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ダンジョンリザード・ライジング  作者: 藍色ノ鰐
一章 『ダンジョンから始まる異世界』
10/44

10話 「犬?狼?」

中央辺りに放置されたスクラマサクス、端にあったメイスを回収した後、探索を開始した。




「無事に地上に出れた時、金目の物が手元にあったほうがいいよな。流石に換金できなくもないとは思うが、その場合は物々交換かな・・・。」


イルマの服装は所々裂けてる長袖のワンピース。他には、特に持ち合わせてる物もなかったしな。

お腹空かしてるだろうか、そしたら急いだほうがいいよな。

でも、せっかく目の前にイザという時の品があるんだ。

まあ、こんだけあっても腹は一切膨れないだろうがね・・・。

そう思いながら玉座やその周りに落ちているカラフルなガラス塊っぽいものを手に取り格納していく。


「こりゃ楽だね、でもいつかは、容量オーバーする可能性も視野にいれとかないとな。」


装飾の施された金細工なんかもあるや・・・。


「ン。ヒトリゴト、オオイ?」


ウナもかき集めるのを手伝ってくれている。

独り言って・・・まあ、確かにソウダヨナ。


「後々の事を考え、口にする余裕がある証拠さ、迷惑だったか?」


「ン。・・・モンダイ、ナイ、ヨ。」


そう言いながらこちらの手の平に集めた宝石っぽい物を載せてくる。

その品々を格納した後、


「そろそろいいかな、全部回収するのはよしとこう。小さいのまで集めてたら限が無いや。」


その言葉にウナはこくりと頷く。


「やはり次の階も下か。まだまだ続くという事なのか・・・。」


呟きながら階段を下りる。少し間を空けてウナもついてくる。

乗せて移動するには階段の天井はそこまで高くなかった。

俺は少し屈まないといけなかったしな。

ウナは少し残念そうにしていた・・・。

階段を下りきると共に・・・


「(がるるぁっ)」


っと、犬?狼?それともオオカミケン?

まあ、薄暗い灰色の毛並み。

背中辺りが黒に近いな。

サイズ的には中型犬だな。

そして、待っていたかのように飛び付いてきやがった。


「ぬうおぅ!」


とっさに上げた右腕に噛み付かれた。ぐ、HPが削られているような感覚。変な声が出てしまった。オークの魔素を纏っている状態だからか丈夫だな。ゴブリン状態なら腕ごと持ってかれてたな。

取りあえず、右腕に噛み付く犬?に左手に出現させたナイフを突き立てる。


「(ぎゃいっ)」


と鳴きながら噛み付くのをやめて地に足をつける。

着地したが腹部を刺されたことによって少しよろけた。

よろけた所に腹めがけて蹴り上げる。


「(ぐうっ)」っとくぐもった声を上げて正面の壁に勢い良くぶつかる。

プルプルしながらも起き上がったことに驚いたが、ひと鳴きした後、倒れ伏す。


「ふむ。名前は ヘルハウンド か、なんともファンタジーっぽいな・・・。」


吸収した魔物犬の魔素が書かれてるページを確認しながらふと思う。


「ン?ふぁんたぁじぃ?」


・・・。

こちらの世界の存在からしたらそら空想や幻想ではなく当たり前の事だもんな。だから、ファンタジーなどと言うジャンルはないし、これがリアルなんだよな。


「ああ、幻想的やら、空想的なことをそう言うんだよ。」


「ン。ナラ、リューイ、ふぁんたぁじぃー?」


お、おお。そう来たか。

ん?

確かに、今まで見てきた物事からして一番のファンタジー要因は俺じゃねーか。なぜ今まで気に留めなかったのか、自分自身のことはなかなか気付けないわな。周りが異なりすぎて、さらには急展開が続いたからあまり考える暇がなかったと言うことかな。


「ああ、そうだな。俺が一番のファンタジー野郎だな。」


苦笑いをしながら振り返ると、微笑を携え「ン。」と言うウナの顔が・・・

おお、守りたくなる!その笑顔ッ!!









だが、守れなかった。



ああ、俺の中でナニカガクズレサルヨウダ・・・イママデカンジテイタ激情スラ・・・















取りあえず、探索してみようかと言い行動を開始するが、先に調べることにした左の道は角をいくつか曲がったかと思うとすぐに行き止まりだった。枝分かれした道が全くない。


「こりゃ、短いな・・・。」


こちらの呟きに、横にいるウナが


「ナンカ、ヘン?モドル?カイダン、イコッ。」


なぜか心配そうに声をかけてきた。



ああ、この時にウナ自身は気付いていたのかもしれないな・・・



階段前には、先ほどヘルハウンドが息絶えた場所に一回り大き目で、先ほどよりも全体的に黒々しく。並ぶ歯は鋭さを増し、赤い目が血を連想させる。だが、一番目立つのは、トサカだろうか?モヒカンかな?赤々しい鬣のような毛を頭のてっぺんから生やしていることだった。

そんなモヒカン野郎が2匹も、さらにその後ろには先ほどのヤツと同じサイズが5匹で集まっているグループと4匹で集まっているグループとそれぞれのモヒカンたちの後ろに別々に待機している。


ああ、アイツはグループから離れたところだったのか?

