14話 「声の人」
声の人、なんだかおかしくないか?
てか、最初のカミナのメッセージ再生とか伝えてくれた声と少し違う・・・
先ほどは冷静じゃなかったから気付かなかったがポ~ンもなんか違和感があったな。
なあ、この声違うようなきがするんだ・・・。
『・・・。ねえ、蜘蛛ちゃん何してるのかな?』
え、蜘蛛って・・・
<・・・。>
『お~い、分体の方じゃないでしょ貴女?』
分体?てかなにを言っているんだ?
これは、俺の頭の中で聞こえてる声だよな?
<え~えっとですね。ワタクシは本体のほうです。>
本体のほう?ナニヲイッテイルノカイミガワカラナイヨ・・・
『さっき言ったでしょ。リューくんに接触した時にって、リューくんは別に大きいほうの蜘蛛に触れてないでしょ?』
リューくんって・・・。
あ、確かに触れていない気がする。
見惚れてはいたけど・・・
<・・・ぽっ。>
『・・・。そうでしょう?あの大きなほうが分体で、チッサイ本体の方がアナタに接触したわけよ。』
なるほど、ではこの声は・・・
<あ、はい。ワタクシデス・・・>
蜘蛛さんなわけか・・・へ~
って、ず~っと憑いてたのか!
『ん~確かに、付いてたというより憑いてたになるわね・・・。』
<何ですかそれ・・・ゴーストじゃないですか!>
『似たようなもんでしょ。』
気付かなかったな・・・こんな綺麗な声してる子が近くにいてくれたなんて。
俺、無様で見っともなかっただろ?
<そ、そんなことは無いですっ!勇敢でしたよ!
付くなら断然、蜘蛛使いの荒い神様より
ミニクイワタクシなんかに見惚れてくださり、
綺麗な声だと言ってくださるリュー様に憑きます!>
『なら解雇。』
<やったー!っじゃなくて、いいんですか?>
『いいわよ別に、ついでにリューくんの能力の実験にうってつけだわ。
おめでとう、実験体1号』
・・・。なんかさらっと凄いことを。実験って何です?実験て・・・
『そりゃもちろん、この蜘蛛ちゃ・・じゃなくて実験体1号ちゃんの器を作るのよ。
レッツメイキ~ング!』
そんなこと言ってる場合ですかね・・・神さんよ。
『ふぇ、なにが?』
いや、だって俺、戦闘中でしょ、ぼろ負けだったけど。
『そうね、ウナちゃん犠牲なっちゃったね。
だから、ウナちゃんの器をね、創るのに失敗しないように、
実験体1号ちゃんで試しとくのよ。』
その件も大事なのですが、ですからせんと『そうね、そうよね。今のアナタの姿じゃちょっと厳しいわね。ほとんど霧状になってるわ。今は、時間をゆっくりにしてるから外界とズレが生じてるでしょうね。』
そうなんだよな・・・今カラダのほとんどにひびが入り煙みたいなのがつねに吹き出ている状態になってるんだよな・・・。漂っている霧状の部分が全て俺のようなきがして奇妙な感じだ・・・。
『実際、それ全部アナタよ。アナタから漂う魔素に方向性を載せれば動くわよ。
ついでだからあなた自身も試してみたら?』
俺自身?
『そうよ、今まで普通の魔物のをそれも1体分しか纏わなかったでしょう?ユニークのヤツとか纏ってないでしょう。』
た、確かに。
てか、1体ずつしか纏えないと勝手に思っていたようだな・・。
それに、ユニークに関しちゃバンダナ野郎のはウナに使ったし、
マッチョオーク(ヴォルキン)さんのはウナが凄い拒否してたからな。
筋肉恐怖症か、マッチョ恐怖症だろうか・・・。
だから、巌オークのおっちゃんのも嫌がるだろうと思ってたしな・・・
『実際あの時のアナタではフツーのを1体分纏うのがやっとだと思うわ。
今のアナタだからこそできるんじゃないかしら?
まあ、それを試してみてほしいのよね。
では、どーぞー』
<リュー様ファイト!できる、できるよ~!
