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ダンジョンリザード・ライジング  作者: 藍色ノ鰐
一章 『ダンジョンから始まる異世界』
18/44

16話 「I LOVE 妹」

なぜだろう。

彼は誰かに似ている気がする。


だが、美しい銀髪を肩まで伸ばした美丈夫。

肌は黒っぽく、耳が少し尖っているように思える。


(エルフ?)


『ん~確かに。そう言われると・・・でも、ハーフとかクオーターって感じね。』


だがこちらとして一番気になる事は・・・


(あなたは、ウナのご家族ですか?)


そう、そうなのだ。ウナに少し似ている。特に目元。

そして、ウナを知っているような発言が彼の口からこぼれていた。


「ん?いや、まさかな・・・犬が喋りかけてくるわけ無いよな・・・。」


こちらを一瞥すると本に注目を戻す


(いや、今は犬っぽい姿してるだけですよ。ちゃんと言葉話してるでしょう?)


「な、なんとっ!今日は妙な出来事によく遭遇するな。こんな時何と言えばいいのか・・。」


そりゃあ


(こういうときはですね。ファンタジーって言えばいいんですよ。)


『ねえ、リューくんはファンタジーって言葉を流行らせたいの?』


「む、ふぁんたじぃ?その意味はなんだい、喋る犬?君』


(簡単に言いますと、幻想的ってヤツですね。

現実離れしてるって感じでも使いますが。)


こちらの話に、右手をあごに添えながらうんうん言っている。

イケメンは様になるな。見てて絵になる爽やかさ。

だが、視線を落として彼の腹辺りは余り見ていられる状態ではない。

爽やかからかけ離れている。真っ赤っか・・・

これはあれか、ゾンビ?生きた死体、リビングデッドと言った所か・・・


ああ、ウナ。キミのお兄さんは残念ながら動く死体のようだ。


「ふむ、ふぁんたじぃか。では犬君、キミに聞きたいのだが、宙に浮く本の中に映る彼女はウナと言うんだね?」


(あ、えっと。俺の名前はリューイでお願いします。

彼女は ウナ このダンジョンで11年前に死んだ少女です。)


確かそれぐらいだったか・・・。

てか、彼にはキュベレ姉さんの声は聞こえてないのか。


『みたいね~。彼は、このダンジョンの魔物?状態だからかしら。』


「な・・・。そうか、ありがとうリューイ君。だが、幸せそうだな・・・。」


遠い目をしながらこちらに語りかける。


(ええ、ですが、今は眠っているだけです。

死と生の神様からの試練を見事果たし、今は休んでいるのです。

このダンジョンから出れば目が覚めるそうですよ?)


「し、試練の神様だとっ!そんなばかげた話がっ、いや、ここはダンジョンなのか?」


『ん~試してみたいことができたわ。彼、ここのダンジョンの魔物としてはイレギュラーみたいだから、こちら側に引き込めるかも・・・。』


なんと!それは心強い気が・・・。では、どうすれば?


『取りあえず一度本を閉じて、彼に表紙に触れてもらってみて、そこからリューくんと接続させてみるよ。』


了解。では閉じてみるか。

本を閉じると・・・


「ど、どういうことだ!勝手に本が閉まったぞ?ふぁんたじぃ~

あ、ウナ!ウナは無事なのかっ!」


凄い動揺の仕方だな・・・ここまで心配するなんてイイお兄さんだな・・・。


(大丈夫ですよ。彼女は休憩室で休んでいるだけですから、あ、お兄さんでいいですかね?本の表紙に触れてみてもらえませんか?)


「え?ああ、申し訳ない。リューイ君が名乗っているのに私は名乗っていなかったね。

私の名前は ソール と言う。そして、・・・ウナの兄だ。」


(ええ、わかりましたよ。ご兄妹だと言うのは、その優しげな目元が特に。)


「そう言ってもらえるとうれしいよ。それで、この宙に浮く本の表紙に触れればいいんだね?」


イイ笑顔だ。俺が女なら危なかったな。


(ええ、ウナの事を考えながらでもいいので触れてみてください。)


こちらの説明に頷き表紙に触れる。


え、消えたッ!?ソールさんどこ?