それとも、一番気配に敏感だった個体なのか。


今までの連戦はオークの2+3だ、ゴブリンに関しては3体が普通だったし、こちらが一方的に仕掛ける戦い方だった。それも戦闘も間が空くのが常だったので苦戦することはなかった。

今回はまとまっている。それも大小合わせて11匹。

対してこちらは2人?だ。

それもまともに戦闘できそうなのは俺のみ。

ウナの護身用に持たせているナイフと非力な腕力では奴等の厚い毛皮には突き立てれないだろう。

逃げるか・・・。

いや、退き帰してもこの通路は行き止まりだっただろう。

隠れる場所さえない。したがって戻ったほうが自殺につながる。

せめてウナだけでもと考えるのなら階段までどうにかしないといけない。

こちらに向かってくる前に行動に移さねば。やつらは右側の通路から来たであろうことは確実だ。

身内を失ったモヒカンたちはヤッたヤツを捜すだろうからな、こちら側に来るのは明白だ、てか、犬なら臭いとかでばれそうだよな。耳だってそれなりにいいだろう。こりゃ詰んだか?いや・・・


「ウナ、お姫様抱っこだ。そして、階段のところまで走るからしっかりつかまっていてくれよ。」


今の俺はそれなりに丈夫だ、走っている間に噛みつかれたりしたとしてもふりきれるだろう。そして、階段なら狭さを利用して複数まとめて相手せずにすむ。


「リューイ、ハ、グルル、イッパイダヨ?」


ふむ、ヘルハウンドはウナ的にはグルルと言うのか。おいおい、そんな泣き出しそうな顔はしないでくれよ。


「俺は大丈夫だ。ほら、さっきも噛まれたけど平気だろう?」


そう言いながら歯形の一つも残っていない右腕を差し出す。だが、ウナは腕を一瞥した後こちらを見上げながら首を左右に振る。


「ヘイキ、ナイ。リューイ、イタイノ、ココロ、イタイ、カラダ、ヘイキ、デモ、ココロ、ヘイキ、ナイ。」


精神的にと言うことか・・・。外傷が残ら無くとも心にキズは痛みは残ると。

ウナに目線を合わせるために屈む、その小さく華奢な肩に優しく手をのせる。そして、ウナの黒くて綺麗な瞳を覗きながら・・・


「もう一度言うけど、俺は大丈夫。ウナ、俺なら平気だ。頼む、俺に守らせてくれないか?」


その言葉に俯いてしまう。前髪が長いので目元が隠れてしまった。


「・・・。」


ただ、その後の沈黙を経て顔を上げると「ン。」とお馴染みになった返事をかえす。


「モシモ、リューイ、イタカッタラ、ウナガ、マモルカラ・・・。」


っと小さく呟いた。


「そうはならないように善処するよ。」


ウナを抱き上げると、通路から駆け出す。

やはりと言うか、すぐにモヒカンの片方が反応してきた。


「(ぐるあ!)」と吠えると後ろに控えた4匹が走り出す。


近づいてきた1匹目を左足で蹴り飛ばし、飛びついてきた2匹目を右腕で叩き伏せる。

イルマを抱える左腕にかかって来た3匹目を体を捻らせながらの尻尾の一振りで壁に叩きつける。

最後の、と思った瞬間モヒカンがいつの間にか前方に待ち構えていた。


「(があああ)」と声を上げる。その口内がオレンジ色に染まっている。不味いと思った時には、すでに跳びかかり、前に出した右腕に牙を突き立てる。


どじゅうううぅ~ と言う音と共に肉が焼けるよう臭いが・・・


「ぐ、ぐああ~っうう・・・」


熱さと痛みが同時に信号となって頭に届く。


「あああああああああああっ」


大声をあげ痛みを紛らわし、熱さに耐え、噛み付かれながらも走り。そして壁際に叩きつける叩き付ける、叩き、叩き、叩き、ただひたすらに叩き付けると遂に「ゴッ」っと言う声と共に首から下がプラ~ンと力無く垂れた。輪郭がぼやけだす。

その瞬間、背に痛みを感じる。4匹目が前脚による一撃を加える。追いついてきた残りの奴等も続け様に飛び掛る。背に傷が増えていくような感覚がする。眉間に皺を寄せながらも、右手に力を集める作業を行う。

そして、いけると思うと同時に振り返りざまに五本の爪で引き裂く。2匹が攻撃を受け短い悲鳴と共に霧散。残り2匹が跳び退き距離を置いたところで走る走る。

クソウ・・・。もう一つのグループ、モヒカンのほうは涼しい顔してこちらを見てやがるが後ろのやつらはいつ跳びかかってきてもおかしくねえ。どういうつもりだ?



そして、それは起きた。

あいつはただ見てるだけではなかった。

もう一匹のモヒカンが徐に階段の方を向いた時、口から、歯の隙間から炎がこぼれだしているのを確認できた。

こいつ、まさか!と思った瞬間、口をおおきく開け炎弾を吐いた。


ずうううん…  と言う音を立てながら階段のある場所の天井が崩れる・・・。そして、塞がった。


こいつ・・・!ゲスだ、他のグループ(身内がやられたグループ)を見殺しにし、さらには、獲物が一番絶望するであろう瞬間にこの行為・・・ゲスノキワミDA!

それを裏付けるように、こちらが唖然としているところを見て犬面なのにイヤラシイ笑みを浮かべてやがる・・・。


「クソッなんてやつだ!」


そう声をあげ追いついた二匹に五指を振るい仕留める。


それを見て、モヒカンは目を細め、短く吠え、右側の通路の方へと駆け去った。

残された5匹はそれを見届けた後、こちらに唸り声を上げながら。通路を塞ぐように並んだ。


「ゲスモヒ野郎、応援でも呼ぶつもりか!」


悲しそうな顔をするウナを降ろすと、左手に大振りナイフ、右手にスクラマサクスを出し。


「邪魔だああああ!」


と声を上げながら俺は走り出した。




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