9 この世界の真実3
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オルドは俯いた。
「魔法が使えなくなった民衆は、急激な変化に適応できなかった。水を汲むのも、家を建てるのも、病を癒すのも、これまでは魔法で行っていた。だが彼らはその全てを忘れた。自分たちがどのように生活していたのか、全く思い出せないのだ……。
……もはや日常生活すらままならなかった。自分の力だけで暮らしていくことが困難であると悟った人々は、次第に“代わりに働いてくれる存在”を求めるようになった。
そして都合がよいことに、当時そのような存在が多くいたのだ――紛争で捕虜になった者、家や家族を失った者たちだ。」
ヴィクトルは、歯を食いしばった。
「彼らは“労働力”として売買され、次第にそれが当たり前となっていった。」
オルドが幻影をひと振りすると、ある農村の風景が現れた。痩せた身体で農具を持ち、畑を耕す人々。その傍らには、鞭を持って監視する男がいた。
「これは……」
「魔法が奪われたことで、人々は生活の手段も、知恵も、誇りも失った。そしてその穴を、別の人間を“道具”にすることで埋めたのだ。」
「なんということを……」
「もちろん、3大国の王や賢者たちはそのようなことは望んでいなかった。彼らは奴隷を救済する方法を模索し、多くの策を講じた。奴隷商会もその1つだ。国が奴隷を管理することで、奴隷と主人の関係が行きすぎないような調整しようとしたのだ。
しかし、連れ帰った奴隷を主人がどのように接しているか、全ての奴隷について日々確認するのは無理な話だった。次第に、主人と奴隷には絶対服従の関係であるという価値観が当たり前となり、今の奴隷文化が作られてしまった。
……このような世界になってから、どれほどの時が流れたことか。かつてあった小国も、いつしか近くの大国に吸収され、今の世界が出来上がった。
人類の絶滅を防ぐために選んだ道――それは、確かに人類を救った。それどころか、前文明のときよりも人口を増やすことさえ成し遂げている。しかし、その歪みとして奴隷文化が誕生し、今では奴隷はこの世界の"当たり前"となってしまったのだ……」
静寂が落ちる。ヴィクトルは拳を握りしめていた。
「……これがこの世界の真実だ。このことを知る者は、代々親から聞かされ受け継がれている3大国の王たちと、私、それからお主だけだ。
さて、ヴィクトルよ――お主はこれからどうしたい?」
ヴィクトルは、決意に満ちた目で答えた。
「私は」




