24 森での日々
森の暮らしは、いつの間にか規則的なリズムを帯びていった。
午前。ヴィクトルは森の奥まった空き地で、1人黙々と魔法の鍛錬をする。
まずは魔法の精度向上の練習。木魔法で的を作り、水魔法で狙った的に水鉄砲を命中させる。初めのうちは狙いが逸れることも多く、水流が左右に流れたり、威力が弱くて途中で弾けたりもした。しかし、日を重ねるうちに要領を掴んでいき、的の中心を寸分違わず撃ち抜けるようになっていった。その他にも、木魔法や土魔法を用いた複雑な造形物の生成も日々行った。ある日は花弁の枚数まで数えられる小さな薔薇、またある日は両翼を広げた大きな鳥など、試行錯誤を繰り返しながら、魔法の精度を確実に上げていった。
次は、新しい魔法の開発である。前世の記憶を辿りながら、地球の人類が小説や映画などで表現してきた魔法が、この世界で実現できないか検証する。飛行、転移、探知、分身、変身、高度な治癒など、習得したい魔法は山ほどあった。ヴィクトルは、まるで研究者のように熱中しながら、新しい魔法の開発に取り掛かっていった。
最後は、魔力量の増強である。体を鍛える際、限界まで追い込むことで体力や筋力を鍛えるように、魔力も限界まで使い切ることで魔力量を底上げできるだろうと考え、ヴィクトルは毎日、午前中の間に全ての魔力を使い切るようにしていた。
ヴィクトルが魔法の鍛錬を行っている間、フィオナは森の家の中でヨハンに学んでいた。読み書きや敬語、経済の初歩、基礎法学、算術といった、生きるための土台となる知識だ。
ヨハンの説明は分かりやすく、フィオナはどんどん吸収していった。
午後。今度はヴィクトルがフィオナの師となる。昼食を取り終えると、ヴィクトルとフィオナは森の家の近くで、魔法の練習を始める。
ヴィクトルはまずイメージの作り方を示す。対象の形や密度、流れる方向を頭の中で鮮明に描かせ、そのうえで魔力の流し方を細かく指導する。
「手をかざして、そのものの“在り方”を感じるんだ。」
フィオナは目を閉じ、唇を噛みしめて集中する。初めのうちは、水の小滴を作るだけで精一杯だったが、日を増すごとにできることが増え、確実に成長していった。
一方のヨハンは、午後の大半を森の中の家で書類仕事にあてた。屋敷から持ち運んだ領地の帳簿、支払いの明細、契約書類などを作成・整理する。
羽ペンを走らせながら、時折り窓を開け、外で2人が練習する様子をそっと窺う。彼の視線は常に2人の“安全”を意識していた。
日々は地味だが着実に進んでいった。
ヴィクトルとフィオナは日を重ねるごとにどんどん成長した。
(今はこうして積み重ねるしかない。急がば回れだ。)
ヴィクトルはそう心に刻み、森での鍛錬の日々を大切に過ごした。
* * *
そして、あっという間に3年の歳月が流れていった。
0話からスタートしましたので、今回で計25話投稿できました。
ここまでお読みくださった皆さま、誠にありがとうございます。
お楽しみいただけていますでしょうか。
毎日投稿は難しいですが、まだまだ書きたいと思うことがたくさんあり、物語は始まったばかりですので、今後とも何卒よろしくお願いいたします。
また、もしよろしければご評価等いただけますと、幸いに思います。
引き続き、よろしくお願いいたします。




