23話 「ダンジョンVSダンジョンマスター」
◆不動のイルマ
え!?リューイさんに抱きつく女性が…
それも、シュラ族でしょうか、腕が六本もあります。
それにしても、見たこと無い服装です。黒くてピカピカしてます。
目元も何かで隠しているらしく、顔が全く分かりませんね。
とりあえず近いです、離れてください。
いえ、そんな場合ではありませんでしたね。
また揺れています。そして声が聞こえたかと思うと…地面が裂けちゃいました。
あれが、ステファニー様。
ドラゴン種でしたか…それも、地竜種のようです。
ボーンドラゴンと化してまで戦わねばならないと言うのは悲しいですね。
「あんな姿になってまで、この場所を守りたいと言う気持ちをダンジョンに利用されているわけだよ。ボクとしては、あの子にはゆっくり休んでもらいたいものだけれどね。」
ミツバ様は悲しそうにしながら壁に映るステファニー様を見ています。
『この部屋にも影響を出していると言うことは、結果的に自分の守りたい場所を壊していると言うことなのにネ…それすらもう分からない。認識できていない。』
ララ様も悲しそうです。
「では、そろそろ向かうとするか。ララ、今まで側にいてくれてありがとう。
最初で最後のお飾りダンジョンマスター自らの出陣だ。」
ララ様は無言の肯定をもってミツバ様のローブに触れると姿が消えました。
「イルマさん。短い間だったが、話し相手になってくれてありがとう。
この部屋にいればある程度は安全だろう。
ここからボクの勇姿を見ていてくれないか?」
「はい。」と私は短く返事をしますが、それと重なるように『バキリ、ミシリ』と音が響きます。
そして、ステファニー様の姿が消えてしまいました。
消える前、どう見ても何かに恐怖していたようです。
「…。ありゃなんだ、ステファニーが食われてしまった。」
一瞬と言っていいほどの出来事でしたが理解が追いつきませんでした。
「今となってはもうどうでもいいか。ステファニーの後を追う形になるが…
逝こうか。…ゲートオープン!」
光る扉が出現し、ミツバ様がそこに足を踏み入れると姿が消えてしまいました。
◆ダンジョンなトカゲ
ぎきゃ、みしっ…ごきっっ
「ふう、たすかったよ。首の位置が元通りだ!それにしてもロッカさんがあの時の大蜘蛛だったとは驚きですよ。」
首を前後左右にコキコキ言わせながら微調節をしているソール、その光景を首を治した本人が唯一見えてる口元を引きつらせながら…
「ワタクシもあの時のアンデッド騎士様がこうしてリュー様と普通に行動されているのには驚きです。ウナちゃんが妹様なのも驚きですけど…。」
あの後、闘技場のオーガも全てたいらげてしまい、倒れたままのソールさんを復活させたところである。
無論、纏い状態は解かれてトカゲ状態である。
(なあ、トカゲの姿になってしまったわけだが、食べた魔物とかってMPになったりするんじゃないのか?回復しているような気がしないんだが…)
『それはね、倒したとき微量に回復するものなのよ。食べたことにより最大値のほうが上昇したんじゃないの?試しに最大値を見てみたらいいんじゃないかしら…』
そう言われてイメージしてみる…
MP 15/50135
ぇ…これはちょっとなんと言いますか、5万て…
『そりゃそうよリューくんはダンジョンですもの。生き物の枠にとらわれちゃダメよ。』
人だけだなく生き物もやめたわけですね。
『やめたわけではないと思うわ。…多分。』
多分て、神にも分からぬこの姿。
それと、先ほどから気にしないようにしているが…
「ステファニーの部屋」ってなんよ?
個人の部屋が追加されたことにも驚きだが、どう考えてもあのドラゴンではなかろうかと…
あのサイズとなるとかなりのものだと思うんだよ。
『ん?1LDKって表示されてるわよ。なんのことかしら?』
それはまた、てっきり体育館的な広さがあるかと…
いや、その前にその表示でいいのか?ドラゴンだったんだぜ!?
異世界だぞ!なんでもありなのか?
