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海とモブ其の二

「姉さん……なんてことを!これを手に入れるのに僕がどれだけ苦労したと思っているんだ!」


「お前こそ私をどんなキャラにしたいんだ!?色物扱いするな!」


「礼那お姉ちゃん!待ってよ〜!」


次に現れたのは巫女だ。ピンクのセパレートの水着で同じくピンクの浮き輪装備だ。髪はお団子二つにしてまさしく小学生だった。


ちらりと弥富を見ると、うつ伏せのままのはずなのだがなんとか巫女を見たのだろう。砂浜が赤く染まっていく。そろそろ輸血が必要なレベルだった。


次に現れたのは千種だ。……まるで水着ショーのように順番に登場する女子メンバー……わかっているのかいないのか……


「千種……大人になったな……」


「武流……なんでお父さん目線なの?」


千種はライトグリーンと白のチェック柄のワンピースタイプの水着だ。他のメンバーがスタイルが良すぎるだけで千種もちゃんと[良い身体]をしていた。武流も湊がいなければドギマギしていた所だった。


「武ちゃん……むしろ普段どんな風に見てたの?……」


エントリーNo.4!春日井〜!遥香〜!


(やめろ!ショーアップするな!)


「大和さ〜ん!ここにいらしたんですか〜!?」


遥香は白のビキニにパレオを装着、所々に散りばめられたフリルが上品な顔立ちを引き立てている。


「流石だな……自分のキャラをがっちり把握したチョイスだ……」


なんだか忠臣が解説者じみてきた。この辺りから翔のテンションが上がり出してきた。


武流が何気なく遥香を見ていると、横から湊が抱きついてきた。


「こら!なに見惚れてるの?ちゃんと彼女も見てよ!」


「ちょっ!湊!当たってる!」


武流の顔が今まで見たことが無いくらい赤くなっている。付き合い出してから、同じように湊が抱きついてきたことは何度かある。……まぁその度に真っ赤になっているのだが……だが今は水着でこっちは地肌だ。服の上からとは露出度が違うし、改めて見てもその膨らみは豊かでそれでいて張りがあるのが布越しでも伝わってくる。湊の水着は鮮やかなブルーのティアードスタイルネックストリングスと、同じくブルーのスカートタイプのパンツだ。


「当ててるの!これで私も見てくれるでしょ?」


湊は少し顔を赤くしながらもペロッと舌を出した。


(可愛すぎる!なんだこれ!意識がぶっ飛びそうだ!)


「他の子なんか目に入るわけないだろ!つーか他の男の目に触れさせたくないよ!」


「あ〜はいはい……他所でやってくんないかな〜そーゆーの……」


翔達は本当に嫌そうに顔を歪めていた。だがそんな事などお構い無しなくらいに武流は舞い上がっていた。


「ヤーマート!捕まえた!」


大和の後ろから抱きついてきたのはフィオだ。シンプルなオレンジ色のビキニトップと同じくオレンジ色のショートパンツはフィオの元気さと情熱的な性格を表しているかのようだった。だがそれより何より凶悪なのはそのスタイルだ。恐らくはちゃんとサイズの合ったビキニトップなのだろうが、包んでいるモノのサイズが明らかに規格外な為、凄まじい破壊力だった。


そんな破壊兵器を惜しげも無く押し付けてくる攻撃に耐えられる男がいるのだろうか。健全な男子校生であればすぐさま前屈みで崩れ落ちること必至だ。


それは鈍感男の大和ですら例外ではなかった。……いや……春先までの大和であれば全くの無反応だったのだろうが、ごく最近女子に目覚めた大和は、今やしっかり反応出来るようになってしまっていた。それでもなんとか踏みとどまった大和だったが、思わぬ追い打ちが待っていた。遥香、千種、巫女だった。


「フィオさん!はしたない真似はしないでください!」「大和ちゃんにくっつき過ぎだよ!」「ダメ〜!私がくっつくの!」


大和を中心に四人が身体を寄せてくる。タイプの違う水着の美少女達に囲まれてまさしく四面楚歌だった。大和はもみくちゃにされながら徐々に意識が薄れていった。


「中村も大人になったもんだな……」


最後は魅華だ。魅華の水着は黒のシンプルなクロスバックの水着だ。前から見るとビキニだか、後ろから見ると紐がクロスして繋がっているタイプで、表面にはレースが施されていて下着のような水着だった。


「……グッ……」


魅華が現れた途端、徹が顔を抑えてうずくまる。手は赤面とにやけを抑える為だろう。うずくまったのは…聞かないでやってくれ、男同士の約束だ。


「はぁ〜……なんだかんだ言ってもうちの女子ってレベル高ぇよな……」


「……全員好きな人いるけどな……部長以外……」


何気無い会話をしながらも、翔と忠臣もさりげなく体育座りになっていた。けど仕方ない。そんな男の事情を知らない女子達は元気に砂浜へと走り出す。


武流達が海で遊んでいる間、小牧がシートの上で寝ていると、男が三人小牧に声をかける。


「彼女!今一人?俺達と遊ばないか?うちのクルーザーで沖に出ようぜ!」


なんともわかりやすいナンパだった。ここにいるということはそれなりに地位のある者かその知人なのだろうが、セリフに知性が感じられない。


「私が三人に見えるなら眼科に行く事をお勧めします。女一人相手に三人でクルーザーなどと犯罪じみた事を言う人は一昨日いらっしゃって下さい」


にっこりと微笑んでの丁寧な言葉遣いの罵声は男達の心を深く傷付けたようだ。だが男達はなんとか持ちこたえた。


「こ、個性的な人だね。少しでいいからお話しないか?」


「謹んでお断りします。脳内ででも会話しててください」


またも笑顔の小牧の後ろから別の声がかかる。


「小牧君、こんなところにいたのか。何をしている?」


小牧が振り返ると、そこには赤地に金糸のハイビスカスが刺繍された派手なアロハを着て、ビーチパラソルと浮き輪とスイカとシュノーケルと水中めがねとヤシの実ジュースを装備した帝が立っていた。


「帝様……なんとも表現し辛い出で立ちですね……三十点です……」


「手厳しいな小牧君。それで何をしているんだ?その人たちは?」


「はい、私はちやほやされたい女の欲望を満たしておりました。彼らはその最下層です」


「そうか。邪魔したかな?」


「いえ、帝様がいらっしゃるのであれば彼らは必要ありません」


二人が話している間、小牧は帝に手を取られて立ち上がり、パーカーを羽織って帝の傍に立った。帝は現れてからずっと男達を目で威嚇していた。小牧の動作と相まって男としての格の違いを見せつけた帝は言い放つ。


「済まんな諸君、彼女はうちの者だから手を引いてもらえないかな」


言葉はお願いの様だが目は[消えろ]と言っていた。

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