム~。」と言いながら大振りナイフを返してくる。
「まあ、今のところはそのナイフで勘弁してくれ。」
「ワカッタ。」
広い空間を探し回ったが特に何も無く奥に通路が一本あるだけだった。
その通路を進むと階段が表れる。
「さて、ウナちゃん下へ向かう階段があったがどうする?ついてくるかい?」
「ン。」
短く返事をし、少し間を空けてついてくる。
階段を下りきると今までよりさらに広い空間と通路がまっていた。
「この階で終わりか、それともまだまだなのか・・・ん~イルマは無事なのかな?」
さてさて、あの蜘蛛の魔物は何が目的でイルマを・・・ん?
ウナがなんか妙な顔してるぞ?
「ダレ?イルマ・・・ダレ?」
その表情は、彼氏の浮気を感ずいた彼女のような、そして問いかけるような・・・って恋愛経験ねーよ。
だがその表情が如実に訴え掛けている。
「ああ、俺をこの場所に呼んだ子でね、大きな蜘蛛の魔物に攫われちゃったんだ。
それを追いかけている最中なんだが、なかなか手がかりも無くてね。」
「ン・・。ソノコ、二、カンシャ。リューイニアエタ。」
険がとれ、元の眠たげな表情に戻る。心なしか微笑んでいるように思える。
「と、とりあえず探索しようか?」
「・・・。ナンカクルヨ。ノシノシ~。」
そう言いながら左側の通路を指差す。
「ん?そうなのか・・・、すごいな・・・。」
ああ、ノシノシ云わせながら現れたよ。うん。
豚のような頭をしているね。てか、背が高いなあ~
思わずすごいなと言ってしまった。
今の俺の2倍近くある。即ち2m前後、元の世界でもお目にかかることの少ないかなりの高身長だぜ。
「オークと言うことでいいのかな。」
「ン。オオ~ク。」
なんだか緊張感の無い返事をかえされた。
武器は・・・長い木のこん棒である。
ただ、太いところは直径30cmはあるな。長さも100cmくらいあるんじゃないかと・・・。
まるで木製バットみたいだなと言いたくなるシルエットだが・・・
ゴツゴツしていて痛そうだ。
よし・・・。
「先手必勝だ!」
声を発すると共に駆け出し、オークの横を通り過ぎざまに足に一撃を加える。
「プ、グッ!・・・カッ・・・。」
呻き声を上げ、よろめくところに、飛び掛り喉首に突き立て一閃。
オークは静かになった。
「オオ~ク。オシマィ?」
「とりあえず、初戦は勝利を収めれたな。」
聴かれたので応えた。
おや、こん棒は霧散してしまった・・・ん~なぜだろうかな。
まあいいや、左の通路をこのまま埋めていこう。
少し進むとまたウナが「ノシノシ~」と言い出したので、ナイフを構える。
そして視界に入ると同時に駆け出し今度は、飛び掛り様に首を落としにかかった。
「フゴッ!」っと短く叫ぶがそのまま倒れ霧散する。こりゃ、ナイフの威力が高いからかな・・・。
行き止まりも複数あったが、オークはそれ以降見当たらず、奥へと到達する。
おおう・・・。
「マッチョ・・・だ。ガチムチってやつか・・・。テカッてやがる。」
近づくにつれウナが露骨に嫌そうな顔してたがそういうことか・・・。
それに比べ、マッチョなオークはベリースマイルだ。
そして、「ダブルバイセップス・フロント」をキメている。
オイルなのか、汗なのか、皮脂なのか・・・
今までのオークが肌色っぽかたのに比べ、日焼けでもしたのかと聞きたくなるような小麦肌。
ここは、ダンジョンじゃないのですかね?
今までのオークはイメージと違わずと言ったところだったな。
メタボな感じだががっしりとした様な雰囲気だった。
ただ、前掛けのような、褌のようなのを身につけているだけだった。
それに比べこいつはなんと言うか・・・
ああ、ブーメ○ンパンツってやつじゃねーか?
パンツが黒光りしてやがるぜ・・。
何でこんなことを言ってるかって?
