第二十一話 無双
〜ここまでのあらすじ〜
店長の想いを受け、皆で協力して店長のラブレター作戦を手伝うことになった。
ついにギルドマスターから呼び出しを受け、店長のことがバレてしまう。
だが、珈琲の有用性が認められ、テツジンとの最強のタッグが爆誕! ☜イマココ
〜登場キャラ紹介〜
・ガッツリン:多部 峰大
主人公。高2。取柄はゲームの腕で負けず嫌い。
・ローカロリー:相須 萌奈香
峰大と同じクラス。ハイスペックな天然女子。
・ソルトカット:多部 翔
峰大の双子の兄。学区1位で全国でも5本の指。
・TKG:瀬瑠 泰夢
中学時代の同級生。中二病は高校からデビュー。
・アイムマヨラー
時代劇風のキャラ作りをしているネトゲ廃人。
・ガシマ店長
喫茶店開業を目指す銀毛の猫。語尾はニャ~。
・マロン
推定メスのタヌキャット。ガシマ店長が命名。
『アイムマヨラー:それは何よりでござった』
「TKGが会いたがってた。あと、店長がマロン画像に感謝してたよ」
俺は、騒動の経緯をアイムマヨラーへ報告していた。
『アイムマヨラー:拙者もマスターアップを果たしたら、店長の珈琲が飲みたいでござる』
「それ死亡フラグだから! 死なない様に頑張って! 戻りを待ってるから」
そう言葉を結んでアイムマヨラーとのプライベートチャットを終える。
ギルドマスターやアイムマヨラーのお陰で早めに関係修復の目途が経ち、心から感謝をしている。
まだギクシャクすることは多いけど、何度だって頭を下げて謝ればいい。
アイムマヨラーが提供してくれたマロン画像のお陰で、店長がやたら協力的なのも有難い話だ。
何故かマヨラーが納める画像だけはマロン認定される。
店長の贔屓や思い込みを疑ったのだが、店長がマロンと判断したのは画像解析ツールでも99.9%一致しているらしい。
「ガッツリン氏、連絡は終わったニャ~? この遠征が終わったら、追加でこれをリクエストするニャ~」
店長がご褒美を所望したので、内装とインテリアを店長のコーディネートに任せることにした。
不安だったのだが、選ぶ内装は全部センスの良いアンティーク調の品。目指す店が老夫婦のスタイルだから、そちらのセンスが良かったのだろう。
ダークブラウンで統一された内装は乗っ取りを狙っているのだろうか。改めて居候だと釘を指しておかなきゃな。
でも、励ましてくれて本当にありがとう、店長。
感謝しつつも、鼻息荒くする店長をジト目で見る。
「……店長もついてくるんだよな?」
「当然ニャ~。オラもマロンさんを探したいんだニャ~」
ギルドマスターが手配してくれたタヌキャット捜索隊が編成され、俺のスキルを見込まれて捜索隊のリーダーに任命された。3パーティーを束ねるのは初めてだが、不思議と不安は無い。
ガシマ店長は足手纏いな気がしなくもないが、本人が探すと言って聞かない。
「じゃあ、出発します。合同パーティーは初めてなので、戦闘では無理をせず、あくまでタヌキャット捜索をメインで考えて下さい。いきましょう!」
「「おう!」」
「お~なんだニャ~!」
◇◆◇◆◇《カカオベルの森》エリア。
「ガッツリンさん! こんなの無理だ逃げよう!」
斥候を務めているプレイヤーが息を切らしながら引き上げてきた。
他パーティーの面々は顔を青くして身構え、肩や口元を震わせている。
既に脱出不可能を示すエフェクトが出ているし、圧倒的なプレッシャーからは逃げられそうにも無かった。
前回辛勝だったヒグマントヒヒに加え、ヒグマンドリル、ヒグマングース、ヒグマンモスと、ヒグマを冠する四大ボスのお出まし。地響きを伴う足音にビビる皆。だが負ける気はしない。
「皆、落ち着け。まずは最も小柄なヒグマングースから各個撃破。店長は安全な場所へ下がって。スキル《お母さんの魔法の調理術》発動!」
ガシマ店長は死亡した後に復活できるかが不明のまま。だから安全第一で下がらせた。俺がリーダーとなってスキルを使うことは、事前に通達してあったが効果は軽視されていたみたいで、現在進行形で皆は驚愕の表情へ塗り替わっていく。
「「なんじゃこりゃーーー!!」」
(はいはい。デスヨネー)
現在のパーティー人数は12人。俺のスキルの恩恵が最大値でかかる。効果を知っているローカロリーたちは落ち着き払っているが、他の魔法使いなどは恍惚とした表情で周囲を見回していた。
「なんだこれ。やべーだろ。詠唱時短、リキャスト時短の効果も十倍、威力も範囲も、射程や命中率も全て……チートすぎねーか?」
