12話 「あなたの手はゴツゴツしているけどとても優しかった。」
今までのウナ視点となります。
気付いたらね、変な通路に一人ぼっちだった。
良くわかんないからね、取りあえず前に進んだ。
そしたら、広い空間に出た。緑色の変なヤツがいる。ヘンなやつらはウナにむかってきて叩いてきた?
ウナは、ウナだよ。叩かれてる時に、何かワタシがしたのかなって?
そして、ワタシって誰だっけーって思ったらね、ウナって呼ばれてた気がするって思ったの。
頭叩かれて思い出したのかな?
緑のヘンなやつら、なんか興奮してるね?
いじめるのが好きなひどいヤツらなのかな・・・。
あ、う?ワタシこん棒で叩かれてるのに鈍感なのかな、あまり痛みが無いや・・・。
それともたたかれすぎ?
打ち所が悪かったのかな?
ん、なんかもっとヘンナ緑の子がいる。腕組しながらこちらを見ている。
あ、意識がぼんやりしてくる・・・。
どこか遠くで「なんだよ、こりゃ」と聞こえた・・・
そして闇にとらわれた。ブラックアウトってやつだね?ん、なんだろそれ・・・。
首の後ろとお腹に熱を感じる。あったかいなぁ~
そしたら急にお腹に熱いものが流れてくる。
不思議な感じだった。全体に流れていくような、体表だけでなく体内のいたるところまで、全身に染み渡っていく。きもち~なぁ~
あれ、終わっちゃった。だから、終わっちゃったのが気になって目蓋を開けた。
(どうしたものかな・・・。)
そう言ってワタシの顔を覗く、「茶色くて不思議なトカゲ?」さん。表情はあまり良くわからないけど、雰囲気からして困ってるみたい。だから、何かあったのか聞いてみた。
(なんと!こちらの声が伝わるのかい?)
おっ、おっきい、頭がガンガンしてきた。苦情を申し立てる。
お話ができたから驚いてしまったんだって。
別に驚くことなんか・・・あ、口を使わずに話してる。
すごーい?
声からして男の人だとはわかる。何か話しながら立ち上がろうとしたので、思わず「ダメ」と言ってしまった。だって、今は近くで暖かさを感じられるんだもん。だからね、もうすこしだけ。
え、ゴブ?なんだろう。あの緑のこと?そういえばいないや、どこ行ったのかな?
ヘンナ緑もいない。
誰かを探してるんだって。ならワタシも一緒に探す。そのほうがいいよね。このまま、また一人なんて、寂しいから。一生懸命彼の瞳に訴えた。
えへへ~。一緒にいてくれるって。
ん、そういえば話し方がワタシなんだか片言みたいになってるけど、ちゃんと伝わってるよね?
起き上がると、ワタシより彼のほうが少しだけ背が低かった。
そして、自己紹介。
彼が、「俺は、竜一。キミは?」と聞いてくる。
むむ、発音し辛い。りゅーちぃー、りゅーい?
「ああ、リューイでいいよ。」
む。彼は苦笑い?
頑張ってリューイチって呼べるようになりたいな。
ん。ワタシは多分『 ウナ 』
誰かにそう呼ばれてた気がする。
その誰かは、とても暖かい、でも何時も冷めたようにしている。
自分に厳しいんだよね。
ワタシの・・・ワタシの・・・誰だろう?
結論、ナイフは軽いほうがいいね。カッコイイだけじゃ、プルプルする。む~
下の階へと降りることになった。階段を下りきると彼が「イルマ」という名前を・・・。
誰?っとなぜか反応してしまった。
そしたら、彼を呼んだ子らしい。その子のおかげでリューイに遇えたんだ。
ん?そういえば、お腹から身体全体があったかくなってから、感覚が冴えてる?
足音が聞こえた。のしっのしっと。そちらを指差す。
少しして彼が「オーク」と、ふ~んオオ~クかぁ。
彼が駆け出す、早い、すごい、簡単、終了。あ、オオ~ク消えちゃった。
そして、進んでるとまた のしのし
はや~い。すごいねリューイ。
そしたらね、通路の先から
「オヤ?アシオトダナ。ダレカクルノカ・・・。
ソウカ、ヒサシイナ。デハ、トッテオキノポーズヲッ!」
って聞こえてきたんだよ。それもね・・・。
「ヌウウン!」とか「ホオオ!」とか変な掛け声も。
多分、リューイには聞こえてないかな・・・。
この声、もう聞きたくないなぁ~
イヤだな~
ヒイイイィ・・・筋肉イヤ、イヤァァ~
リューイもすぐにナイフを投げたんだよ。
でもね、筋肉さん止まらないんだよ。
「オリバーポーズだと!!!」
って急に叫びだしたけどスゴイの?