これが成功すれば、ワタクシの未来も明るい!>
実験体1号さんの切実な願いが聞こえたよ・・・。
試してみるか・・・。
◆雌犬
お涙頂戴も終わっちまったか・・・。
にしてもナンダイ、あの雌ゴブリンなんだか胸糞悪い。
庇ってもらうだけの、オスに媚びを売るような女じゃなかった・・・
そして、あんなにも大事にされて・・・
うううぅ~~~。
あのトカゲ男も何なのだ、両手を焼き、さらに左腕を食いちぎったというのに右の拳を振り下ろしてきやがった!とどめとばかりに頭噛み砕いたのに、それでも起き上がりやがった。
そして、見せ付けやがった。
うう、悔しくないもんっ!
アタイだって良い出逢いが待っている!
・・・って
あ・・・れ・・・なに?
動きが止まっていたトカゲ男が全身ひびだらけで、煙みたいなのだしてやがる。
霧がかったようにアイツの後ろの通路が見えない。
なぜだろう・・・恐い、怖いよぉ・・・
あの霧全てが、全てがアイツのようにおも・・・え・・・て
あ・・・う?え・・・
いつの間にアタイは座り込んで・・・おっ、おもらしを・・・
つ、つめたい。びしょびしょだ・・・
震えが止まらない・・・。
殺されるというイメージがダイレクトに伝えられてくる。
アイツの姿が全部霧のようなものに変わった・・・。
そして霧の中から何かが・・・
え、ナニあれ?手なの、前脚?
アタシの体ほどの大きな手がそのまま頭上に・・・
あ、がっ・・・!
ぐううう、く、苦しい。あ、アバラが背骨がひ、悲鳴を・・・
鬣を炎にしてるのに、全く焼けない・・・
そればかりか力が強く増すばかり、握りつぶされ・・る
かっは、あ、・・・顔だ、アイツの顔だ。
何なのよ!牙の大きさも半端ない!
まるでアイツの口が通路そのもののよう、な、気が・・・。
ああ、アイツを怒らせてしまったのね・・・。
アタイも終わりか・・・イヤだな~
女としての幸せってヤツを知りたかったのになぁ~
こんなに強いんだったら
アンタの女にでもなりたかったよ。
大きく開いた口へとヘルハウンドのボスを持っていき・・・
バキリッ!ぐちゃっ!ぶち、ぶちっ・・・
がじっ!ばき・・・ゴクッ!
おお、くっちまた・・・
む、ちょっとしょぱさが・・・ナンデダロウ。
ダイレクトに体力が回復した~って感じがするのがなんとも・・・
いや~参ったね。
巌のおっちゃんをベースに、前の階のフツーのオークと、
この階で手に入れたフツーのヘルハウンドを追加してしまってね。
足しすぎたと反省してる。
もう足したとたんに・・・お腹が空いてね、そう、お腹が空いたんだよ。
このダンジョンにいてはじめて腹が減ったと感じたんだ。
そしたら、くいて~ってなってね。
今の現状です。
『す、すごいわね~なんと言うか・・・』
<ワイルド~男らしいですね!
あ、ワタクシは女ですからおしとやかとか、そっち系でお願いしますよ。
腹ペコキャラとかなりたくないですからね。
ゼッタイですよ?>
『んっ、うんっ、で、どう?』
あ、なんか抜けてく感じがあぁ~
元の15cmのカナヘビモードになっちまった・・・
『イザって時じゃないと魔素が維持できないから気をつけなきゃ。
消えてなくなったわけじゃないでしょう?』
そういわれて確認すると・・・確かに減ってはいないね。
『顕現に魔力の消費が関係してるのね。消えてなくなるわけじゃないと。良かったわね。』
ああ、また集めたりとかとなると最悪だったな・・・。
ついでだから、通路に転がるヘルハウンドのボスによって殺されたヘルハウンドたちを吸収してしまおう。
ゲスモヒは・・・いいや、
なんか近づきたくも無い。
<で、ではお願いしましゅ。あ、かんじゃった・・・>
ドウヤッテかむんだっと気にしてしまいそうだったが・・・集中することにした。
『今回は、実験だからね。
わたしが持つ実験体1号ちゃんのイメージ載せてあげるわ。
成功率上がるはず。』
<ワ、ワタクシ自身のイメージもお使いください。神様だけに任せたら心配で。>
『む、ひどいなー蜘蛛ちゃん長い付き合いじゃな~い』
集中、集中・・・集約、イメージ・・・
<神様!邪魔しちゃダメですよ~>
『むううう~、まあ、いいわ。
今までのご褒美ってことで脚色してあげるのはホントよ?』
なんかもうお任せで良いかな・・・。
2人?からのイメージが強すぎる。
よし、一度蜘蛛さんを取り込もう。
<あ、あったかくて気持ちいぃ~>
『あ、いいなぁ~。我慢、我慢よわたし。
このダンジョンから出さえすれば・・・ふふっ』
なんか小声で聞こえた。だが集中してるせいでよく聞き取れなかった。
俺というダンジョンの中で組み上げる
そして・・・・顕現せよ!
