28 3年後のある日4
ヴィクトルは言葉を続けた。
「……魔法の制限により、魔法を失った民は、生活すらままならなくなったんだ。水を出すことも、火を灯すことも、農作業も……。魔法なしでは、何一つまともにできなかった。
日々を生き抜くだけで手一杯になった彼らは、次第に“代わりに働いてくれる存在”を求めるようになった。」
窓の外では風に揺れる木の葉が、微かな音を立てている。その静けさが、ヴィクトルの言葉をいっそう重く響かせていた。
「……そして、当時は紛争により家や家族を失い、路頭に迷っている人々が数多くいた。居場所をなくし、行き場をなくし、生きる術すら失った人々が、“代わりに働く存在”として捕らえられた……
これこそが……奴隷制度の始まりなんだ。」
フィオナは俯き、膝の上で拳をぎゅっと握りしめていた。彼女にとっては、歴史の説明ではなく、まさに自分の身に突き刺さる現実そのものだったからだ。
ヴィクトルはそんなフィオナの様子を横目に見ると、彼女の膝の上の拳を優しく握り、続けて語った。
「各国の王や賢者たちは、もちろんそのようなことは望んでいなかった。彼らは奴隷を救済する方法を模索し、多くの策を講じた。奴隷商会の設立なんかもその1つらしい。
けど、どの策も大した成果は挙げられなかった。結局、主人と奴隷には絶対服従の関係であるという価値観が当たり前となって……今に至るんだ。」
語り終えたヴィクトルは、しばし黙り込んだ。窓から差し込む陽光が、机の上に柔らかい光を落としている。
ヨハンは腕を組み、深く思案に沈んでいた。やがて、彼は顔を上げ、真剣な眼差しをヴィクトルに向ける。
「……全てをお話しいただき、ありがとうございます。
この世界にそのような歴史があったとは……全く、とてつもない驚きでございました。」
彼はそこで一度言葉を切り、視線を鋭くした。
「……全てを聞いた上で、お尋ねしたいのです。ヴィクトル様は、世界に深く根付いたこの奴隷制度をどのように撤廃されるおつもりなのでしょうか。フィオナさんにされたような魔法の制限解除を全人類に施す……そのようなお考えでしょうか。」
フィオナは息を呑み、ヴィクトルに視線を向けた。彼女もまた、心の奥で同じ疑問を抱いていたのだろう。
ヨハンは続けた。
「確かに、その方法であれば奴隷は必要なくなり、制度撤廃へ大きく前進するかもしれません。
しかし……しばらく時間が経てば、また以前のように争いの絶えない世界に戻ってしまうのではないでしょうか。強力な魔法を扱う者が力を誇示し、国同士がぶつかり合い……同じ過ちを繰り返すのでは、と。」
ヴィクトルは答えた。
「そうだね。もちろん、それは私も思っている。
……じゃあ、いよいよ話そう。私が奴隷制度を撤廃するために、どのような道を選ぶつもりなのか。これから何を成そうとしているのかーーすべて話すよ。」
その声音には、確固たる決意が宿っていた。部屋の空気が一瞬にして張り詰め、2人の鼓動が高鳴るのを互いに感じ取れるほどだった。
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