スゴイのかわかんないけど、リューイが「おお」って、ナニが「おお」なの?イヤだな・・・。
筋肉さんが消えちゃった後、リューイがナイフで近くにあった木箱を叩くと・・・
あ、消えちゃった。すご~い。何したのかな?
少し疲れちゃった。筋肉さん見てたからかな?
おなかすかないかって?
あ、そういえばおなかすかないや。
ん~空気がオイシイ?
え、おんぶ?
な・・・さっきの筋肉さんになれるの?イヤ、イヤ!もう筋肉はイヤ・・・。
ふぇ・・・リューイ消えた?
あ、トカゲさんだ~リューイと違って小さいね?
・・・。背丈気にしてたんだ。
小さいトカゲもリューイの姿なんだね。
でもね、それとは別の姿が、今一瞬だけ見えたんだよ?
不思議だよね、それがリューイの本当の姿なきがしたんだよ。
不思議な黒い服着ててね、それでいてワタシより背がとても高かったな・・・。
綺麗な黒髪。ワタシの髪みたいに汚れたような色じゃなくてね。
短めに切りそろえてたの。
お顔が見えなかったのが残念だけど。
あの姿のリューイの顔を見たかったなぁ・・・。
わあ、高くなった。でも、オオ~クみたいにお腹は出てないんだね?
女の子ならね、お姫様抱っこだよ!譲れない!
んふふ~お姫様だって~嬉しいな。
嬉しいですよ。
だって、ワタシはメイド見習いだったんですもの。
ああ、夢のような話。
リューイチさん、アナタだけのお姫様に・・・。
ん?今ワタシなんか・・・
まあいいや~恋人みたい?
コイビトって何だろう?
またノシノシ聞こえてきた。ああ、幸せな時間の終わりか。
次は肩車がいいかな?
お父様にしてもらった記憶がありませんから・・・。
街中で見かけた親子は良くなされてましたね。
それはとても幸せそうで
見る景色が全然違ったことでしょう。
ああ、楽しみです。
ワタシのワガママ聞いてくださいますよね?リューイチさん♪
わぁ、強~い。さっきのリューイは早~い感じだったけど。
ながーい剣が無くても戦えるんだ!ん?ながーい剣?むぅ。
あ、今度は3ノシノシ~
リューイなんだか呆けてる。
この世はね、リフジンなんだよ。いつも、えっと、あ~と、誰かが言ってた。
そんなことより肩車。
おっきい背中、ああ、あ、いま立ち上がったら
んっ
ふぁ
えっあっ、急に屈んだので抱きついてしまった。役得?
むぅ、肩車おしまい。
あ、あれ、もう乗せてくれないの?
足にちょっと力が入らない。もう少しだけ、ね?
どうにか頼むと乗せてもらった。
む、緊張してるのかな。こわいかおしてる?
何かあるのかな。ワタシはリューイとお話できればそれでいいけど。
戦うことが生き甲斐の人も世の中にいるって聞いたことある。誰からかな?
筋肉さんより凄いけど、なんだか不思議な感じのオオ~ク。
リューイと楽しそう。
ムゥ・・・空気だな・・・ワタシ忘れられてる気が・・・
ん?他所の世界?この世界以外に・・・
でも、今のワタシはリューイが傍にいてくれる世界しか知らない。
ここ以外にもいろいろと世界があるのかな。
お疲れ様、リューイ。
ワタシも、お腹が未だに空かないや・・・。
美味しいものとか食べたいんだけどな~
わ~石がイッパイ。セイレイ石?だっけ・・・と~ってもお金が必要なんじゃ・・・
わぁ、この魔石も純度がたか~い。
こんなにあったら、お館様の屋敷と同じくらいの建物建てれるよ~
ん?オヤカタサマ?だれだろう・・・。
独り言が多いなぁ
あれ、リューイも独りごと言ってたの?
この通路、あ、狭くて乗せてもらえない。むう・・・
グルル?わ、リューイ襲われた、大丈夫なのかな。痛くない?
ん?ふぁんたぁじぃ?
それならね、幻想的ならね、リューイが一番だよ、ふふふっ
幸せだな~
リューイも幸せかな~
下の階に下りたらね、なんだか不思議な感じ。いや~な感じ。
見られているというより、聴かれてる?探されてる?変な感じ。
「こりゃ短いな」
む。確かに、
ん?遠くから
『ぐるううううううがあああああっ!』
さっきのグルルと違う、もっとおこりん坊さん?
他にもイッパイ
なんだか嫌な予感がする。リューイの事が心配。
やっぱり、イッパイでも変な感じ・・・おこりん坊さんと、ううう、アレハ、イヤ。イヤあぁ。
なにかオモイダシタクナイコトガ・・・アイツはダメ。ダメなの・・・
ダレだっけ・・・デモイヤナヤツナノ・・・。
どれだけ怪我してもある程度なら治るけどね、心はダメなの。
壊れちゃうよ、裂けちゃうよ、兄さんみたいに・・・。
兄さんみたいに?
