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11 魔法探究の日々

お読みいただき、誠にありがとうございます。


月曜、火曜と投稿できませんでしたが、執筆は続けておりますので、お読みいただけますと嬉しいです!

 ヴィクトルは、父レオンハルトの書斎で渡された数冊の本を、大事に胸に抱えて自室へと戻った。


(ついに始められる……!)


 ベッドの上に座り、まずは丁寧にページをめくる。紙の匂いがかすかに立ちのぼり、そこに詰め込まれた知の重みが指先から伝わってきた。


 木魔法ーー本によれば、それは自然の生命力を操る魔法であり、人と自然との調和を基盤とするのだという。初級がすでに存在する木に対して、形を変えたり枝を生やしたりする程度、中級が何もないところに木を一本生やす、上級はより多くの木を生やす、さらにその上のレベルになると、森を生成することさえできるらしい。


 また本によると、発動に際しては魔力の流れと対象への明確なイメージが重要であるとのことで、詠唱などの手はずを踏まなくてもよいし、杖やポーズなども必要なさそうだった。


(……やっぱりそうなんだな。)


 父やオルドが魔法を発動していた様子からそうであろうとは思っていたが、改めて気恥ずかしい手順を踏まなくても発動できることに安堵した。


 ヴィクトルはさっそく家中を歩き回って、手頃な植木鉢を探し出してきた。小さな観葉植物が1つ植えられた、それは何の変哲もない鉢だったが、今のヴィクトルには十分すぎる。


 書にあった通り、意識を集中し、木の枝の伸びる様子を明確にイメージする。手をかざし、深く呼吸をする。


「……伸びろ。」


 すると、葉の間から新たな枝が、静かに芽吹いた。


「……!」


 ヴィクトルは目を見開き、思わず歓声をあげた。


「やった! 本当に、動いた……! これが、魔法……!」


 胸の中に、子供らしい純粋な喜びがあふれた。そしてその高揚感がピークに達したとき、ヴィクトルはふと、思いついた。


 両の手を合わせ、指を組む。そしてーー


「木遁!」


 叫びとともに、もう一度植木鉢に向けて魔力を流し込む。すると、さきほどと同じように、枝がすくすくと伸びた。


(ふふ……! まるで初代火k……いやなんでもない。)


 ヴィクトルは、はしゃいでいた。


 * * *


 それからの毎日は、ひたすら魔法の訓練に費やされた。


 魔力の完全解放という特異な恩恵を受けた彼は、常人を超えた速度で魔法を習得していった。


 とにかく魔力を出し切るまで毎日訓練し、魔力が尽きたら倒れるように眠る。これを繰り返すうちに、魔力総量そのものも少しずつ上がっていった。


 やがて5歳となったヴィクトルは、何もない空間に1本の木を生やす中級魔法を使えるようになっていた。


(よし、木魔法は中級まで達した。魔力総量も増えているのを感じる。木魔法は上級に挑みつつ、他の属性の習得にも取り掛かるとするか。)


 しかし、父から渡されたのは木魔法の入門書だけ。上級以上の木魔法や他属性魔法に関する記述はもちろんない。


(本来なら得られるはずのない力……周囲に知られるのはマズイよな……)


 仕方なく、木魔法の習得過程を自ら分析し、それを他属性へと応用していく。それは試行錯誤の連続だったが、ヴィクトルは楽しんでいた。


 だが、それらの魔法を他人の目の前で使うわけにはいかない。そのため、上級魔法や他属性の練習は、もっぱら深夜だった。


 使用人たちが眠りにつき、家族も灯を落としたころ、ヴィクトルは自室の窓を開け、夜風を浴びながら、静かに魔法の練習をする。


(着実に、少しずつ、進んでる……)


 訓練は孤独で地道だったが、ヴィクトルにとってはその一瞬一瞬がとてつもなく楽しい瞬間だった。


 * * *


 6歳の誕生日が近づくある日ーー


 その日も、魔法の練習を終えたヴィクトルはベッドに寝そべっていたが、ふと胸の奥に芽生えた感情を抑えきれなくなった。


(……もう、自室だけじゃ足りない。もっと広い場所で、思いきり練習したい。)


 翌朝、食事の席で意を決したように口を開いた。


「父上、母上。お願いがあります。」


 父と母が視線を向ける。


「外で……魔法の練習をさせていただけないでしょうか?」

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