12 誕生日プレゼント
お読みいただき、誠にありがとうありがとうございます。
話のストック数と平日の仕事の関係上、毎日投稿が難しくなってしまいましたが、この3連休は毎日投稿できると思います!
お読みいただけますと幸いです!
「外で、魔法の練習をさせていただけないでしょうか?」
朝食の席でそう口にしたヴィクトルに、父と母の視線が重なった。ナイフを持っていたレオンハルトは、手を止めたまま少し考え込むような表情を浮かべる。クラリッサもまた、スープに口をつけかけていたが、その動きを止めて息子を見つめた。
「どうして外での練習を望むの?」
最初に口を開いたのは母だった。声にはとがったところはなく、ただ心配と興味が入り混じったような柔らかさがあった。
ヴィクトルは心の中で静かに身構える。誰にも見られずに高度な木魔法と他属性魔法の練習がしたいというのが本当の理由。
しかし、それはとても話せるものではない。だから、あらかじめ用意していた“もっともらしい答え”を口にする。
「最近、屋敷の中で魔法を使っていると、どうしても狭さを感じてしまって……。それに、気も散ってしまうんです。人の気配や物音とか……
もっと自然の中で、静かな環境で集中して練習してみたいと思ったんです。」
「ふむ……」
レオンハルトがうなずいた。
「ならば、ちょうどよい。お前ももうすぐ6歳になるのだ。誕生日の贈り物として、魔法の練習場として使える土地を1つ授けよう。」
(……よし、作戦通りだ!)
心の中で小さくガッツポーズを取る。ヴィクトルは、誕生日という節目を利用すれば、交渉が有利になると踏んでいた。父が感情で動く人間ではないことは分かっているが、贈り物という名目であれば、より大胆な要求も通りやすい。
「では……あの土地をいただけないでしょうか?」
ヴィクトルは席を立ち、ダイニングの大窓から見える、近くの森を指差した。
それはライヒベルク領の一角にある手つかずの森。かつては狩猟場だったらしいが、今では使われておらず、訪れる者もいない森。
「あの森、か……」
レオンハルトは眉を寄せた。
「練習場としてなら、もっと開けた土地の方が良いのではないか? 木が多すぎると視界が悪く、動きの確認も難しくなるぞ。それに、狭さを感じない場所がよいのだろう?」
「……いえ。私の木魔法の技術では、すでに木が生えている場所の方が魔法を試しやすいのです。
……それに、自然の中の方が、木魔法の本質に近づける気がするんです。」
これも用意しておいた返答だった。
レオンハルトはふっと笑った。
「そうだな。お前が年齢の割には成長が早すぎるので、つい勘違いをして中級者以上の扱いをしてしまったよ。確かに初級レベルであれば、すでに木がたくさん生えている森の中の方が練習になるだろう。
……よかろう、誕生日にあの森をヴィクトルに授けるとしよう。」
「ありがとうございます、父上!」
(……ごめんなさい、父上。)
心の中でそっと謝る。実際にはもう中級どころか、上級に片足をかけているのだ。そして、他属性魔法さえも……
* * *
ヴィクトルは6歳の誕生日を迎えた。
家族や使用人たちが心を込めて用意した祝いの席は、温かい空気に満ちていた。
そして、次の日。
レオンハルトは書斎で小さな地図を広げて言った。
「昨日皆に宣言した通り、今日からあの森は、お前専用の魔法修練場とする。使用人にも手を出さぬよう言っておいた。好きに使うとよい。」
「父上、ありがとうございます!」
ヴィクトルは改めて礼を言った。
(これで……思う存分、練習できる!)
全身に喜びが満ちる。自然と笑みがこぼれるのを、隠しようがなかった。
「ただし」
レオンハルトが低く言った。
「6歳の子どもが単独で森に向かってよいなどとは、さすがに思っておらん。」
ヴィクトルの笑顔が固まった。
「……え?」
「今後、森に行く際は、ヨハンを必ず同行させなさい。お前のお世話係なのだからな。」
その名を聞いた瞬間、ヴィクトルの脳裏に青年の顔が浮かんだ。誰よりも忠実で、真面目で、責任感のある、あのヨハンである。
(……しくじった。屋敷の比較的近くなら付き添いなしで大丈夫だと思ったのに……)
だが、ここで下手に反論すれば、森の自由な使用そのものが取りやめになる可能性もある。
「……はい、分かりました。」
渋々ながら、ヴィクトルは了承の言葉を口にした。