ニイサン?
誰だっけ・・・
ワタシがかわりに傷つくからね、代わりに守ってあげるからね。
リューイおねがい。
無理しないで。
おねがいだから。
あ、アイツ・・・逃げたように見えるけど。あの顔は・・・
ヤッパリ、嫌な予感がする・・・。
リューイ大丈夫かな。え、岩の塊が落ちてきたよ。
めてお玉座?玉座すとらいく?
・・・岩落としでいいんじゃないかな?
怪我をしていないとリューイが腕や背中を見せてくるけど、なんだか無理をしているように見える。
ワタシ、あなたの事が心配なの。
無理をしてはおりませんか?
何かお隠しではございませんか、ねえっ
何かお心当たりございませんかっ!
誰かと今のお姿は似ている・・・
『「そんな顔しないでくれ』ないか?」
そんな、そんな・・・などと・・・。
ワ、ワタシは心配しているのに!ニイサンっ!
そんななどとおっしゃらないでください!!!
ワタシは、あの時言えなかった言葉を口にした気がする。
ああ、兄さん?ん?兄さん・・・。
兄妹・・・。
今まで見たこと無い表情と感情と威圧感。
恐い、これじゃまるであの時の兄さんのようだ。
このままじゃ、リューイも兄さんみたいに・・・
今ならリューイは大丈夫。今この場から逃げてしまえばっ!
ワタシの事はいいですから、おねがいします。
このままだとリューイさんは、兄さんみたいに殺されてしまう。
怒りを抱いたまま・・・
その考えが頭からどうしても離れてくれない。
ああ、進んでしまった。
今まで感じたことが無い空気、気配。
奥底から聞こえてくる死を連想させられる。
近づいてゆく。
今までよりも大きい、絶対的な強さの壁。
リューイ!あぶな・・・ぐ・・・あ・・・
い、意識が・・・あ、リューイさん。リューイさん!手が、腕が・・・
あ、そ、そんな・・・リューイチさん。
トカゲの姿に、でもまだ死んでない。
待っていてください、今そちらに・・・ワタシが盾にでも、時間稼ぎにでもなりますから・・・
(だ、・・・れだ。)
リューイチさんワタシですよ、ウナです。ああ、右目から見える景色が赤黒い。
お、お腹も痛いな・・・今まであんまり痛くなかったのに・・・痛い。けど
囮になりますから・・・ウナでは足手まといですからね、リューイチさんだけでも
あ、れ、なぜこちらに。
あ、あの時の姿に、でもなんだか体が彼方此方崩れて煙のようなものが出てますよ。
リューイチさんには生きていて欲しいんです。
だって・・・ワタシは、
・・・私はこの洞窟のどこかでもう死んでいるのですからっ!
ですから・・・ね。
この様な姿でいられるのも限られていると思うんですよ。
もう話すこともできないかも知れない。
でも、リューイチさんには生きていて欲しい。
捜しているというイルマさんの所へ・・・向かっては下さいませんか?
「今は、ウナがっ・・・!」
ああ、あの時のようにあったかいな、でも、もう手遅れみたいですね。
私の中から零れ落ちてゆく・・・。
あの時は、兄さんの死によって何も残らなかった私、でも今は傍にリューイチさんがいてくれる。
寂しくないよ。
嗚呼、あなたの手はゴツゴツしているけどとても優しかった。
え、何だろう?あの光は・・・人?でも宙に浮いている。
あ、私の事を見て微笑んでる?
紫色の髪、赤い目がとても印象的。
もしかして、神様?私、お館様の屋敷でそのお姿と良く似た女性の絵を見たことがあります。
話によると、私のお母様や伯母様の部族が信仰なされていると・・・。
『そう、わたしは古来より死や生に携わっているとされ、
そして何より≪試練を課すもの≫として崇められているわね。』
ああ、そうなのですね。ではこれも、この出来事も・・・。
この出逢いも・・・死してなお、機会を下さったことに感謝します。
『こらそこ、勝手に終わろうとしない!
確かに、彼の試練に携わっているわね。あなたの存在は大きく。
だからこそ、貴女は終われない。彼が終わらせない。』
え、ではまた逢えるのですね。すぐに逢えるのですね。
聞こえましたかリューイチさん。
うれしい、嬉しいです・・・ね。
『そうね、そこは彼の頑張り次第だわ。
だからね、その間は彼のナカデお眠りなさい。
彼の存在が昇華し、このダンジョンに打ち勝つことができたのなら。
きっと、また彼にオヒメサマダッコもしてもらえるかもね?』
あ、私の存在自体がまるでリューイチさんの中に流れていくような・・・
不思議だなぁ~
でも、心地良い。
眠くなってきちゃったなぁ~
おやすみなさい。リューイチさん。ついでに神様も・・・
『・・・わたしはついでなのね。』