五
まあ、それがお互いに分かっているから――
(ソルテは、こう見えて強情だからなぁ)
ソルテはシャルにこんな態度、子供のような我がままをぶつけている。だからこそ、シャルも強くは言わないのだが――それでも、
「これくらいで疲れるような歳じゃないし、テリアみたいに走り回ってくればいいのに」
「……わたし、走り回るような歳じゃない」
「十歳じゃない」
「……子供じゃない」
「子供だよ」
「…………」
むぅと黙るソルテ。そんな『子供らしい』表情にシャルは思わず微笑んでしまう。
「テリアー! ソルテも一緒に遊びたいってー!」
だから、こうしてついつい意地悪したくなるのだ。
「っ、シャルッ!」
「ほんとにー!」
テリアは全速力で走ってきて、すぐにソルテの目の前まで来るとソルテの手をぎゅっと握った。
「行こっ、ソルテちゃん! 気持ちいいよ!」
「ちょっと待って、テリアッ……シャル、止め……!」
「こっちこっちっ!」
シャルに助けを求めるソルテの声は途中で止められ、そのままテリアに連れて……いや、引きずられていった。
「うんうん、子供はこうでなくちゃね」
「いやぁ、子供は元気だね」
「……あの、大丈夫なんですか?」
満足そうなシャルと、テリアと入れ替わりで戻ってきたひじりの言葉にリリアは不安そうに呟く。
「まあ、いいんじゃない。たまにはソルテも運動しなくちゃ」
「不機嫌度が倍になるだろうけどね」
「それって全然よくないと思いますけど……」
「いいのよ。ソルテは怒ってるくらいが丁度いいの。それよりも、リリア。お茶にしましょう」
遠くに走っていっているテリアとソルテを見つめながら、シャルはにこりと笑ってリリアにお願いした。
「……ぅ~~~~」
「ごめんね、ソルテちゃん……」
ひじりの膝枕で呻いているソルテに、テリアは申し訳なさそうに謝った。
「……テリアは……悪くない……」
そういいながら、ソルテはシャルを睨む。
「うん、悪いのはわたしだし」
悪びれもなく頷くシャルに、ソルテはもっと視線を鋭くして、
「……バカシャル」
そう呟いてから、ひじりの膝枕に顔を埋めた。
「う~~……」
「そんなにしゅんとしなくていいよ、テリア。ソルテは元気だから」
「ほんとに?」
「うん、ほんと」
バカシャル、といえるくらいならソルテは通常営業だ――と思いながらひじりはソルテの頭を撫でてテリアに微笑んだ。シャルの言うとおり、感情を『出さないようにする』ソルテにはこれくらいで丁度いい。
「よかったぁ、ひーちゃんがいうのなら、きっとそうだね」
テリアもにっこりと笑う。その時、膝の上でソルテの頭も少し動いた。ソルテはソルテでテリアのことを気にしていたのだろう。だから、元気が戻って安心したのだろう。
「なーんか、わたしだけが悪者になってない? というより、テリアはヒジリのいうこと聞きすぎ」
「えへへ、だって、わたしはひーちゃんの付き人だもん♪」
テリアはそういって、ひじりの腕に抱きついた。




