表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
グルメこそ最強ゲームの世界で愛の告白を!〜恋か?喫茶店の夢か!?NPC猫の店長との譲れない戦い〜  作者: 元毛玉
第一章 イートインワールド

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
21/37

第十九話 声が聞こえる味

〜ここまでのあらすじ〜

店長の想いを受け、皆で協力して店長のラブレター作戦を手伝うことになった。

兄の翔や母親と萌奈香が密会していた事実を知ってショックを受けた峰大。

部屋に閉じ籠り、爆殺クチャラーに泣き言を零して誕生日を終えた。 ☜イマココ


〜登場キャラ紹介〜

・ガッツリン:多部 峰大(たべ ほうだい)

 主人公。高2。取柄はゲームの腕で負けず嫌い。


・ローカロリー:相須 萌奈香(あいす もなか)

 峰大と同じクラス。ハイスペックな天然女子。


・ソルトカット:多部 翔(たべ かける)

 峰大の双子の兄。学区1位で全国でも5本の指。


・TKG:瀬瑠 泰夢(せる たいむ)

 中学時代の同級生。中二病は高校からデビュー。


・ガシマ店長

 喫茶店開業を目指す銀毛の猫。語尾はニャ~。



 学校をさぼってしまった。

 萌奈香からのメッセージには一度も返していない。

 それどころか、VRMMO(イートインワールド)にログインすらしていなかった。


 父さんは気を遣ったのか何も声をかけずに仕事へ向かい、家には俺一人。

 そこへ来客用インターホンがなる。

 ふらついた足どりでどうにか玄関モニターへたどりつき、画面を確認した。


 キャップ帽を深くかぶり(うつむ)いているため、映像の顔は良く分からない。

 いつものゼリーと水の配達員だろうか。


「はい。多部です」


 応えた瞬間、帽子を脱いで大声をあげたのは萌奈香だった。


「峰大! もう心配したんだから!」


 目に涙を浮かべ、昨日から返事をしていないことへの文句が続いていく。


(うるさい!)


 失くしていた自転車は、萌奈香が小言とセットで届けてくれた。


(うるさい!!)


 果ては、「作ったケーキあるから一緒に食べよう」と勝手なことを言う。

 聞きたくない! 俺をずっと(だま)していたのになんだその言い草は!


「知らねーよ! そんな不味いケーキなんか食わなくても、VRMMO(イートインワールド)にいけば美味しいケーキがたくさん食えるんだよ! そもそもこの家にはもう翔はいないんだし、萌奈香が家にあがる理由なんてないだろ!」