ああ、なんてやつだ。
倒されたのにも構わずイイ笑顔を続けてやがる。
視界に収まった時点でナイフ投げましたよ。
刺さった痛みで屈んだと思ったらね、そのまま
「モストマスキュラー」をキメながら微笑んでいました。
ただ顔色はかなり悪い。
そのポーズからゆっくりと攻撃の行動をとるかと思われた時、
ゆっくりと持ち上げた両の腕に動きが加わり
「オリバーポーズだとっ!!!」
なぜだろう、美しいと感じてしまった。
「おお」と声を上げてしまったが仕方ないよね。
なぜかウナにジトッとした目で見られた。
そして、キメたまま静かに倒れた。
すげー、あの筋肉ボディーでポーズをキメたまま仰向けに倒れたのにホコリ一つ舞い上がらない。
それどころかスローモーションのようだった。キラキラしてた。
倒れたオークはこちらが近づくと・・・
「ナイス・・・バルクッ・・」
と喋った。
喋りやがったこのマッチョ。
そして、「ナイスバルク」ってなんだよ。
こちらが困惑していると、目を細め優しい微笑を携え
「ツギハ、オーガ、デ、キメ、テ、ミタイモノダナ・・・フフフ」
声的には、渋くてダンディなオジイ様なのがなんとも・・・
「ああ、それは見ごたえがありそうだよ。ナイスポーズってな」
「ソウカ・・・」
思わず声をかけてしまうほどに。
だが、その言葉に満足したのか霧散し魔素となった。
マッチョなオークがいなくなり代わりに通路の奥が見えるようになった。
宝箱だ。上の階より丈夫そうだ。
拾い上げたナイフで宝箱を小突く。消え去ると共に声が聞こえる。
≪リューイは、 メイス+3 を手に入れた。≫
あのオークには無用の長物だったのだろう・・・。
「さて、こちら側は埋まったな。階段のところまで戻ろうか?」
「ン。デモ、ツカレタ。」
流石に疲れたか。ん~俺は疲れる気配がないからな・・・。
そういえば・・・
「そうか、ちなみにお腹が空いたりとかは?」
少し考えるような動作をした後・・・
「ン~。ワカンナイ、ココノクウキヲスッテイルカラカナ?」
ん~それは、ダンジョンに充満している魔素によって満たされると言うことか。
俺の場合は、魔素吸収のスキルを手に入れているからかな。
俺もお腹が今のところ空かない。
「なら、俺が背負おうか?」
「ドウヤッテ?」
「手に入れたオークの魔素を纏うんだよ。今の姿は倒したゴブリンの魔素を纏っている状態なんだ。」
「ヘ~・・・。テコトハ・・・。ハッ!
イマノヤツ、ハ、ダメ、ゼッタイ!」
なん、だと、確かに・・・。
ガチムチはどうかと思うな・・・。
何かしらの動作をするたびキメてしまいそうな予感がする。
「あ、ああそうだな。移動に時間かかりそうだ。
では、今まで倒した普通のほうで・・・」
魔素を纏った状態を解除する。
「ン?トカゲ?チッサイ・・・。」
(おうい、背丈のことは気にしてるんだ。)
「リューイ?トカゲ。」
そう声をかけながらウナがツンツンとつついてくる。
(ああ、そうだよ。トカゲなんだよ。
そんじゃオークの魔素を纏うから離れといてね?)
「ン。」
離れたのを確認してからオークの魔素を纏う
「オオ~。タカイタカイ。ン?アンマリオナカデテナイネ。」
「ん?そのようだな・・・。てか、流石に高いなぁ・・・この身長は。」
今の状態は正面にウナがいるので、ウナの視界にはお腹が映っているのである。
こちらは、ウナの頭のてっぺんを覗くような感じだな。
「さて、おんぶがイイかい?それともダッコかい?」
そう問いかけると
「オヒメサマダッコ!」
顔を上げこちらにキラキラとした視線を・・・。
てか、お姫様抱っこ知ってるのかよ。
「片手になるけどイイかい?肩車もあるけど?」
「ン。」
ウナは短く答え、両手を挙げながら催促してくる。
「了解。お姫様。」
そう応えて持ち上げると、うれしそうにし、頬をほんのりと染める。
「さてと行きますかね。」
「ンフフー♪」
ああ、イイ笑顔だ。イルマに引けをとらないのでは?