31話 「エルフのルミア」
◆エルフのルミア
はっ…ここはどこだ?視界がぼやける…
私は生きているのか!それとも夢を見ていたのか?
は、はは…あれも幻覚だったのか。もう意味がわからない。
分からないよ。私が放った矢を棒切れだなんて…
それに、遅いだなんて…
「なあ、ロッカさん。なんでやっちゃったんだ?」
『それは、そこの金髪エルフのお嬢さんが殺気を漂わせながらワタクシに向けて矢を3本まとめて放ってきたからです。会話もできないほどに残念でしたので。リュー様にご迷惑をかける結果となり申し訳ありません。』
「殺気を漂わせるって~とホントにエルフか?気配を簡単に知られるなんて、森の狩人としてどうかと思うぞ?ヴォルキンもそう思うだろ?」
「私に聞かれてもね、この子はまだ子供なんだろう?下手でもしょうがないんじゃないかね?」
「師匠、おれもそう思いますよ。この子はまだ幼いのでしょうから。でも、殺気だけは持ち合わせているのは物騒だけど…。」
なんなの?知らない男達の声が…
「あ、この子…エルフとドワーフの亜人村に居た子に似てる気が…。村を追い出されてここに住む前にみかけた気がするようなっ!なっ…人違い?いや、こう言う時はエルフ違いかなっ?」
この声は…
よ、ヨシコ!あのへんてこ鍛冶屋のヨシコ!
気持ち悪い見た目の鉄人形をニヤニヤしながらひたすら磨いていた変わり者!
ということは、やっぱり!
あの血や爪あとのついた建物を見かけた頃には幻覚にかかっていたのね!
「気持ち悪いとは失礼な!あのフォルムを貶さないでくださいな!やっぱ、知ってる子だわ。」
「それはいいとして、善子さんの知り合いか。で、幻覚って何のことだ?」
「あ~それは、実力の違いを知って頭が追いつけなくて、そしたら自分の知っている声が聞こえだしたから、今までの出来事が幻かなんかだと思おうと必死になっているんでしょう。心を守るための機能みたいだと思えばいいわよ。」
「幼いな…。」
幼いですって!
そう言った男を見る。
銀髪を肩まで伸ばした美丈夫。
す、素敵な顔。ダークエルフ様かしら…
「ん?兄さん、モテますね。これで、妹離れできますね?」
兄さんと言ったその声に次は顔を向ける。
ふっ…汚い髪、中途半端な長さの耳
混血め!
そして、私は殺された…
意味が分からない、意味が分からない、意味が分からない、意味が分からない、意味が分からない、意味が分からない、意味が分からない、意味が分からない、分からない。
まずは、ダークエルフ様に肩から斜めに剣で斬り裂かれた。
と思ったら、次は首をはねられた。
さらに縦に真っ二つ…
次に、ハカマとドウギを着た人族の老人の手刀で首の骨が砕け散るのをこと細かく聞いた。
胸を貫かれ、心臓を握りつぶされた。
頭をかち割られた…
ふひ、ふひひ…
更に巌のような人族の大男がその大きな手で頭を握りつぶした…
頬を殴られれば頭蓋が砕けた…
あは、あはは…
最後は混血と呼んだ、呼んでしまった私より少し幼い少女が目を瞑りながらナイフで私の喉首をかき切った。
噴水のように、湧き水のように血が、私の血が~あは、あはあははは…
そして意識が遠のく…
最後に優しい男の声が聞こえた。
「ダメじゃないか。差別は…」
その言葉を最後に私は何度目の死を迎えただろう…
今の顔は涙や鼻水、唾や涎でグチャグチャだろうな…イヤだなぁこんな最後。
◆ダンジョンマスター・竜一
はあ、ロッカさんが言うには急に襲ってきたらしい。
抱えて来たのは金髪なエルフの少女。だが、首の向きがおかしい。
「死んでるわね。でも、新鮮な死体だからどうにかなるわ。リューくん魔素で触って回収してね?」
新鮮な死体って…お亡くなりなんですね。
回収する。
異世界初の金髪エルフは少女でした。ふむ、イルマと同じくらいか?
おい、なぜガッツポーズをしたんだ!イルマ!胸だな?そうだろう?