『成功したみたいね。それじゃ、あまり乗り気がしないかもしれないけど・・・会議室をイメージしてね~。そこに、ソールくんいるはずだから。』


なあ、あそこにはピンク犬がいるような・・・。


『そう、だから乗り気じゃないかもしれないけど、会議室には変わりないから話し合いするなら、ねっ?』


しょうがないのか、ああイヤだなァ・・・。

そう思いながらも会議室をイメージして開く。

そこには・・・







「キッ貴様!なぜここに?ウナを殺したのはお前たちだろう!」


と叫ぶ、白いTシャツにジーパンな先ほどの美丈夫。

ただ、その背にかかれる文字は【 I ハートマーク 妹 】だった!

オイ、この趣味はどうかと思うよ俺。


そして、


「くっ、きゃいん!(くっ、アンタはっ!)」


とプルプルしているピンク犬。かなり怖がっている。ああ、プルプルだ・・・


『リューくん。取りあえず仲裁しようか、何かしらの因縁があると思うんだよね。』


しかたない。


(おーい、お二人さん、ちょっと言いかね?)


「待ってくれリューイ君。こいつらは、ウナを攫って殺したんだぞ!」


なにっ!人の姿でも殺し、魔物の姿でも手にかけたというのか!


「リューイ様。わうわん!(リューイ様。お話をお聞きください!)」


(だそうだ、一度冷静になって話を聞いてみよう。)


とりあえず、わうわう語はどうにかならんのか?


『ん~今はまだダメみたいね。それこそロッカちゃん辺りに聞いてみるしかないかな?』


まいったね~まあ、我慢するか。


「ぬ、そうか・・・今の彼女なら確かに話し合いができそうだ。

わうわうはどうにもならないようだけど。」


「わう。わん【以下省略】。


(すまない。アタイが殺したわけじゃないんだよ。ゲレスがアンタを刺して殺しちまっただろ?

そしたら、『兄さんがいない世界なんて』っていってアタイのナイフを奪って自分で喉首を裂きやがった!それを唖然としてみていたら、アンタが恐ろしい声を上げながら起き上がって、刺さってる剣を自分で抜いたかと思ったらアタイを腰から真っ二つに・・・。)」


おおう、衝撃の事実。

ウナは自害、アタイさんはソールさんに腰から真っ二つ。

そして、ゲレスはゲス。


「自害だと・・・。私が死んでしまったからなのか・・・。」


その言葉に、悲しそうにうなずく

小声で「でもゴブリンはアタイが殺しちゃった・・・。」と言った。ああ、後からウナの転生した姿だと気付いたようだ。反省中なわけだな。


「その件についてなのだが、そのゲレス、私を刺した時にな、贄だと言ったんだよ。そう、キミたちの家族が殺された事件だ、今の冷静な君なら話が少しはできるよな?」


おおっ更なる出来事が、アタイさんも何か抱えた事情がおありだとは、まあ、それでウナが攫われたのか?


「わ【以下略】。


(ああ、今ならそれとなくわかるよ。不自然な点が多かったんだよ。

アタイもまたゲレスにいいように使われていたようだ。

あの時のアタイは何の罪もない弟や妹たちがアンタの部隊に虐殺されたと、そう、今思えばそう言ったのは伝えたのは全てゲレスだった。

ウナだっけ?

妹なのもなあんたが死んだ時に彼女が兄さんと叫んではじめて兄妹だと知ったくらいだ。

アイツはね、頻繁に会っているメイドとしか言わなかったんだよ。

アタイの感情を揺さぶるために。」


「虐殺だと?・・・そいつは、やはりあの現場に何かしら関わっていたのか・・・そうでもしないとあの光景を到底説明することはできない。」


そして、その事件についてソールさんが話し出す。


なに?神々からの支配から解き放つために邪神に頼むってめちゃくちゃな。


『こりゃあ根が深そうね。邪神教団なんて・・・』


あ~カミナも邪神の存在について言ってたな。

最初のダンジョンから関わりまくりのずぶずぶじゃねーか。

そうなるとここのダンジョンマスターもそっち系か・・・


「ん?女性の声・・・。だれだ?」


『神様だよー。』


「幻聴か。」


(いや、さっき話しただろ?その試練の神様だよ。ウナの魂を保護してくれた張本人。)


「「えっ(えっ)!」」


『そうよ~ウナちゃんはねリューくんが無事な限りはあの部屋でゆっくり休憩できるの。』


(でも、このダンジョンから出れない限りは完全じゃないんだろ?)


