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ダンジョンリザード・ライジング  作者: 藍色ノ鰐
一章 『ダンジョンから始まる異世界』
17/44

◆アノ日の出来事 と 今宵の出来事◇ (2)

◆『赤髪』のベルリ


アタイは生まれた時から不幸だ。


父親は、魔物との戦いで右足を途中からなくした。

アタイが5つになるころだった。


酒に逃げ、母親に暴力を振るう姿はとても恐ろしく、醜かった。


この頃から男の事が怖くなった。


父親が働けなくなり、一年を過ぎた頃だろうか・・・

母親が倒れた。

過労と、殴られた箇所が悪かったのだ。

そして、父親のアタイを見る目が変わったのもその頃からだった。

怖くなり、常にナイフを隠し持った。



ついにその日がやってきた。母が死んだのだ。

酒に使ったせいで母に使う金など無かった。

呻きながら、嘆きながらその生涯を終えた。


ああ、濁った汚い双眸でアタイを見、下品な笑みを浮かべながら近づいてくる。

そして、殴られた。

イタイイタイ・・・

そして、アタイの服に手をかけた。

お前を今まで育ててきた金はオレが稼いだものだ。

だからな・・・


そう言い出したとき、恐怖のあまり隠し持っていたナイフで父親の左の目を刺した。

そのままナイフを抜きとり、目を押さえながら暴れ狂う父親に・・・


ナイフを拾い上げ近づき・・・


刺した、刺した、刺した刺した・・・

どれほど刺し続けただろうか、叫び声一つあげること無い肉がそこにいた。

ああ、肉だ。人のカタチをしているが、人と言いたく無かった。

父親だと思いたくなかった。


この家にはもう・・・


そう思い、血塗れたままの姿で家を出た。

2~3日した辺りで、路上生活は終わりを迎えた。

食事を取らず水だけの生活だったからだろうか、意識が途絶えた。

次に気付いた時は、焚き火の傍にいた。

見知らぬ女だ。

こちらに気付くと微笑みながらお椀を渡してきた。

ああ、味の薄いクズ野菜しか入ってない質素な物だったが、とても暖かくなった。


そこからはあまり覚えてないや・・・。

ただひたすら泣いたのだけは辛うじて覚えている。


彼女は、ハンターだった。

彼女はほかにも何人もの孤児を迎え入れ、生きていく知恵や戦闘技術を教えていた。

望まずして親兄弟、家族と呼べるものを失うものは多い。

そんなものたちに、家族をもう一度。というのが彼女なりの考えだったらしい。

それから何年の月日がたっただろうか・・・


大きな家族だ。だが、そこにはもう彼女の姿はなかった。

魔物との戦いで死んだらしい。

らしいとのことで、実際はわからない。

年長組の男たちがそういっていたのだ。


それからというもの、家族は落ちぶれていった。

盗賊まがいなことをするものたちが現れたのだ。

アタイは数名を引き連れグループとなし、家族から距離を置くことにした。


そして、ある日の事、その家族たちが殺されたという話をグループ内年長のゲレスが持ち帰った。

一方的な虐殺だったらしいと・・・

皆が、悪事に手を染めていたわけではなかったはずなのに・・・

その討伐部隊の隊長について調べることにした。

アタイより少し歳は上だが若く、功績を積み上げており、能力に恵まれているとか・・・

はらわたが煮えくり返りそうになった。

行き場の無い怒りにより荒れた。


そんな時、ゲレスが話を持ちかけた。


「その隊長は、とあるお方の屋敷で、事あるごとに同じメイドと話しをしている姿を見かけるそうだ。」


そのメイドをどうにかしてさらい、彼を人気の無いところに呼び出し、家族の事を償わせると。