すすーと、イルマは俺の視線から逃げた。
「なあ、ロッカさん…」
理由を聞くと、殺気立っていて急に攻撃するような危険な子だったと。
ゴルトのおっちゃんやヴォルキンさん、純太郎にとってもどうかと思うようなエルフと来たか…何だか凄く残念だ。
善子がそれとなく知っていると言うと。彼女の声に反応して顔を上げる。
変人な鍛冶師ね。ズッシリ大将軍をニヤニヤしながら磨いてたって…そりゃ、俺だったら側に居て欲しくないな。
そして、現実逃避気味な独り言をブツブツと言い出した。キュベレ姉さんが言うには心を守るためと…。
「幼いな…。」
今まで黙っていたソールが呟く。すると、その声に反応して顔を上げるエルフの少女。おや、様子が…
「多分、ダークエルフの見た目をしているソーくんがとても素敵に見えているのよ。憧れる子がいたりするからね。」
でも、ソールさんはハーフかクォータだろう?
「それは、私だから気付いたのよ?他の子なら見た目では普通のダークエルフにしか見えないわ。」
そうだったのか…まあ、父親が黒髪って言ってたもんな。実際ウナは黒交じりの綺麗な髪だよな。
「ん?兄さん、モテますね。これで、妹離れできますね?」
ウナよ、その発言はどうかと思うぞ…
だが、その時
「混血め!」
ウナの髪や少しだけ尖った耳をみて、本当に酷い物を見るような表情をしながらエルフの少女が喋った。
だが、その言葉と共に…
部屋が殺気に塗りつぶされた。
それも、たった一人に向けて。
ソールが怒るのはまあ分かるが…
ヴォルキンさんとゴルトのおっちゃんのあの表情は初めてだ…
ウナは…あれは、ジャックのほうだな…笑みを浮かべているが、質が違う…
殺気を当てられた当の本人は、目がイッているし口は半開きだ。
涙と鼻水、涎にまあ…びちょびちょだわな…。
ああ、湯気が…。
カーペットが黄色くなっちゃったよ。やっちゃったな、お嬢さん。
それを見てなぜかベルリが気まずそうにそっぽを向いた。
何か思いあたることがあった…そんな感じの表情をしていた。
いや、まあ…
怒るわな、あんな言いかたしたら。俺も、他のやつらが怒らなかったら怒ってただろう。
冷静でいられる人がいないとな。
それに、俺がダンジョンでダンジョンマスター、彼らが所属の魔物たちだったおかげで本当に…本当に良かった。
今も、襲いかからないように彼らの意思と行動を抑えているからね。
抑えてなかったら今頃スプラッタな映像を御覧になっていただろう。
いくらなんでも少女がそんな風になったら目も当てられない。
でも…「ダメじゃないか。差別は…」
これだけは言っておかないとな…。
ぴちゃり…
そして、彼女は自ら作った水溜りの上に倒れた。
「なあ、キュベレ姉さん。」
「言いたいことは分かっているわ。リューくんのダンジョンに黄金す「いや、そんな言い方はしないで欲しいんだが?」
「そう?まあ、アナタの中に染み込んだってわけじゃないからね?まあ、綺麗にするのは簡単よ。イメージすればいいだけ。次いでだから、その子も綺麗にしてあげた方がいいわね。女の子ですもの、流石に意識を取り戻した時、恥ずか死んでしまうかもしれないわよ。」
そうだよな~綺麗にするイメージすると、水溜りが消えた。
便利すぎるだろ、俺。
ついでに、少女の濡れた衣装を綺麗にしてから抱える。流石に顔は俺が拭いてあげた。
イメージしたらタオルが現れたのには驚きだが、できる範囲ではほんと自由だな…
「みんな、少しは落ち着いたかい?」
「すまねえな、流石によ…こんな子供までもが混血と言い出すとは…。」
「私としても、妻がエルフだったんだ。もちろん、子供は母親のように耳が少し尖っていたさ。それを思い出してしまってね、自分達と少し違うだけであんな表情ができるなんて…悲しいよ。」
「私は、私は…私だって混血だぞ!見た目で何であれほどの扱いができる!この歳でこんな考えを持ち合わせているなんて…腐っている。生きていようと周りを不快にさせるだけだ!」
残念ながら…彼女はすでにお亡くなりになってるんだよな。俺のダンジョン内でまあ、善子さんみたいな存在になっているのかね?