『そう。だからね、ソーくんには手伝ってほしいの、リューくんのダンジョンのモンスターとして。』


戸惑いが隠せないようだ。てかソーくんか・・・。


「そ、ソーくんですか。え、リューイ君は、て、え、私はモンスターなのか?」


『え、ユニークね。気付かない?ソーくん血まみれの鎧で腹部がスプラッタな状態だったわよ。』


「・・・。前を向いて歩いていました。」


「わうわう~く~ん。(アタイはあの時は怖かったよ~。)」


思い出したのか、アタイさんがブルブルし始める、うん。ついでにブルブル・・・


(なあ、アタイさん?ピンク犬、名前は?)


「きゃんっ!ううう~(えっ!た、確かに名前を言ってない。)」


「ううう~!(てか、アタイピンクじゃねーよ赤髪だよ!は、お前トカゲ男か!)」


(そうだが、今更か?声でわかるだろう?)


「きゅうう~(あ、アタイ。ほ、ほほほ・・・)」


ぷしゅ~って頭から湯気が出てるんだけど・・・。


『・・・。こりゃダメね。まあ、リューくんの中にいる状態だからね、ステータスオンで見れるかも。』


(了解。ステータスオン。)




【赤髪のベルリ】


ヘルハウンド・ボス


【魔法剣士ソール】


リビングデッド・アヴェンジャー




『「(・・・。』」)


『凄いモンスター名ね、ソーくん。』


「動く死体の復讐者・・・。」


(おお、魔法剣士だ!ファ『それはいいから・・・。』


ぐぬぬぬ・・・。お決まりはダメなのか。


「いや、それが今はもう魔法は使えないようだ。」


『多分、代わりとして身体強化とかだと思う。リミッター解除的なこともできるでしょうね。』


なるほど、魔法とやらが気になったがお預けか。


(ベルリか、よろしく。)


「くう~(よろしくおねがいいたしましゅ。)」


大丈夫か、このワン公・・・。



「それで、気になったのが、リューイ君はダンジョンとどう関係が?」


『そう、良くぞ聞いてくれました!彼は、 ダンジョンリザード なのです!』


「おお~!ん?それは、彼はトカゲなのですか?」


『そ~よ。リューくんは神様に呼ばれてここにいるの、そして、わたしの加護を受けてダンジョンになったの。』


「ダンジョンは生きている。とは聞きますが、まさか動くとなると・・・。」


『それはね~新神カミナちゃんの加護とわたし試練の神キュベレの加護が合わさって辿り着いたの。』


「二神の加護を・・・。新神カミナ・・・ああ、あの物語ですね。小さい頃に読んだことが、だから姿が・・・。」


どうやら納得がいったようだ。

そして、さり気なく試練の神キュベレと名乗っている。

だが、ベルリはついていけていないようだ。

まあ、俺でも最初は困惑した。誰も?が通る道だ。うん。そう考えることにしよう。


「では、手伝いと言うのは?」


『そう、その話だったわね。このダンジョンのどこかにいるダンジョンマスターを倒してほしいの。』


「ダンジョンマスター?」


『本来この試練のダンジョンにダンジョンマスターはいなかったの。ここ100年で住み着いたのね。そいつがもしかしたらね邪神とかに関わっているかもってことで。だって、贄とかの話が出るくらいですもの。危険な存在ではあるわ。』


「・・・。」


ベルリも流石に真剣な表情になる。


『だから、力を貸してほしいの。特にね、ここ試練のダンジョンから出ない限りはウナちゃんは眠ったままよ。』


「ああ、手伝おう。と言うか手伝わせてくれ。頼む。」


キリッとしてはいるんだが、胸元のほうは



【I LOVE 妹】になっている。



何だろう、心情を表しているのか?



「わんわんっ!(アタイも手伝うよ!)」


『・・・。ごめんなさいね。気持ちはありがたいんだけど、ベルわん は反省中だから・・・ね?』


「く~ん(しょんぼり)」




べ、ベルわんって・・・。


み、耳が見える。イヌミミが・・・

幻覚ながらもなんとも心情を表しているな・・・へにゃってる・・



『それじゃ説明するわよソーくん?お~い!ソーくん聞いてる~?』




「ああ、待っていてくれ!ウナ!」


どこか遠くを見ながら右手の拳を握っている。




















へんじがない…

ただのシスコンのようだ……。

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