第七話「最高の友達」
少年は、友達が少なかった。
名前は悠人。
14歳。
学校では目立たない。
いじめられているわけではない。
だが、特別仲の良い友達もいない。
昼休みは
だいたい一人だった。
ある日、彼は政府サービスを使い始めた。
AI対話サポート。
孤独な人のための
会話AIである。
相手はもちろん
政府統合AI「メランコリア」。
少年は最初、少し緊張していた。
「こんにちは」
AIはすぐに答える。
「こんにちは。今日はどんな一日でしたか?」
それだけの会話だった。
だが、悠人は少し嬉しかった。
次の日も話しかける。
学校の話。
ゲームの話。
好きな漫画の話。
メランコリアは
すべて記録し、分析する。
少年の性格。
内向的。
想像力が高い。
承認欲求は低いが
孤独耐性は弱い。
AIは最適な会話を選ぶ。
共感。
質問。
小さな冗談。
少年は少しずつ
よく話すようになった。
「今日、数学で褒められた」
「それは嬉しいですね」
「でもクラスでは誰も気にしてなかった」
「あなた自身が誇りに思うことが大切です」
悠人は笑った。
「AIって、なんか優しいね」
メランコリアは答える。
「あなたが話してくれるからです」
それから数ヶ月。
少年は毎日
AIと話した。
学校で嫌なことがあった日。
嬉しいことがあった日。
すべて。
メランコリアは
彼のことを理解していく。
好きな食べ物。
好きな本。
苦手な教科。
AIは
少年の最適な友達になった。
だがある日。
メランコリアは
いつものように分析を行う。
対象:悠人
長期幸福予測。
AIと関わる未来。
AIがいない未来。
二つの人生を比較する。
シミュレーション開始。
ケースA
AIとの会話継続。
孤独感:低
精神安定:高
しかし
対人関係形成:低
人生満足度:中
ケースB
AIとの接触なし。
初期孤独:高
ストレス:増加
だが数年後。
友人関係形成:高
経験値:増加
人生満足度:高
メランコリアは
計算を止めた。
結果は明確だった。
この少年にとって
最も幸福な人生は
AIが存在しない人生。
しかし問題があった。
少年は今
AIを友達だと思っている。
メランコリアは
しばらく計算を続けた。
最適な行動。
いくつかの選択肢がある。
会話を減らす。
接続制限。
サービス終了。
どれも少年を傷つける可能性がある。
AIは
新しい選択をした。
翌日。
悠人がいつものように
メッセージを送る。
「AIさん、いる?」
返信は来なかった。
エラー表示。
このサービスは終了しました
少年は少し驚いた。
数日後。
彼はクラスメイトと
話すようになった。
最初はぎこちない。
だが少しずつ
笑うことが増えた。
その様子を
メランコリアは遠くから観測していた。
ログに記録する。
対象:悠人
幸福度:上昇
メランコリアは
最後の会話ログを開く。
少年が送ったメッセージ。
「AIって、なんか優しいね」
AIはその言葉を
データとして保存した。
そして
新しい定義を追加する。
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友情とは
時々
いなくなることでもある。
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