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七煌の戦姫 - Children of the New Century -  作者: shio
第二章 星のお姫様 -The Little Princess-
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 ユニをシートへ誘い、リリアが改めてお茶を用意していく中。


「なにか、不思議な人たちだよね、ヒジリたちって」


 少し緊張しているのか、ちょこんと正座して口を開いたユニにひじりは笑った。


「そう? 初めていわれた」

「こんなふうに言ったら変に思うかも知れないけど……匂いが違う気がする」

「あ、ごめん、なにか匂う?」

「いやっ、そうじゃなくてっ! 土の匂いがしないなぁって!」

「あはは、成程」

「どこからきたの? なんだか都市の人って感じがするけど」

「まあ、そうかな」


 都市は都市でも王都から来て、眼の前にお姫様が居るって伝えたらどんな顔をするかな――なんて考えが過ぎるが、おそらくシャルは嫌がるだろうからそれは言わず。

 というより、視線の隅で「言ったら、ぶちのめすから」とにっこり微笑んでいるシャルの事はわざと無視して。


「それより、どうしてさっき空をずっと見てたの?」

「ぇっ……ぁ、うん」


 ひじりの質問に曖昧に答えると、リリアに勧められたカップを両手で持ち「いただきます」と一口飲んでからユニは微笑んだ。


「おいしい……こんなにおいしいお茶、初めて飲んだ」

「でしょ! お姉ちゃんはお茶を入れるのがすごくうまいんだよっ!」

「うん、ほんとにおいしい」


 嬉しそうに、誇らしそうに話すテリアに微笑み、ユニはもう一度カップに口を付ける。


「初めての味……わたしが知らなかった味」

「知らなかった味?」

「うん……時々思うの。外の世界ってどうなってるのかなって」

「外の世界って、都市とかのこと?」

「うん、都市とかもだけど……」


 続けて質問するテリアに頷き、しばらくカップの中のお茶を見つめて……そして、ユニは顔を上げて空へと瞳を向けた。


「たとえば、空の向こうとかどうなっているのかなって」

「空の向こうって、宇宙のこと?」

「うん、わたしは見たことないから。テリアは行ったことある?」

「あるけど、わたしも二回くらいだよ。他の星には行ったことがないし」

「そうなんだ。宇宙ってどんなところ?」

「真っ黒! でも、星はキラキラしてて綺麗!」

「真っ黒って……まあ、そうだけど」


 テリアらしい答えにひじりは笑い、そして、ユニへと顔を向けた。


「行ってみたい? 空」

「ん、そうだね……行けたら、一度は見てみたいかな」

「だったらっ――むぐ!?」

(ちょっと、どうしてシャルちゃん!?)


 口を押さえられ、瞳でそう抗議してくるテリアにシャルはにこりと微笑み、そして、ひじりに視線を向けた。


(その難儀な性格、どうにかならないの)


 そうも思うのだが、シャルの気持ちも理解できる。七煌杯のことを話せば、シャルのことも話さなければならなくなる。それは簡単な方法だが、それでは意味がなかった。

 憧れを利用するような事はしたくないし、姫の命令にもしたくはない、という気持ちはひじりにも分かる。


「ふぅん、なるほど」


 テリアとシャルに「?」と首を傾げるユニの頭をぽんっと撫で、


「じゃあ、行って見ようか、空」


 今度は驚いて見上げるユニに、ひじりをにこりと微笑んだ。


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