『多分ダンジョンマスターが関係しているんだと思うわ。
リューくんやジュンくんと同じとこから来てるんじゃないかしらね。』
キュベレ姉さんがそう言うのと時を同じくして、裂け目付近に光の扉が現れる
そこから黒髪の人物?がローブに身を包みながら歩き出てきた
立ち止まると顔を上げこちらに視線を投げかけ、口を開いた。
「やあ、察しがついているとは思うが…ボクがダンジョンマスターだ。
名をミツバと言う。短い間にはなると思うがよろしくお願いするよ。」
そう言いながら、ローブに手をかけ引き剥がす。
「さて、ラストバトルといこうか!
ボクの魂はコアに組み込まれている、だから止めたくば殺すんだな。
そうすれば、ダンジョンも機能停止になるだろう。」
現れた姿は…強化骨格、パワードスーツってやつか…。
黒の外皮に、銀色の外骨格が並ぶ
「リュー様、ワタクシとソール様でどうにか時間を稼ぎますので、その間に何か策を…。ワタクシたちでは到底倒せるようには見えませんので!」
そう言われてもな…あ、駆け出していった。
ソールが剣を構え斬り上げる!しかし、避けられたようだ!
避けられ避けられ…おっと腕で剣戟を防がれた。
そして、腹に強烈な一撃!!!あ、鎧がへこんじゃってるよ…
強烈な一撃に堪らず吹き飛ぶ
そこに今度はナイフを計6本所持しているロッカさんが連撃を放つ!
流石に、首から上は生身だからな狙うよね。
だが、素早い連撃に対して流れるようにナイフを持つ手首に手刀を放っていく
全ての手首にダメージを与えナイフを手放させ、無防備となった横っ腹に回し蹴りを決める。
ロッカは、くの字になりながら吹き飛び身体が霧散した
ミツバと言ったか…只者じゃないな。
『冷静よね…。てか、ソーくんの扱いがなんだかかわいそうなの。』
≪ワ、ワタクシの方は…≫
『…。時間?稼ぎ?ご苦労様。』
ああ、何秒かかったかな。残念ながら1分台にはいけなかったようだ…
「ふむ、流石だなララ。ボクも格ゲーのキャラの一人になった気分だよ。
部屋から出てきたせいで、ダンジョンの影響を受け闘争本能を刺激されそうだ。」
ダンジョンマスター自身も影響を受けるのか…
それじゃ、俺は何で影響をあんまし受けないんだ?
『受けてるんでしょうが、余り気にしてないみたいなのよね、リューくんは。』
なんだと、鈍感なのか!
『ん~ダンジョンだから?』
そ、そうですか。
「さて、そこのトカゲ君!キミは何者なんだい?ステファニーの姿が消えたのも理解できない光景だったが、まずはその存在が不明すぎる。」
あのドラゴンやっぱりステファニーだったんですね。
(俺は…、俺はダンジョンだ!)
「『…。』」『トカゲが喋った…。』
(いや、存在を聞いたんだろう?てか、今知らない声が聞こえた!トカゲの姿じゃ喋っちゃいけないとか決まりはねーだろう?ここはファンタジーと言うことで一つ。)
ミツバは呆けていたが俺がそう言うと…
「ファンタジー、そう、ファンタジーで済ませれちゃうんだな…。」
と、顎に手をやり呟く。
「いや、そんなことよりダンジョンと言うのは…いや、今更考えてもしょうがないな。さて、早く先ほどみたいに纏って見せてくれないか?オーガでも犬でもかまわないが、バトルを始めよう。」
俺を見下ろしながら両腕を横に開いて、拳を握った。
(そうしたいのはやまやまなんだが、MPが足りなくてね。なにか回復方法とかしらないかい?)
