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ダンジョンリザード・ライジング  作者: 藍色ノ鰐
一章 『ダンジョンから始まる異世界』
23/44

21話 「白髪の鬼神」

ゴオオ~


どうやら壁の左上部分が映している場所でしょうか。

彼が手をかざすとその光景が大きく表示されます。


「ん?なんだ…嘘だろ。あれじゃ火炎地獄じゃないか…

あの場所にはスケルトンが100体、その中には上位種が2体、変異種というかまあスゴイヤツが1体混じってたはずだ!

名前だって リバイバル・スケルトン とか言う仰々しい感じのヤツだったな…

実際偉そうに何時も仁王立ちしてたのに!」


炎が弱点だったのですね…。


『ヤッパリこの子、只者じゃないわ。驚かなさ過ぎる…。』


ふふふ、リューイさんのおかげかな?驚きすぎちゃいましたので…

あんまり驚いてばっかりいるとつかれちゃいますからね。


「…。すごいな、お嬢さん。」


お嬢さんではなくイルマです、ダンジョンマスター様。


「ああ、これは失礼した。ボクとした事が自己紹介をしていなかったね。

ミツバ だ。

変な名前だと周りから言われてたな…久しぶりに自分の名前を言った気がするよ。

よろしく、イルマさん。いや、もう残された時間は少ないか。」


ミツバ様ですか。よろしくお願いします。残された時間が少ないのですか?


「そのようだ。このダンジョン自体がその活性化とやらのときに縮小してしまってね、更に今何者かによって侵食されているんだよ。その何者かと遭ったときが最後だろう。

覚悟はできている。だから、その表情は…困るなあ。決断が鈍りそうだよ…」


実際、ミツバ様はその神と名乗る男のせいで…

私は少し表情が曇ってしまいます。


「そうかもしれないね、でも長く生きすぎたかな。この地から離れることはできなかったが、イルマさんが言うことが本当なら100年はここに居たことになる。大学生だったボクからすれば奇妙なことだよ。」


だいがく…学び舎に通われていたということですね。


「そうなる、かな。遠い昔な訳だもんな…妙な気分だよ。

っと、火が消えたよ、う、…だ?」


そう言いながら壁を見るミツバ様。

おや?あの騎士様は先ほどの…剣がかっこよくなってますね。

そしてその近くにワンちゃん!?わ~ふかふかの毛、でも所々に鱗が生えてますよ?


「アイツは、リビングデッド・アヴェンジャーだったか…。

ただ彷徨いながらゾンビを手当たり次第切り倒してたヤツじゃないか!

アレハ何か?炎の剣なのか!!スゲーファンタジーだよ!」


ふぁんたじー?その言葉は確かリューイさんが…


んんっ?あのワンちゃん…リューイさんのように思えて…おかしいですね。

彼は、トカゲさんな筈ですから。

でも、鱗の生えた犬なんていましたっけ?


「あ~さっきからちょくちょく聞くその、リューイってのは誰なんだい?」


お父様が書かれた魔法書を開いたら呼び出されたお方です。

トカゲの姿をしているのですが会話はできます。

ララ様が倒された蜘蛛様によって離れ離れになっていたのですが…

そうです。もしかして…新神カミナ様の加護でしょうか?


「新神カミナ?その神様とやらの加護は何なんだい、このダンジョン内だけじゃ外の世界の情報に疎くてね…」


新神カミナ様はそうですね…ここ50いえ、話が残っている次期からして…ミツバ様がダンジョンマスターになった頃に存在したとされる方々を元に描かれた絵本や多くの人々の思い、願いによって神様になったとされています。司るといわれているのは、破壊と再生、存在の変化です。


「破壊と再生…。恐ろしい神様なのかな?存在の変化って…」


破壊というのは彼女が最後に王城を魔法で消したとされているからです。

絵本でもあのシーンは少し悲しいですね。

それにより悪い王様や第一王子に家臣、貴族がと大勢亡くなったとされています。

残された第二王子がその後国を立て直して、今は子孫の方々が善政を行っているとか…


再生は簡単ですよ。部位欠損などの大怪我を負っても、回復魔法等で再生できる可能性を与えたとされています。昔はただ傷口を塞ぐだけだったのですがね。

信仰や知名度が上がると神力が増し、更なる加護に到るかもしれませんが…。


最後に、存在の変化についてなのですが、これが絵本の支柱と言ったところですね。

彼女は、空を飛ぶことを夢見ていたのです。そしてそれは叶いますが、その代わりに大切な方を失うのです。そして最後はその方に寄り添うように死んでしまいます。


機会があれば、その絵本をお貸しいたしましょうか?