「お、おお~成功です。成功ですよ。リュー様!」
声が聞こえてみてみると
目に毒だな・・・
ピチピチな黒のライダースーツに身を包んでブーツを履いている。
ゴーグルをしているので表情は窺えないが。
グレーの髪を後ろで一まとめに結んでいるグラマラスな女性が・・・
六本の腕を自在に動かしながら手を握ったり開いたりしていた・・・。
『胸のサイズは自重したのね・・・。』
「さすがに、神様ならそこを上乗せしそうな気がしたんですよ。
神様の胸、背丈のわりに凄いデカイですから。
だから胸に、ワタクシは脚色不要です。
邪魔なだけです。
機動力に支障が出ます。」
『ちょ・・・そこまで言わなくても。』
な、神様はそんな胸でかいのか?
『ん、ふふ~みたい?だ~め、取りあえずこのダンジョンをどうにかしないとね?』
べ、別に見たいとか・・・ん?
そういえば、ウナの事が取りあえず心配無用とのことだったが、
俺が今一番気にかけないといけないことが
なぁ、イルマは無事なのか?
『そういえば、わたしは指示を出しただけだからね、どうなっているのかしら?』
「あ、えっと、そのですね~。
言いにくいのですが・・・。
この階から3っつほど降りた辺りで、黒いスライム?みたいなヤツにですね~」
おお、スライムっ!
『そこ、またファンタジーっとか言い出すつもりでしょ!
自重なさい。で、そのスライムみたいなヤツが?』
「えへへ・・・分体を倒されちゃいました。てへっ」
器用な頭のかき方だな・・・って、それって
『おい、そこの馬鹿蜘蛛女。あそこはセーフゾーンなはずよ。
まさか、ダンジョンマスターが動き出した!?』
「その可能性が・・・」
は、そりゃないぜ・・・イルマは無事なのか?
「はい。無事ではありますね。
イルマ様にもちっさな分体がくっ付いていますから。」
『今のところは、でしょ?』
「で、でも運がよければそのダンジョンマスターの位置を把握して、対処が!」
『それまで無事なら良いのだけれど。』
「あ、今声を拾いました。うへ~なんかねとっとした感じの声です・・。」
『その声はなんて?』
「心配するな、殺すつもりはない。今のところはな・・・献上品だ。と」
『あまり良い予感がしないわね、蜘蛛ちゃん先に斥候しときなさい!』
「は、はいっ!・・・。」
・・・。
『・・・。なに?行かないの?』
「あ、あの~。ワタクシは、その、リュー様のしもべですので・・・」
『っち。』
舌打ちはどうかと思うぞ・・・神さんよ。
それで、どうしたのかな蜘蛛さん?
「な、名前を・・・。そして、そしてワタクシめにご命令を。」
そう言いながら、方膝をつけ恭しく頭を下げた。
まいったな・・・。
腕が六本といえばアシュラ(アスラ)それとも蜘蛛の名前からか・・・
それとも第一印象・・・
彼女は確か・・・
八本の足にいたるまで黒曜石のような光沢を持ち、
並んだ複数の目は血のように赤いルビー。
オブシディアン・・・。赤いコランダム・・・。
ジュエル・・・。
ぐぬぬ・・・。