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19 奴隷の少女3

 町が遠ざかり見えなくなると、2人は行きと同じように、切り株をバネのように使って跳びながら急いで帰っていった。


 その間、少女は起きることなくヨハンの背でぐっすり眠っていた。


 やがて魔法の練習場として使っている、いつもの森にたどり着いた。


 もう真夜中に差しかかっており、森の中は真っ暗だった。


 ヴィクトルは手を掲げ、静かに魔力を巡らせる。


 光魔法が発動し、ヴィクトルの掌から淡い光がこぼれた。白く、やわらかな光があたりを照らし、木々の影を浮かび上がらせる。


「ありがとうございます、ヴィクトル様。」


「足元、気をつけてね。」


 しばらくして、3人は森の中の開けた場所にたどり着いた。少女はいまだに眠っている。ヨハンは川辺へ歩み寄り、タオルを水に浸してしぼると、丁寧に少女の顔や手足を拭いた。


「よく寝ておられるな……本当に、弱り切っていたのだろう。」


 目を覚ます気配もなく、少女はただ穏やかな寝息をたてていた。ヴィクトルは焚き火の支度をしながら、ヨハンに言った。


「もう遅いし、今日はここに泊まろう。もともとそのつもりだったしね。」


「はい。ヴィクトル様の寝袋はそちらに。」


 2人は手早く準備を進める。寝袋は2つしかない。ひとつには少女を寝かせ、ヨハンは木の幹にもたれた体勢で休むことにした。ヴィクトルは寝袋の中に入り、夜空を仰いだ。


(この子のことも、いつか父上と母上に話さないとな。でも、まずは……)


 そんなことを考えながら、ヴィクトルはゆっくりと瞼を閉じた。


 * * *


 朝。鳥のさえずりとともに、森に柔らかな光が差し込む。


「ん……」


「ヴィクトル様、お目覚めで?」


 ヴィクトルが目をこすると、木陰で控えていたヨハンは、目を覚ました主人に小さく頭を下げる。


「……少女は?」


「早く起きたので、朝食をあげて、川で水浴びをしてくるよう伝えました。すぐ近くの静かな川ですので、危険はないかと。」


「わかった。ありがとう。」


 朝食や朝の身支度を済ましているうちに、少女が川辺から戻ってきた。まだ髪が濡れている。身体にはヴィクトルたちが持ってきたタオルを巻いていた。目を伏せたまま、恐る恐る近づいてくる様子が痛々しい。


「この服、あげるよ。男の服だけど、ないよりはマシだ。」


 ヴィクトルは自分の持ってきた替えの衣服を手渡した。少女は一瞬ためらったものの、小さくうなずき、タオルを持ったまま木陰へと消えた。


 着替え終えた少女が戻ってくる。


「ちょっとこっちにおいで。」


 ヴィクトルは手をかざした。風魔法で、少女の濡れた髪を乾かしていく。


 少女は驚いたように目を見開いたが、すぐに目を伏せてしまった。


 髪を乾かし終わった後、ヴィクトルは言った。


「さあ、やっといろいろ話せるね。」


 少女はまだ怖がっている様子だった。

お読みいただき、誠にありがとうございます。


今週は土日だけでなく、平日(水曜日)に一度投稿することができましたので、来週もそのペースを目指したいと思います!

(無理だったら申し訳ございません……)

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