私、大好きなんです。小さい頃からよく読んでいるんですよね…

お母様の思い出と共に…傍に置いていたのです。


「機会か…。ああ、もしも自由になれたのなら色んな絵本とか文献を読み漁りたいものだな。

で、そのリューイさんとやらが加護を持っていると…ふむ。

そうか、彼なのかもしれないな…ボクの相手になるのは。」


え、あ、…そういえば蜘蛛様が




<最終試練としてはやはりダンジョンコアの破壊つまり、ここのダンジョンを維持しているボスモンスター並びに…ダンジョンマスターの排除が待ち受けております。>





最終試練…。そう言うことなのですね、試練の女神様はこの地に存在しているダンジョンマスターが悪として存在していると思い、それを排除してほしいと…。

それをリューイさんに任せると…。

もしかしたらミツバ様と同郷の出かも知れないというのに…

ふぁんたじーの言葉に同じ発音の仕方、もしかすると呼ばれる側によってまた違う生涯を迎えていたかもしれないもの同士が殺しあうのですか。

それじゃ余りにも報われない…。




【ハーハッハッハ!ツエーヤツはいねーか!つえーやつは、いねーのかっ!】



ふぇっ!な、なんですかこの声は。


「アイツは、鎮静化に一躍買ったと言うより…

ステファニーを殺したやつだよ…。

でも、ステファニーやあの野郎も結局はこの地に縛り付けられたわけだ。」


拳闘将ジュンター…。そうですか、彼がその命を賭して倒したとされるボスモンスターがステファニー様だったのですか。

地上では死後英雄ですが、その実未だにダンジョンを彷徨っているのですね…


「血気盛んなようだ、いや、そうさせられているというべきかな…

このダンジョンはそのように捻じ曲がっている。

今思えばこれじゃ蟲毒だな。

まさかそれが狙いだったのか…

あの男の話にちょくちょく混じっていた、そしてこのダンジョンのあり方の変化…

参ったね。このまま過ごしていたらどの道アウトだったと言うことじゃないか。

やはり、イルマさんは善神が遣わした天使なんだな…」


急になにか小言をブツブツと言い出したミツバ様…私は天使じゃないですよ?