「そんなもんかね?あたしゃこわかったよ~何回か殺されたような錯覚を受けたなっ!」
ああ、ダンゴ虫さんだったね。回避方法がそんなんでいいのか心配になるよ。
「ボクはやっぱり兄妹であんなに扱いがかわるってのに反応しちゃった。ウナのほうは慣れちゃったって言ってるけどね…。なんだか、ボクとしては遣る瀬無い気分だね。」
すると、今まで静かだったイルマが…
「既に死んでるんだったらもう治らないですね。どうします?」
馬鹿は死んでも治らない?的なことなのか…
いや、どうしますって言われてもな。どうしようか…ここらの情報を知りたかったのだが、これじゃ聞けないかな。この子や善子さんがもといた村とやらに案内でもしてもらおうかと…て
「なあ、善子さんはその村の場所分からないのかい?」
俺の発言に、なぜキョトンとするんだよ。
「あ~、はいはい。…ごめんなさい、方向音痴なんです。平謝りするんでどうか、どうか…」
謝られてもしょうがないな…。
「リューくん。あまり気乗りしないかもしれないけど、そこのエルフちゃんを作りかえることならできるのよ?」
それはしたくないな。皆も同じだが、任意で、自分の意思でどうにかいて欲しいんだよ。自由を尊厳を奪ってしまったら、なんと言っていいのかな…俺が自分を許せなくなると思う。
「いつかはそう言うことをしないといけないことがあるだろうし…心が壊れてしまった子を少しでも戻すためには使ってあげたほうがいいかも。今のこの子は磨り減っちゃってるから少しでも持ち直せるように、リューくんの魔素で保護してあげたほうがいいわ。」
やはり、あの殺気に当てられて限界超えたようだもんな…支障が出るということか。
俺は、腕の中で気を失っている金髪の少女の頭を撫でながら保護するように魔素を送った。
【エルフのルミア】
リビングデッド・アーチャー
あ~魔素を得て、俺のダンジョン所属の魔物になったか…。
「新鮮だったからね、これが死後何日かだったらゾンビ・アーチャーになって…白骨化してたらスケルトン・アーチャーだったわよ。綺麗なままでいられるんだからまだましよ。」
綺麗なままでね…。それは、世の女性によっては咽喉から手が出るほどの魅力的な発言だよ。
「なあ、善子さんはどうなる?」
「彼女がどうしても外に出たいって言うなら何かしら用意しないといけないわね。そのまま出て行ったらただのゴーストよ。半透明ドワーフ状態でうろつく事になるわ。浄化されたら即終了。」
「ま、まさか。塩にやられちゃうの!なめくじやー、なめくじー!」
清めのお塩ですね。悪霊退散しちゃうか。ナメクジってどうよ…
もぞもぞ…
気付いたのかな?
「う、あ、うあ~?」
…。幼児退行というやつですかね?
「あちゃ~頭と心がやっぱり参っちゃったのね…。心を閉ざして、自分を守っているのよ。」
ギロッ
ひっ!怖いなソール。そんな目で見るなよな。
「うえ、うええええぇ~ん!!」
泣き出してしまった。ちょ、俺のシャツで拭わないで!手に持ってるタオルでお願いしますよ。
鼻水だらけになってしまった…
「泣けば発言が許されるとでもっ!…すまない。冷静になるために席を外させてもらうよ。」
そう言いながらソールは『休憩室』に向かった。
「う、う~!!!」
俺はよしよしと言いながら背や頭を撫でてあげる。
「すう…すう…。」
眠ってしまったようだ。参ったねえ。
とりあえずシャツは綺麗にしました。
「羨ましいです…。」
だれだ?今誰か何か言わなかった?小さくて何て言ったのか聞き取れなかったのだが。
「え、幼児プレイがいいのかしら?」
「い、いえ!そんなことは!そんなことはないです!リューイさんの胸に抱かれて眠れるのがいいな~と思っちゃったりしただけです!あ、言っちゃった。」
キュベレ姉さんその発言はどうかと。
後、何か言ったのはイルマだったらしい。
ちょいちょいオープンな発言するよね…。