もしくは、事の真相を聞きたいと。

償わせるという発言には消極的だったガーオルも真相を聞くほうには賛成ということになった。

他の連中も同意見だった。


そして行動に出た。他の使用人に銀貨を握らせ、その日に買出しに行かせるように頼んだのだ。


一人で買出しに出かけたメイドを路地裏に引き入れ拘束すると、集合場所の洞窟へと・・・




半日もしないうちに彼の隊長とやらがやってきた。

やめてくれ、彼女にてだしをしないでくれと。


アタイは、頭に血が上っていてなんと言ったか覚えていない。


ただ、彼の話を鵜呑みにできなかった。


剣を手放し、彼女にだけはと、両手を地に着け懇願する彼を・・・


ゲレスがイヤらしい笑みを浮かべながら、背中に彼の剣を突き立てた。


そして・・・動かなくなった。喋らなくなった。


その時、アタイの隣りで呆けていたメイドが・・・


「にい・・・さん?兄さんっ!」


そう叫びだした・・・。

なあ、何だって。兄さん?兄妹だということなのか・・・

男と女の関係じゃないのか・・・

止め処と無く涙を流し・・・

アタイの腰からナイフを奪うと・・・


自らの首に当て


「兄さんのいない世界なんて・・・」


そうつぶやきながら自身の喉首を裂いた。


唖然としていた、だが後ろから・・・


「がああああああああああああああああ・・・」


彼だ、どう見ても生きているようには見えない。

腹に剣を生やしながら起き上がって歩いている。


「ああああ・・・」


ぞぶっぞぶっ  といわせながら突き刺さる剣をそのてで身体から抜いた。


一瞬だった。アタイのカラダは腰からずり落ちた。

斬られたことすら気づけぬままに。

ほかの奴等も同じだった。

そして、通路を逃げるものを追いかけていくその後姿をもってアタイの人としての最後の景色だった。

ああ、ついてないなぁ








犬の魔物になってからの暮らしは、ただよだれをたらして襲ってくるオスを屠る日々だった。

リーダーになりボスになり、そうそう襲われることは無くなった。


そしてその日はまたやってきた。

ゲレスがガーオル隊と自身の隊を見捨てたのだ・・・見殺しにしたのだ。

こいつ、こいつは・・・

過去の出来事が重なる。

明るみになる。

悪いことがおきるときはこいつの知らせだったことに今更ながら合点がいく。

今なら、彼の隊長が言っていた話にも・・・


怒り、暴れた。

そして、ゲレスを殺した。


それを角から見ている影、アイツか・・・アイツがガーオルをっ

ん?その後ろに雌の気配・・・

こちらが声をかけると、トカゲ男だけが姿を見せる。

牙をむき出し怒りを声に乗せ、隠れてやり過ごす雌に跳びかかり前脚を振るった。

ただ、そのゴブリンの顔に見覚えがあった。

ああ、またやってしまった。と心のどこかで思った。

また、ついてないな。






トカゲ男は圧倒的な力を持ってアタイヲ殺し、食らっ・・・ん、んん?






目を開いたら奇妙な場所に・・・


「わ、わうう~ん?≪ひ、人の姿に戻ってる?≫」


手がある、足がある。毛深くない。


ただ、わうわう自分が言ってる事に気付く。

この首から提げた木の板のせいな気がするが・・・


取りあえず座って考えることにした。




その後、あのお方を見ることになるとは・・・




急に目の前の壁に窓ができたかと思うと、凛々しい殿方がこちらを見ていた。


ああ、だめだアタイ。


これ、一目惚れってヤツだ・・・。


頬が赤くなる・・・そして彼は口を開かずこちらに声を投げかけた・・・




(なあ、これはどこからつっこんだ方がいい?)







