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第5話『逆調教!?ドMゴールキーパーの逆襲』

「本日は、近隣の名門・私立三ヶ丘学院との練習試合を行います!」


顧問の声が響くなか、女子サッカー部の面々はざわついていた。

三ヶ丘学院は関東ベスト8の実力校。うちみたいな出来立てチームが相手にされるのは奇跡だ。


「気を引き締めていこう。今日は実力の差を思い知るかもしれないけど、それも経験だ」


キャプテンの言葉に、カリンはニヤリと笑った。


「私にとっては、格下であろうと格上であろうと“支配する対象”にすぎないわ」



ピッチに立つカリンの目に、相手GKが映る。

身長180cmはあろうかという長身の美少女──だが、なぜかユニフォームの襟を少し引っ張って、首を赤らめていた。


「へへ……今日こそ、噂の“あの人”に蹴られる……ッ!」


「……は?」



試合開始。


前半10分、カリンがロングシュートを放つ!


「喰らいなさい、球体豚野郎の一撃ッ!!」


ズドン!


──が、ゴールポストすれすれで弾かれる!


「ふひっ……いい、いいッ! その罵り、もっとちょうだいぃぃぃ!!」


「……こいつ、悦んでるッ!?」


ゴール裏から、相手GKがとろけたような表情で叫んでいた。


「もっと強く!もっと乱暴にボールを蹴ってぇぇ!

お姉様の命令なら、私はいつでも喜んで受け止めますぅぅ!」


女子サッカー部全員が、固まった。


「ドMすぎてボールも引いてるわよ……」

「なにこの人……」

「てか三ヶ丘って、強豪だよね!?」


相手の監督が頭を抱えていた。



その後もシュートはことごとくセーブされる。


強烈なボールをぶつけても、

「ふふっ、まだまだぁッ!もっと罵ってぇぇ!!」

と全身で受け止めにくる始末。


「くっ……“支配”できない……このゴールだけは……ッ!」


歯を食いしばるカリン。

その姿を見て、ヒナが囁いた。


「カリン。あの人、君の言葉に“支配されてる”んじゃなくて“依存”してるんだよ」


「……!」


「支配とは、状況をコントロールすること。なら、あの人の性癖も含めて──制御しなきゃ」


カリンは目を閉じ、一つ深呼吸をした。


「……わかった。命令の出し方を変えるわ」



後半。

カリンは叫ばない。ただ、淡々とボールを回す。


「ミオ、ここ」

「ヒナ、落として」


静かで、正確な指示。まるで舞台の演出家のように──すべてを掌の上で動かしていく。


敵GK「……あれ?なんで?罵ってくれないの?」


戸惑うGK。混乱したままの隙をついて──

ヒナ→カリン→ミオ! 最後のパスが走る!


ミオのシュート!

「決めたァァァァァ!!」


ようやくネットが揺れた。


「……勝った……」


「いや、カリン。顔……なんかめっちゃ悔しそう」


「支配……はした。だが、なんというか……満たされない」


「わかる……」


部員たちはうなずいた。

今日の試合は、確かに勝った。戦術的にも、連携的にも、収穫が多い。


──だが、あのドMゴールキーパーの満足そうな顔を見て、なぜか“敗北感”だけが残った。



試合後。


相手GKがカリンに近づく。


「次の試合も、お願いします……今度はもっと、優しく叱って♡」


「……この女、真性だわ」


ボールより重いため息が、グラウンドに落ちた。


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