21 フィオナ5
ヴィクトルは、じっと少女の瞳を見つめた。
「本当にいいの? 孤児院の方が、絶対穏やかに暮らせると思う。それにーー」
言い終わる前に、少女は食い気味に叫んだ。
「ヴィクトル様がいい!」
その声は震えていたが、迷いはまるでなかった。
ヴィクトルは、そんな彼女の必死さに、ゆっくりと頷いた。
「分かった。じゃあ改めてーーこれからよろしく、フィオナ。」
「……はい……!」
その返事はかすれていたが、確かに嬉しさが混じっていた。
「お待ちください、ヴィクトル様。」
ヨハンが、割って入った。表情は硬い。
「どうなるかと話の行末を見守っておりましたが……屋敷のすぐ側にあるこの森に、この子を住まわせる? そんなこと、流石にできる訳がありません。」
ヴィクトルは肩をすくめ、落ち着いた声で返す。
「安心して、ヨハン。この森は私が父上から譲り受けたものだから、私の許可なしには誰も入れない。それに、夜は危なくないように、ちゃんと結界を貼るさ。」
その言葉にフィオナが小首をかしげる。
「……けっかい……?」
不安と興味が入り混じった視線を向けてきたが、ヴィクトルは軽く微笑むだけで説明は後回しにした。
ヨハンは、深いため息をつく。
「結界ですか……確かにヴィクトル様であれば、できるのでしょう。しかし、これはバレるバレないの話ではないと思います。この子の処遇は、レオンハルト様にご相談の上、決定すべきだと存じます。」
その声には、忠義と現実的な判断がにじんでいた。
「でも、相談って言ったって……父上に何をどう相談しても、フィオナを孤児院に連れて行く未来しか私には見えない。ヨハンは、私たちとフィオナが一緒にいられるよう説得できる自信はある?」
ヨハンは視線を落とした。
「……自信はありませんが……やってみるしかないかと。」
その声は、正直な迷いを含んでいる。
ヴィクトルはすかさず畳みかける。
「やってみなくても、そもそも報告しなければバレないよ?」
挑発するようなその一言に、ヨハンは苦々しげに眉をひそめた。
「ですが……」
口ごもるヨハンを見て、ヴィクトルは「ふっ」と小さく笑い、少し真面目な声に変える。
「分かった、こうしよう。どっちみち後でやるつもりだったし。」
そう言って、ヴィクトルは右手をフィオナにそっとかざす。
その手から、やわらかな金色の光が放たれた。
光は水のように流れ出し、フィオナの全身を包み込む。
「……あったかい……」
ヨハンは驚いた。
「こ、これは……魔力の目覚め……!」
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