「あ、そういうのいいですから。皆さんもスキルの効果確認が出来次第、戦闘に注力して下さい。連携の組み立ては各パーティー毎でお任せしますよ」
10%時間短縮のスキルを所持していれば、MPが続く限り超速連打できる。スタミナ消費系も同様。この設定を考えた開発者は頭のネジがぶっ飛んでいるに違いない。少なくとも現在知る限り最強のチートスキルだ。
そして蹂躙は開始された。
「ワハハハハ! 《エクストリームゲイル》! 《エクストリームゲイル》!!」
「おい! 魔法使いズ! 小学生のマラソンスタートダッシュすんな! リーダーを立ててくれ!」
魔法使い大ハッスル回である。顔も頭も緩みすぎで困ったものだ。
風魔法の上位魔法が連打され、木々は全てなぎ倒され地形は変わり果てた。詠唱時間が30秒近く掛かるのがネックだった大魔法は、ほぼノータイムで連打でき、威力も規模も10倍の天災・大災害と言った感じの極大魔法が荒れ狂う。
もう一方のパーティーも土魔法がどえらいことになって、ヤバめの環境音へ。
岩々がサイズ感の狂ったポップコーンみたく弾け、腹の奥底に響く音の重量感は、現実味がまるで無かった。
「ローカロリー、制圧できるか?」
「うん、任せてガッツリン。いくよ、《チェインフレイムアロー》! 《チェインフリージングアロー》!」
周囲に土窯が壊れて崩れ、燻製を失敗したような匂いが立ち込める。そんな中、ローカロリーは最小のMP消費で最大の効果を生む攻撃を編み込んだ。
従来のチェイン系は4本なのに、補助の増量スキル各種が重なって途切れることなく放たれる。計480本。意味が分からないし、正にバグってる状態。
右手からは炎、左手からは氷結の矢が赤と青のホーミングレーザーの如く飛び出し、視界を埋め尽くす幻想的な光景を成す。
うだる熱波と凍える寒波が層を成し、暑がれば良いのか寒がれば良いのか、こっちの頭までバグりそうだ。
敵に着弾し、火花や霜を撒き散らしたまま次々と炸裂していくが、それ以上にその魔法の温度変化で現れた大気の渦が危険域まで達していて、竜巻の風魔法を使っていないのに大竜巻が発生した。
驚愕の光景にごくりと唾を飲み込む。
アメリカの大型トレーラー車を思わせるサイズ感のヒグマンモスが飛翔した。
TKGが空を見上げて呆然とする。
「我が同胞よ。我の明鏡フォッグドアップ、巨躯の熊と象が天空へミラージュ?」
「そうだな、俺にもそう見える。眼科に通院する必要はないからな」
進化した俺のユニークスキルは魔法スキルとの相性が良く、ぶっ壊れと言っても過言ではない。
スキルテキストに数値の記載があれば全てが効果対象となるため、数値表記が多い魔法スキルはかなり壊れた性能となってしまう。
爆風荒れ狂う中、耳を垂れさせたガシマ店長が俺の元に逃げ込んでくる。
「ガッツリン氏、もう隠れるところが無いんだニャ~」
つい数分前まで森であったそこは、吹きさらしの大地へと劇的ビフォーアフターを遂げている。
「店長は俺から離れないように」
「ニャ~」
戦闘は録画してあるのでギルドマスターも観るはずだ。後で何を言われるのか。
魔法使いたちはMPが切れたのか、ようやく大人しくなった。
ガシマ店長は、まだ怖いのか全身の毛を逆立てて俺にしがみついている。
「他の人たちは加減を知らないのかニャ~?」
「いや、あれは仕方ないよ。突然、全ての品物が9割引きの大バーゲンが始まったようなもんだから、財布の限界まで挑む気持ちは分かるもん」
───用語説明:
【萌奈香の使った魔法の矢の本数について】
従来のチェイン系は4本で、増量スキルで2本追加までが一般的な話。
ガッツリンのユニークスキル下では、増量スキルが十倍で20本追加された24本が十倍になって240本、左右で合計480本となっていた。
他の魔法もそのような感じで全てがインフレ状態、大はしゃぎとなっている。
【スキル《エクストリームゲイル》】
風魔法の上位魔法。複数の竜巻や風の刃が連続で荒れ狂う。
【スキル《チェインフレイムアロー》】
火の中位魔法。初球のフレイムアローに追尾性能を持たせ数を4倍にしたもの。
【スキル《チェインフリージングアロー》】
氷の中位魔法。チェインフレイムアローの氷版。
【ヒグマンドリル】
ヒグマントヒヒとの違いが分かるようになったら上級者と言われる。
【ヒグマングース】
ヒグマを冠するモンスターの中で最も小柄で最も凶暴なモンスター。
【ヒグマンモス】
体長20mを誇る大型モンスターで、敏捷以外に欠点のないモンスター。





