26 3年後のある日2
ヴィクトルを先頭に、3人はゆっくりと地下へと続く階段を降りていった。
しばらくすると、前方に淡い光が差し込んでいることにヨハンは気づいた。
(地下なのに、光……? 一体何があるというのだ……?)
胸の奥でざわりと不安が広がる。それは恐怖ではなく、未知を前にした時に覚えるぞくりとした感覚だった。
やがて3人の足は光に包まれ、視界が一気に開ける。
階段を降りきった瞬間、ヨハンは息を呑んだ。
「な……なんですか、これは!」
そこには広大な町が広がっていた。天井からは昼間の空のような光が差し込んでいる。石畳の道が縦横に走り、家々の窓からは明かりがもれていた。人の気配こそなかったが、それでも町は確かに「生きている」と思わせる存在感を放っていた。
フィオナは口元を押さえながら笑った。その笑顔はどこか得意げでもあり、ヨハンはますます混乱する。
ヴィクトルは告げた。
「ここは、私とフィオナで作った町さ。」
「ちょ、ちょっと待ってください……地下に……町を……作った??」
ヴィクトルは静かにうなずいた。
「そう。さまざまな魔法を組み合わせてね。詳しい説明はあとでするよ。とりあえず、ついてきて。」
ヨハンは絶句したまま、ただヴィクトルの背中を追うしかなかった。頭の中は疑問でいっぱいだった。
(町を……作った? いや、そんな馬鹿な……。ヴィクトル様はいったい……)
3人は広場を抜け、町の中心へと歩いていく。周囲の建物はどれも精巧に作られており、窓枠や扉には繊細な装飾が施されていた。やがて彼らは、一際大きな館の前にたどり着いた。二階建ての堂々たる建物は、まるで貴族の邸宅を思わせた。
「ここが私たちの拠点だ。」
ヴィクトルは扉を開き、2人を中へと導いた。館の内部は広々としており、磨き上げられた床に足音が反響する。豪奢なシャンデリアが天井から吊り下げられ、光がきらめいていた。
奥へ進むと、重厚な扉の前でヴィクトルが立ち止まった。
「この部屋だ。」
扉を開くと、そこは会議室のような部屋だった。長い机と椅子が整然と並び、まるで誰かを迎える準備が整っているかのようだった。
そして、その中にーー
「……えっ?」
ヨハンの視線が釘付けになった。
そこには、もう1人のヴィクトルと、もう1人のフィオナが座っていたのだ。
「お、お2人が……2人!?」
ヨハンは仰天して叫んだ。頭が真っ白になり、声も裏返る。
机に座っていたヴィクトルは笑いを浮かべた。
「はは、驚きすぎて言葉になってないよ、ヨハン。」
続けて、隣のフィオナが嬉しそうに言った。
「ヴィクトル様、大成功ですね!」
本物のヴィクトルは軽く頷き、淡々と告げる。
「大成功だね、フィオナ。
……ヨハン、ここまで君を連れてきた私とフィオナは、私が土魔法で作った分身だったんだよ。」
「ぶ、分身……? い、今まで一緒に歩いていたのが……」
ヨハンは目を見開いたまま固まった。信じがたい真実を前に、頭が追いつかない。
ヴィクトルは苦笑しながら手を振る。
「そういうこと。まあ、見てもらったほうが早いね。」
そう言うと、分身のヴィクトルとフィオナが一歩前に出た。その体は次第にひび割れ、バラバラと音を立てながら土の塊へと崩れていく。やがて残ったのは、ただの瓦礫の山だった。
「……っ!」
ヨハンは思わず後ずさる。先ほどまで一緒に歩いていた人が目の前で土に還る光景に大きな衝撃を受けた。
ヴィクトルは説明を続ける。
「解除するとその場で土に戻っちゃうから、屋内でやると土が溢れてしまうんだよね。まあ、これはあとで片付けておくよ。」
その言葉に、ヨハンは力なく返すしかなかった。
「は、はあ……もう、何が何だか……」
呆然と立ち尽くすヨハン。その横で、フィオナはくすくすと笑いをこらえていた。
ヴィクトルは椅子を引き、静かに促した。
「……じゃあ、今から説明を始めようと思う。
……とりあえず、座って。ヨハン。」
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