If I were a mermaid.
-もしもあなたが人魚姫だったなら、どうしますか。
-私が、人魚姫だったら、
あなたの為だけに得た足は、あなたによって意味を失くした。
あなたの為だけに失くした声は、報われることも戻ってくることもない。
あなたの為だけに全てを犠牲にしてきた。
なのに、
私の前でそんな顔しないで。
私の前でそんな風に私じゃない誰かを見ないで。
-私が人魚姫ならば、
あなたの幸せを願って、自ら沫になり消えることなんてしない。
哀しみを込めた刃を、あなたの胸に突き立てる。
この手を緋色に染めてでも、私は海に還る。
陸ではもう呼吸なんてできない。
肌も喉もとっくに限界。
愛しい故郷の水を欲しがっているの。
「聞きたくない、聞くことなんてできない」
あなたがあの子に囁く言葉なんて。
あなたが私にくれた言葉は、もうとっくに風にかき消されて、幻になってしまったというのに。
-私が人魚姫だったならば、
天から与えられる乾いた翼なんていらない。
蜃気楼の世界に夢見るくらいなら、地に縛られる重い足なんて捨てて、
冷たい深海に身を浸していたい。
光もなにも差し込まない海底でいいの。
一途だったはずのあなたへの想いは、戻れない日々と共に沫になって消えた。
あなたにあげられなかった愛が、憎しみへと変わって胸に積もり始めたあの日。
「気付きたくない、気付きたくなんかなかったのに」
あなたの香りがまだこの身体に染み付いて離れないなんて。
まだあなたの腕の温もりを憶えてるなんて。
その胸に、なんの躊躇いもなく、この刃を憎しみのままに振り下ろせたなら。
あなたを愛した全ての時を、波間の沫へと変えられるだろうか。
犠牲にした想い、傷つけた人、失った時間も声も、
全て、全て戻ってくるのなら。
この手に掴んだ銀の刃を振り下ろして、ほら一瞬で。
あなたの最期に私を刻んで。
ねえ、眼を開いて。
最期に私の残像を連れて行って。
・・・でも、
「私は、あなたもあの子も憎めない」
それがあなたへの私からの復讐。
やり場のない怒りも憎しみも哀しみも愛も、私の身体を鈍らせて汚していくから。
「消して」
あなたの手で。
「終わりにして」
どうせ私はあなたを殺せない。
ならばいっそ沫になって消えてしまいたい。
あなたの手で、消してほしい。
これ以上見なくて、聞かなくて、気付かなくていいように。
泪を流さなくていいように。
あなたの中にまだ私の欠片が残っているのなら、それももう消して。
忘れていいの、あなたを縛りたくないから。
I still love you.
私が最期に呟く言葉、あなたに届きますように、届きませんように。