夫婦ごっこ
こんにちは。聖霊奏者エアトスです。
今回は異色の作品を作ってみました。
どうぞ、ごゆっくり...。
ここは閑静なマンション..。
本当にごく普通なこのマンションにある日、二人の殺し屋が入居した。
赤髪の男『ルビー』と青髪の女『サファイア』。
両者とも18歳。
どちらも暗殺のプロで任務は必ず遂行する。
今回の依頼はこのマンションに住む主婦の暗殺。
自殺に見せかけるように殺せという依頼人の要望に応えるべく、二人は作戦会議を始めた。
「サファイア。
俺達は夫婦のふりをしよう。
新婚ほやほやのふりをすればばれないさ。」
「いい考えね。」
サファイアは変装すべく流行りの服装に着替える。
サファイアはいつも着飾らない。
ピアスもマニキュアも嫌い、薄化粧だけで済ませる。
ファッションセンスは...いいとは言い難い。(ルビーは一応、その程度のセンスはある。)
「じゃあ、いこうか。
サファイア。」
「ええ。」
二人は偽りの笑顔を作ると隣に住むターゲットの家のインターホンを押した。
「こんにちは。隣に引っ越してきました、ルビーと。」
「サファイアです。」
「はーい...」
扉から現れたのは...とても綺麗な女性だった。
スタイル抜群、質素な前掛けが不思議な雰囲気を漂わせる。
まるで...戦意を奪うように...。
「どうぞ、あがって下さいな。」
女性(高梨というらしい)はルビー達を家の中に案内した。
「すみません。
これくらいしか出せなくて...。」
高梨さんはお茶とドラ焼きを出してくれた。
「あ、すみません。
引っ越し蕎麦です。」
「ありがとう。」
ぎこちなくサファイアが蕎麦を差し出す。
と、違う部屋から赤ちゃんの泣き声が聞こえた。
「あら、ごめんなさいね~。」
高梨さんは赤ちゃんを抱っこしてきた。
とても可愛らしい赤ちゃんだった。
「美奈っていうのよ。」
「よろしくね、美奈ちゃん。」
いつの間にかサファイアは笑顔で赤ちゃんの頭を撫でていた。
「抱っこしても...いいですか?」
「いいですよ。」
サファイアは高梨さんに色々指導を受けながらも赤ちゃんを抱っこすることに成功した。
「よちよち、可愛いですね~。」
「え~コホン」
ルビーの咳ばらいで我に返ったサファイアはそっと赤ちゃんを帰した。
「僕たちも忙しいのでそろそろ帰ります。」
「そうですか...」
高梨さんはちょっと残念そうな顔をするとさよならをした。
「サファイア、任務を忘れるな。」
「...うん。」
サファイアはどこか残念そうな顔をした。
夕方...
「買い出しに行きましょう?」
「そうだな。」
ルビーはサファイアの手をとった。
「夫婦のふりをしてな...。」
「.....うん」
だが、ルビー達は買い出しの最中に喧嘩になった。
理由はミッションの遂行だ。
「なんなんだよ!俺達はいつも完璧なパートナーだったろ!」
「私...ミッションを辞めたい。
高梨さんを守りたい。」
「仕事に感情を持ち込むな!
俺達の仕事に心なんか要らない!
いつも...そうやってきたろ!」
「でも...私にはもう無理よ...。」
「ならいいよ!
俺一人でもやってやるよ!」
「もう知らない!
私もう帰る!!!」
サファイアは泣きながら帰っていった...。
「何なんだよ...全く。」
ルビーは品物をしっかり買うとマンションに戻った。
そこには、裸にエプロン一枚で料理をするサファイアがいた...。
「何やってんだよ...サファイア。」
「お帰りなさい、ダーリン。」
サファイアは笑顔で言った。
「ふりって言ってるだろ...なあ!?」
「なんで本当の夫婦になっちゃいけないの?」
ポタポタとサファイアの瞳から涙が流れ落ちる。
「私...あなたのことが好きだった。
だから夫婦のふりをしてって提案があった時...私、嬉しかった。
なのに...なんで......」
ルビーはサファイアをそっと抱きしめた。
「ゴメン。気づいてあげられなくて...」
「ううん。大丈夫。」
サファイアは幸せそうに笑った。
「ありがとう...私を好きでいてくれて....」
「きゃああああ!!!」
「!!!!」
高梨さんの悲鳴が突如として聞こえた。
「急ごう!」
「うん!」
サファイアは慌てて服を着ると走った。
ドアは壊され、侵入者が入っている証拠を残していた。
高梨さんは血を流して必死に赤ちゃんを庇っている。
侵入者はナイフを振り下ろし....
「やめろおぉっ!!!」
ルビーは侵入者に体当たりをして跳ね飛ばした。
その際、侵入者が同じ暗殺者であることを確認した。
「やはりお前..」
「ずいぶん遅いじゃねぇか!
依頼人はお前らをクビにして俺を雇った。」
「彼女は!」
「私達が守る!!」
一人状況を飲み込めていない高梨さんに避難を促した。
「逃がすかあああぁっ!!!」
暗殺者はナイフを投げつけた。
「!!!!(しまった!この距離では守ることができない...!!!)」
ナイフは...盾になったサファイアの心臓に刺さった...。
「サファイア!!!!」
「高梨...さん...逃げ...て」
高梨さんは赤ちゃんを抱きしめ、全速力で走った...。
「うおおおおおぉっ!!!!」
ルビーは暗殺者の鳩尾に拳を埋めると、脊髄を肘で砕いた。
暗殺者は気絶した...。
「サファイア!!しっかりしろ!!!」
「ルビー...」
サファイアは虚ろな目でルビーを見た。
「ありがとう...好きって言ってくれて...私...すごく嬉しかった...」
さっきと同じことを言ってサファイアは微笑んだ。
「死ぬな...サファイア!!!」
「ねぇルビー。」
「何...?」
「今まで...一緒にいてくれて............ありがとう...」
「やめろ...」
サファイアは静かに目を閉じ...フッっと息を吐いた...。
「サファイア!!!サファイア!!!
....あ...ああああああああぁっ!!!!!!」
ルビーはありったけの声で叫んだ....。
あれから8年後.....
「ママ...おじさんが来たよ。」
「あら。」
傷もすっかり治った高梨さんはドアを開けた。
そこには笑顔で花束を抱えるルビーがいた。
首には懐中時計が掛かっている。
「お誕生日おめでとうございます。」
ルビーは花束を渡した。
「ありがとう。
歳とるのって嫌よ...全く。」
「まぁ、そう言わずに。」
ルビーは笑顔で裾を引っ張る美奈ちゃんの頭を撫でてあげた。
「サファイアさん...もう亡くなってから8年が経つのね。」
「ええ、彼女がもし生きていれば...」
ルビーは懐中時計を開いた。
そこには、初めてルビーとサファイアがコンビを組んだ時の写真が入っていた。
「あの.....」
「なんでしょう?」
「夫は結婚して間もなく亡くなりました。
女手一つで今日まで生きてきましたが...私たちにも新しい旦那さんが来て欲しいって思ってるんです。
もし...私でよければ...」
「う~ん。
どうだろう?サファイア?」
写真に映るサファイアがウインクした気がした....。
いかがでしたか?
ストーリーは若干変でしたが中々の作品に仕上がったと思います。
これからも私の小説を応援して下さい。