『それは敵に聞くことじゃないでしょう!わたしに聞きなさいよ!』
いや、ここは相手との会話のキャッチボールを…ね
『ね、じゃないわよ!ね、じゃ!…もう、好きにしなさい。』
「ふむ?そうだね、ボクはあまり詳しくないや、消費してたのはDPのほうだったからね。ララは知っているかい?」
『そうね、人族や獣人族でないのなら簡単よ。魔石食べなさい、魔石。ないなら、コストが数千倍になるけど精霊石の欠片とかかしらね。まあその場合は適正がある属性じゃないとダメだけれど…。』
(おお~詳しいですね。ララさん?どこにおいでか分かりませんが、ありがとうございます。)
『目の前にいるでしょう。どうせ、パワードスーツかなんかを想像してたんでしょうけど残念、私でした。』
(これは、スーツが喋ったと言うことでいいのかな?さすがファ『それはいいから、持ってるの?持ってないの?てか、持ってるでしょ?さっさとなさい!こちらはもとより死ぬつもりで来てんだから、妙な情けかけられているような気さえしてくるわ…ちっさいトカゲに。』
ぐぬぬ…ちっさいは言わないでほしい。なんだか傷つく
≪やはりか、相手さんは死ぬ機会を…。なあ、おれを纏うなら赤の精霊石を消費しな!お望み通り格ゲーみたいな感じで行こうや。≫
純太郎にそう言われるがままにイメージし、赤い精霊石を消費する。あ、どう感じてもこりゃ欠片とかじゃないわ…
◆ダンジョンマスター・ミツバ
ララの説明の後、目の前のトカゲから青白い炎が生まれる。
その勢いはすさまじく、すぐにボクの背丈を越えた…
その炎の中から現れたのは、黒髪で青いオーガだった。
右腕には籠手、左腕には…って拳そのものが燃えてる!
「そうだよな、赤い精霊石で火の力か…でも強い火は青だもんな。納得だ。」
先ほどのトカゲの声が目の前のオーガの口から発せられる。
緊張からかボクの身体は震え上がる、だが、ララが相手に悟られないようにか抑えてくる。
いや、興奮しているのかもしれない、感動しているのかもしれない。
この場で終わろうとしている身でありながら、戦いを望んでいる。
このダンジョンには参ったな…
さて、終わりにしようか。ララ。ステファニー。
◆オーガなトカゲ
青い。うん、青いね。左手は燃えてるのもあれだが右の籠手まで再現できるとは…
『そりゃそうよ!欠片じゃなくて塊消費したんですもの。
爆発しないだけまだましよっ…て、ダンジョンだったわねリューくんは。』
ご大層なことで、まあ、規格外ということで
≪そんじゃ、お望みどうりラストバトルとやらを始めようか≫
そうしよう。相手さんも嬉しそうに口元を吊り上げている。
『でも、倒すのはなんだかいけない気がするのよね…食べちゃう?』
ごめんなさい。男を食う趣味は…
『…そんなことは求めてないの。オーガ×パワードスーツなんて誰得よ!』
分かりましたよ。その時はついでだから「ステファニーの部屋」とやらに押し込んでおけばいいだろう。時間が取れたらゆっくり話をしよう、ここのダンジョンとかについても…
≪そんときゃマメ科の植物とかの加工品とか、料理とかの知識を持っているかきかねーとな!はははっ、テンションあがるぜ!≫
…な≪きまってらあ!大豆だよダイズ!その代替品でもいいが、知識とかありゃ加工やら料理のレパートリーが増えるだろ?何よりも今一番大事なことだぜ。≫
熱いぜ、その言葉には熱気がこもっていた。
そりゃお急ぎで、一気に決めるか。
ヴォルキンさんの技だが、そっこーで決めさせてもらう!
俺は駆け出し両拳を構える。
ミツバはすぐにファイティングポーズをとり身を屈めた。
かと思った時には駆け出し…俺の腹部に潜り込みスピードを乗せたストレートを決める。
そのままもう一方の腕も攻撃に混ぜ、パンチのラッシュをかける。
「うおおおおららららあああ~!」
だが、今の俺の腹筋はソールの鎧すら凹ましたその一撃一撃を受け止める。
前屈みになっているその背にむけて
ダブル・スレッジ・ハンマー的な「鎧砕き」を叩き込む
ズガン と音を立てながら地に叩きつけられる…
その背は、外骨格にヒビが入り肌があらわになる。
だが、「ぐぐぐっ」といいながら腕立て伏せのようなポーズから身体を回転させ此方に足かけを行ってきた。しかし、叶わず大樹のようにビクともしない。逆にダメージを食らったのか脛を抱え込んでしまった。
「ううう、めちゃくちゃだ。ここまでとは…」
そりゃ、仕方ないさ。
敵に塩送ったんだもんな…ただ欠片ではなく、精霊石の塊を消費したらここまでとは。
俺は、このダンジョンのダンジョンマスターを見下ろすと…
「熱くて痛いかもしれんが、終わりにしようか?歯ぁくいしばれよ!」
そう言いながら左手の火力を上げる。そして、彼の胸へと振り下ろした。
その時の彼は、安堵と少しの苦痛を携えた苦々しい顔だった。




