22 フィオナ6
金色の光がふっと消え、森の中に静けさが戻る。
フィオナはぽかんとヴィクトルの顔を見つめていた。体の奥に、さっきまで感じていた温もりがじんわりと残っている。
「この世界で、選ばれた者しか有していないはずの魔力を……元奴隷の孤児が持っているとなったら、大騒ぎになると思う。
だから孤児院には連れて行けない。それに……もしこのことが他領の者や、国王まで知れ渡ったらーー最悪の場合、フィオナの存在は“消されて”しまうかもしれない。
これは、もう……私たちで匿うしかないね!」
「……ヴィクトル様、なんということを……」
ヨハンは額に手を当て、半ば呆れたようにうめいた。そして、諦めたように小さく息を吐く。
「……もう、分かりましたよ。今回もヴィクトル様に従います。」
「ありがとう。そして、毎回すまない、ヨハン。」
「……本当に、思ってますか?」
「も、もちろんだよ!」
ヴィクトルはやや引きつった笑みを浮かべ、手をひらひらさせる。
「それに1つ補足をすると、ずっと秘密にしておくわけではなく、ときが来たら父上と母上にも報告するさ。今はまだ私が6歳だから、きっと両親とも、私の奴隷制度撤廃に向けた策を真剣に聞き入れてはくれない。
だから、こうするしかないんだ……」
その言葉に、ヨハンはじっと彼を見つめる。
「……その約束は必ず守ってくださいよ、ヴィクトル様。
……では、フィオナさんにはこの森で生活してもらうとして、具体的にはどうするおつもりですか?」
ヴィクトルは、にやりと口角を上げた。
「それは、こうするのさ。」
ヴィクトルは目の前に手をかざし、木魔法を発動させる。
瞬間、地面がもぞもぞと動き出し、木の幹がうねりを上げて伸びていく。枝が絡み合い、板のように平らになり、壁や屋根の形を取っていく。
やがて、立派な一軒家が森の中に姿を現す。
「……え……」
フィオナは思わず一歩後ずさった。口がぽかんと開いたまま、言葉が出ない。
ヴィクトルは続けざまに、今度は木魔法と水魔法を発動する。
すると、家の横に丸い木製のタンクが現れ、水が音を立てて満ちていく。
次に、ヴィクトルは家の中へ入った。フィオナとヨハンも半ば呆然としたままついていく。
彼は奥まった一室にある、作りたての木製の便器の前に立ち、光魔法を発動した。
淡い光がふわりと便器の中に吸い込まれていく。
そして玄関口に戻ると、同じように光魔法を施した。
振り返ったヴィクトルは、少し誇らしげに説明を始める。
「これで、よし。家は一旦完成かな。貯水タンクと洗面場は木のホースで繋いであるから、タンクから水が供給されるようになってる。それから、トイレには光の浄化魔法をかけたから、用を足したら、そのまま浄化され消える。あと、玄関にも光魔法を施したから、出入りのときに体が清潔になるよ。」
フィオナは、玄関のあたりをきょろきょろと見回す。
(魔法って……こんなふうに使えるんだ……)
「本当はお風呂も用意しようかと思ったんだけど、それはフィオナの意見を聞きながら、少しずつリフォームしていこうと思う。なんてったって、ここはフィオナのお家だからね。」
その言葉に、フィオナの胸の奥で、何か温かいものが広がった。
自分の家ーーそんなものを持つ日が来るなんて、思ったこともなかった。
「……ありがとうございます……」
声は小さかったが、確かな感情がこもっていた。
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