だ、大胆なお方。


















◆『魔法剣士』ソール


私には腹違いの妹がいる。

彼女の母親が妾と、そう呼ばれているだけで周りの者から蔑まれていた。

でも、あの子もそして母親も強い心の持ち主だった。

妹が12になる頃だった。彼女の母親が他界したのだ。

私も泣いた。父上は、泣くのは当たり前だ家族だったのだからと・・・

母上が一番泣いていた気がする。

まるで、そう、実の妹が死んだかのように。

母上の髪は綺麗な銀髪、でも彼女のほうはどちらかといえばくすんだ灰色といったところだった。

顔立ちだってあまりにてないきがしたが、姉妹と言われれば頷けたかもしれない。今更だが・・・



母上の生まれの部族は剣術に長けており、父上は魔法の才を有していた。

だが、私は頂いた力だけで慢心せず、日々鍛錬に励んだ。

騎士団に所属もし、若いながらも隊を任されるようになった。

そんな時、叔母と呼ぶ女性の死だった。

病だということ以外は知らされなかった。

それからは、家に帰る頻度を増やし、妹と過ごす時間を大事にした。

それから半年、父上の親戚の家にメイド見習いとして置いてもらうことになったのだ。

隊の、寮がある場所に近いので、会いに行く頻度が上がった。



そして、あの任務が・・・

最近事を起こしている盗賊一家を捕縛せよ。

規模がどの程度かは不明だが、調査、先遣隊として向かった。


アジトと噂される近辺を調査していると洞窟を見つける。

そこで見つけたのは、おびただしい数の人だった者たちの亡骸だった。

大人だけでなく、子供の姿も男女問わずころがっていた。

その中央に空間がとってあり、一人のローブを纏った人物が・・・魔法陣の上に立っていた。

その人物はかたりだした


「神々からの支配から解き放つため、邪神様よお目ざめくださいませ。

贄が足りぬというならこのワタクシめも。」


虚空を仰ぎてその胸に深々とナイフを突き立て事切れた。


淡く輝きだす魔方陣、そして亡骸は洞窟内から一つ残らず霧のように消えた。


不気味だった。結局何も起こらず、魔法陣が跡形もなく消えただけだった。


証拠も何も残らない。後味の悪い不気味な事件となった。


その任務から考え込むことが増えた。

神や邪神とやらについて・・・


そして、妹とお茶をしている時にも思い出してしまい首を振る。


こちらを見た妹はなぜか泣きそうな顔をした。


わたしは彼女の肩に両手を軽く乗せ


「そんな顔をしないでくれ」


そう苦笑い気味に伝えた。だが、彼女はうつむいたまま顔を上げてはくれなかった。


こちらに背を向け小さく「なんで」とだけ呟くと去ってしまった。


その数日後事件は起きた。




その知らせを聞きつけてすぐに屋敷に向かった。

鎧を脱ぐ間も剣を置くのも後回し、ただひたすら走った。

屋敷に着き、親戚殿から話を聞く。

話によると、買出しの最中にさらわれたと。

そして、私一人でこの地図に書いてある場所に来いと。

そう伝言が書かれている紙を渡された。


走った、ただひたすら走った。

そしてついた。


ああ、 ウナ 無事なんだな・・・。


その隣にいる赤髪の女性が私にあの盗賊たちの事の顛末について聞きたいと


剣を地に転がし、私は、こと細かく話した。


だが、赤髪の女性は怒り狂い、お前が殺したんだろう!とこちらを糾弾する。


私は、嘘は言ってないと、だから彼女に手を出さないでくれと


正気ではない、刺激をするとウナが危ないと思い必死に語りかける。


地に両手をつけ彼女の安全だけを願った。


その時背後から下品な笑い声と「お前も贄だ。」そうつぶやくのが聞こえた。



ぐ・・・あ・・・ま、さか。



今私を刺したヤツが今回の・・・


意識が・・・そんな中・・・


「これほどの贄だあ~はは、あの娘のほうも・・・ひひ・・・」


うそだ、やめてくれ・・・やめろ・・・





真っ暗な中、妹の声が聞こえた気がした。

「兄さん」と・・・





そして、ブシュ・・・


ドサッ・・・



ああ、ウナ。愛しき妹よ・・・お前がどんな悪いことをしたというのだ・・・






そして私は・・・


「があああああああああああ」と叫んでいた、視界が戻る。

そこには、血だまりに倒れる妹の姿、

自らの腹を貫く バスターソード に手をかけ引き抜く。


足に力を入れ跳びかかり、ウナの横にいた赤髪の女を横一線・・・

女は唖然としながら崩れた。


他の者たちも斬りつける。屠る。


一人が通路へと逃げたのを追いかけた。すぐに追いつき息の根を止めた。

そして、ウナのところに・・・


なんだ?


もと来た道をたどったがそこには、別な通路ができていた。

これでは、ウナ・・・どこにいる・・・ウナ・・・。


私は、その日からウナを探して通路を彷徨い始めた。



時折見かける者たちはみな、盗賊たちの残党のようにしか見えなかった。

だから、剣を振るった。怒りと悲しみと憎しみのままに。

妹を奪った者たちに復讐を。


こちらの動きに一度だけ老人が反応を見せたが、振り返り様に腹部へと剣をつきたてた。

もう一人の髭面の大男は驚愕の表情を浮かべ「なぜ?」と小さく呟いた。

瞬く間に距離を詰め、左肩から斜めに切り裂いた。



それからも見かけるたびに剣を振るった。


どれほど彷徨っただろうか・・・


いつの間にか階段が無くなり、定期的に生気無き者たちが通路を蔓延るようになった。

それを現れるたび切り伏せた。


そんな時を延々と続けるのかと思ってはいたが、復讐心が片隅にあり続ける限り足が動いた。


だが、そんな日が終わるときがきた。

通路だ、階段がある通路が増えたのだ。

いつものように全ての生気無き者を切り伏せると背後に今までとは違う通路があった。

その階段を上る。

途中、黒い何か?蜘蛛だろうか・・・?が、天井を伝いながら通り過ぎた・・・。

ああ、世の中は広いなあ・・・と、久しぶりに思えた。だって、人間サイズの蜘蛛ですよ?

これを表現できる言葉は、私には無かった。


おや?


こんなことを考える余裕ができるとは。

なぜだろう、懐かしい気分だ。


それが強くなっていく、怒りや憎しみがかすれていく・・・


その理由のような景色に辿り着く。


何者かの声が聞こえるが、

そこにはこちらに背を向ける不思議な犬と

宙に浮く本があった。


(なるはど~) とか (なんで?) と聞こえる。

誰が誰と話をしているのかはわからない。犬しか姿が見えないから・・・



そして、宙に浮く本が勝手に開き・・・





天使がいた。



「ウ・・・ナ・・・?」



ああ、見慣れた服装のままだ



「ウ、ナ、・・・なのか?」



幸せそうに寝ている気がする



「生きて、いる、の、か・・・。」



呟きながら宙に浮く本へと近づく・・・







嗚呼、愛しき妹よ。


兄さんだよ。




声を聞かせてくれないか?


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