23 フィオナ7
家の完成を見届けたヨハンは、ぐるりと外観を見回し、玄関の光魔法の輝きや木材の質感まで確かめるように手で触れた。
「さすが、ヴィクトル様……これなら森の中でも十分暮らせると思います。では、あとは……」
その続きを、ヴィクトルが引き取る。
「家と水はクリアしたから……あとは衣服と食料かな。とりあえずは、今着てる服と、昨日寝た寝袋をあげるから、それでしばらく過ごしてほしい。数日以内に買ってくるよ。」
フィオナは、ぱちぱちと瞬きをして、寝袋という単語に小さく首をかしげた。昨日の夜のことを思い出しているらしい。
「それくらい、私にやらせてください、ヴィクトル様。」
ヨハンがすっと前に出て、申し出る。
「そ、そう? なら……お願いしようかな。」
ヴィクトルは軽く肩をすくめ、素直に任せることにした。
「これでとりあえず住めるようにはなるけど……夜はどうしても1人になってしまう。それは……ごめんね。」
その言葉に、フィオナはぱっと笑みを浮かべた。
「フィオナは、もう1人じゃないよ。ヴィクトル様も、ヨハン様もいる! だから、夜くらい1人でも大丈夫!」
ヴィクトルは微笑んだ。
「そうだね。じゃあ、朝から夕方までは、毎日一緒にいよう。」
「うん!」
フィオナは元気よく頷く。その動きに、頬のほつれた髪がふわりと揺れた。
* * *
帰り際、家が外部から見えないように、また3人以外は入れないように、家の周りに結界を貼って、ヴィクトルとヨハンは森を後にした。
夕暮れが迫る中、2人は森を出て屋敷へと戻る道を歩いていた。
オレンジ色の光が、森の出口に続く道をやわらかく照らす。
ヨハンがふと口を開いた。
「フィオナさんも、少しずつ心を開いてきてくれたようで嬉しいですね。」
ヴィクトルは頷きながら、歩調をゆるめる。
「そうだね。昨日の彼女からは想像できないくらい、表情が豊かになってきた。」
「……ところで、ヴィクトル様。」
ヨハンが少し声を低くして、横目で彼を見た。
「ヴィクトル様は、なぜだか子どもとの会話に慣れているように感じますね。子どもに安心感や信頼感を持ってもらえるように、優しく接する姿が、とても6歳とは思えませんでした。」
「そ、そう? そんなことないと思うけど。」
ヴィクトルはさらりと流すように答えた。
(……ぎくっ。自然と……教員の時に身につけた、子どもたちとの会話の仕方が出てしまっているのかな。ほんと、ヨハンは鋭いな……)
少しだけ視線を逸らし、足元を見つめながら屋敷へ向けて歩を進めた。
お読みいただき、誠にありがとうございます。
明日からまた仕事ですので、更新頻度は落ちてしまうかもしれませんが、引き続きお読みいただけますと幸いです!