【どーした?まだまだだろーぅ!こんなもんジャーねーはずだ、アンタも加護持ちならなあアアァ!】



え、加護持ちですか。やはり、あのワンちゃんはリューイさんなのですね。

ボロボロです、ですが…なんでしょうか


周りに居たオーガがどんどん姿を消していきます。

そして、犬の姿のリューイさんが…あ、トカゲの姿に戻った。


そう思った瞬間でした…




【ジュンタアアアアアァ!!!】

【師匠うううううううっ!!!】





リューイさんが居た場所に白髪のオーガが現れたのです。

両の腕には手の甲まで鱗が覆い、力強く拳を握っています。

その佇まいはまるで鬼神。お母様の故郷に伝わるとされる物語に出てくる鬼にそっくりです。

種族的に魔王種だったのではとされる鬼神ですが、鬼人族の行き着く姿だとも言われています。


「いや、あれはオーガなのか?理解ができん…」


肩までの白髪、真っ赤な二本角、褐色に近い肌、上半身は裸ですが…

下半身は、あれは確か… ハカマ というのでしたかね…

金色の双眸はまるで狩人のように薄暗いダンジョンの中でも威圧感を放っています。



ゴッ


鬼神が現れた場所が大きく削れいつの間にか青いオーガが右拳を振り切っていました。

ですが、鬼神の方は先ほど青オーガがいた場所に移動し終わり、騎士様を抱え上げると入り口側まで移動します。早い、ただその一言につきます。


笑いながら青いオーガが中央まで跳び着地します。

無言のまま鬼神は近づき、お互いに距離があるにもかかわらず構えを取ります。

その構えは既に完成しているといっても過言ではありません、お互いに同じ流派なのでしょう。

まあ、青いオーガが師匠と叫んでいたのにも何かしら関係が…

あれ、でもリューイさんですよね?でも、纏っていると言うのが合っているのでしょうか、その姿にまるで残像のようなものが重なって見えます。凛々しい老人の姿が…


そしてお互いに跳躍、互いの拳が撃ち合う度に空間そのものを震わすような衝撃。

あ!青いオーガの蹴りだした右足首を掴むとその威力を殺さないまま壁に向けて投げ飛ばします。

それを追いかけるように駆け出し、壁にぶつかった青オーガにそのまま蹴りを…


ズウウウウン


この部屋まで少し揺れました。


「ははは、なんだこりゃ…格ゲーじゃないか!」


ミツバ様はその光景を苦笑いなのか、それともある種の感動でしょうか…目は輝いています。


『脳筋ゲームでしょ?』


それに比べ、ララ様はあまり面白くなさそうです。

かくげぇ?のうきんげぇむ?がなんなのかはわかりませんが…


「ありゃ技術を競い合うんだよ。決して脳筋なんかじゃないぞララ!それに、画面越しではあるがこの光景が上の方の階層で実際に起きてるんだぞ!なんだかわくわくしてきたぞ!」


…。両拳を胸元で握り楽しそうなミツバ様。

露骨に嫌そうに揺れるララ様が対照的ですね。



【カハッ…はははは!まだだあぁ~おれはとまらねぇー!!!】



土煙が晴れましたがすごいですね、かなりの衝撃だったように見えましたが笑っています。


『ねえ、わかってるんでしょうが…あれに倒してもらうことになるかもしれないのよ?

痛いの苦手なんじゃ…』


そうですよね、覚悟を決めたとの事でしたが、ミツバ様は少し右頬を引きつらせながら…


「ララを纏うよ。彼だってこのダンジョンにいた魔物を纏って戦っているんだ。

ある意味イーブンなラストバトルさ…」


『それでもっ!確かに少しはダメージを抑えれるかもしれないけどっ!』


「でもや、けど、じゃない。ごめんな…決めたんだ。」


寂しそうな笑いかたをするミツバ様はそのまま壁に向き直ります。

壁に映し出されている戦いは青オーガが拳を振るい、蹴りを織り交ぜながら鬼神を攻め立てています。

ですが、弾かれ往なされ、相殺されています。

攻撃が通らないことに憤慨する様子もなくただ楽しそうにまた拳を振るいます。

存分に出し合っているのか鬼神のほうも重なる老人の表情がとても満足そうです。

奇妙ですね。これが武術ですか、魅了する何かがありますね。

大会とか開いたら凄そうです。あ、でもどこかの国にあるんでしたっけ?

でも、武器を使うのが当たり前の、国を挙げての大会でしたから武器無しだと観客が集まらないのかもしれませんね…。

武器の有無もそうですが、私としてはこの光景のほうがいいかもしれません。

自分の技を直接皆に魅せれるんですから。

ん?どうやらお互いに何かを話しているようです…

聞こえないのは残念ですが、その顔はお互い楽しそうです。いいなぁ~

鬼神に英雄ですよ!本の物語ではなく、今目の前に映し出されているのですから!

私も頬が赤くなるのを感じます。


『…。瞳を輝かせながら筋肉男の殴り合いを観てる女の子って…どうかと思うよ。』


「いや、テレビとかでボクは良く見かけたけどね…格闘家ファンな女子は普通にいるもんだよ。」


お2人は小声で何かを言い合っているようでしたが、今はこの光景を見ていたかったので気にしませんでした。



 GOOOOOOUUUU!!!



え、なんでしょうかこの音?声?


「…。ステファニーだよ。多分彼らの元に向かっているのだろう。

今のあの子にはボク達の声は届かない。でもあの子の行動は単純、ただ邪魔者を排除しようと行動しているだけだ。」


そ、そんな。

地響きが鳴り、砂埃が上から降ってき始めました。

そんな中、決着がついたようです。



その顔はとても満足そうでした…



両拳から生み出された破壊力のある一撃を胸元に受け

体中にヒビを入らせた青いオーガは

堪らず後ろに二三歩下がるとそのまま仰向けに倒れてしまいました。

天井を見上げる彼は少し残念そうにしていましたが…

でも彼は最後まで笑いながら…



霧散してしまいました。







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