 モニター()しなのに顔が直視できない。

 心の中で黒くドロドロしたものが渦巻いている。


 気持ちに逆らうことなく一方的な言葉をたれ流し、来客通話をオフにした。

 全部吐きだしたのに心の中はまったく晴れず、渦巻が濃くなっている気がする。


「もう俺に話しかけないでくれ……」



 ◇◆◇◆◇イートインワールド。



「ガッツリン氏、本当に大丈夫かニャ~?」

「……行ってくる」


 ガシマ店長が引きとめる中、俺は一人で無茶な狩りに向かう。

 俺はコンタクトを全部オフにし、店長(NPC)以外の連絡をシャットアウトした。


 どうせ死んでもデスペナだけなのに、ガシマ店長は(いま)だに設定を受けいれず、本気で身を案じてくる。けれど俺は店長の優しさをふり払った。


 ささやかな自傷願望。

 ボロボロにならなければ、この絶望を受けいれられないんだ。


 だから無理な敵に挑み、何度も倒される。

 次のデスペナで学区ランキングは絶望的になるかも知れない。

 でも、もうどうだっていいんだ。


「噂に違わぬ臭さだったぜ……」


 マンモスカンクの群れにやぶれ、大地に倒れ()す。

 諦めて目を()じようとしたとき、颯爽(さっそう)と現れた人影に救出された。


我が同胞よ(ガッツリン)黄泉の常連となる勿れ(むちゃすんじゃねーよ)偉大な純喫茶の師(ガシマてんちょう)深淵ハートウォーリー(めっちゃきにしていた)ぞ」

「……TKG」


 店長が、俺の様子を心配し、唯一連絡のとれたTKGへ救援依頼をしたようだ。

 そう言えば俺の説得に折れたときの店長は、尻尾がうなだれていた気がする。

 今の俺は、店長のヘタクソな演技すら見破れないほどにダメダメらしい。


 TKGの腕からは力強さと温もりを感じる。

 男がお姫様抱っこされる光景はシュールだが、もし俺が女だったら惚れていたのかもな。


バックプロンプト(さっさともどるぞ)ガシマ店長の喫茶店(かえるべきふるさと)へ」



 ◇◆◇◆◇ギルド拠点部屋。



 拠点に戻るなり、TKGと店長から追及を受けた。

 何もないと説明をしても納得してくれない。

 けど、事情をたずねられても答えたくないし、料理を作ると言ってはぐらかす。


「ガッツリン氏、料理よりも大事な話があるニャ~」

「あー、うるさいな店長は。すぐに食事をとらないとせっかくの戦闘経験が無駄になるだろ? 飯のあとにしよーぜ」


 強引に話を打ち切ってキッチンにこもった。

 今回採取できた色とりどりの食材が目の前に並ぶ。


「料理をくわせりゃちょっとは誤魔化(ごまか)せるだろ」


 良く洗った材料を切り(そろ)え、水気を拭きとる。

 薄力粉と卵を混ぜあわせ衣を用意。


 油を熱し、衣をつけたら順次投入していく。

 サーッという滑らかな音が、パチパチと(はじ)ける音へ変わったら揚がった証拠だ。



【迷いを(まと)う高級食材のガッカリ天ぷら】



 完成品をテーブルに運び、箸を押しつける。

 すると二人とも渋々受けとって食べ始めた。


「奈落なる深海は光届かぬ絶望の淵、祝福は無く即時帰宅であろう」

「まずいニャ~」


 痛烈なダメだしが始まり、思わず耳を疑う。

 そんな馬鹿なと思いつつ、俺も天ぷらを口へと運んだ。


「ありえない……不味すぎ……」


 ムラが多く衣はダマだらけ。ジトっと重い仕上がりになっているし、中の食材は火が入り切っておらず、食感がガタガタだ。

 スキル《火加減》や《揚げ職人》の発動すら忘れている。


海の恵みの聖水(てんつゆ)生命の結晶(しお)を所望す」

「わりぃ」


 調味料(つけるもの)を失念し、何もだしてなかったことが信じられない。

 二人はダメだしを止め、俺を(さと)す声をかけ始めた。


「……俺はちゃんと完食したぞ。だからお前も包み隠さず話せよ」

「TKG氏、日本語喋れたのニャ~!?」


 TKGは中二病(ポエム)をやめてまで本気で向きあってくれている。

 それでも俺はテーブルの下で拳を握り、顔をそむけた。


「ガッツリン氏、ちょっと待ってるニャ~」


 店長はそういうとトテトテとキッチンへ向かう。

 しばらく待つと、ケチャップの香りと共に戻ってきた。


「お待たせしたニャ~」



【店長印のクラシックナポリタン】



 コトリ、という音と共にテーブルに置かれたそれは、相変わらず工夫もスキルもないナポリタン。前に俺たちがフルボッコにしたガシマ店長の自信作だ。


 鉄板皿の上のナポリタンからは、香ばしさを纏った湯気が(ただよ)ってくる。

 チラリと店長を見ると、腕組みをした店長がドヤ顔でうなずく。

 銀の毛並みの尻尾も、(ほこ)らしげに真っすぐのびていた。


 店長の自信に手を引かれた気がしてフォークを手にとる。

 一口、口へと運んだ。

 フォークと鉄板皿の奏でるリズムは次第にテンポアップしていき、気づけば俺の頬には涙が伝っていた。


 特に美味しい訳でもないのに、ひと噛みごとにノスタルジックな風景が浮かぶ。

 常連客やデート利用のお客。

 老夫婦が見守る中、そこには猫魔族たちもいる。


 客もスタッフも皆が笑顔で。

 穏やかだけど(にぎ)やかで、ウキウキなのにどこか落ちつく喫茶店(きっさてん)はいつも誰かの声がする。そんな気がした。


 相変わらずケチャップの味しかしない。

 けど、この素朴な味は、店長が俺のために一生懸命作ってくれた味なんだ。


「ガッツリン氏、泣くほど旨いのかニャ~?」

「あんま旨くねーよ」



 ◇◆◇◆◇



 食後に店長珈琲を飲みながら両手をマグカップで温める。

 温まった俺は、萌奈香(ローカロリー)とのケンカを白状した。

 どんな暴言を()びせたのかを語るほどに、二人の表情がみるみる変わっていく。


「ガッツリン氏、それは猫魔族のオラが聞いてもダメなんだニャ~」


 TKGは腕を組み、仏頂面で指をトントンと二の腕に打ちつけている。

 俺は俺の正当性を必死に弁明し、(うった)えた。


「だって先に裏切ったのは俺じゃない! ちょっとくらいひどい言葉だって構わないじゃないか!」


 叫んだ直後、TKGが急に立ちあがった。

 気づいたときには壁と激しいキスをしたあとだ。

 痛みを通り越して、頬が焼けるように熱い。


 PKも()さない覚悟のTKGのパンチで、壁までふっ飛ばされたのだろう。

 殴り終えたままのポーズのTKGが視界の(はし)に見える。


「ミュート! ミューーート!」


 TKGのあまりの怒りに俺も店長も言葉を失う。

 そのままテーブルに拳を打ちつけるTKG。


「苦痛に耐え忍ぶは汝では無い! 言の葉で微塵斬りに伏された可憐な乙女ぞ!」


 肩を震わせ、TKGは言い放つ。

 中学時代からの親友の本気の怒りに、さっきのパンチとは比較にならないほどの衝撃を受ける。まるで巨大なハンマーで後頭部を殴られた気分だ。


 TKGはヴァンパイアマントを(ひるがえ)しながら鋭い眼光を向けてくる。

 俺の心は射貫かれた。


「TKG、ごめん」

星のメッセージは不要(おれにいうんじゃねー)誤作動エイム疾く正せ(あいてをまちがえるな)


 しばらく見つめあう。意志は確かに受けとった。

 TKGがニッと笑う。


プロォォォンンプト(は や く し ろ)!」


 会話が分からずオロオロしている店長を横目に、俺はログアウト操作を始める。

 きっと口にしたら早く行けと(しか)られるだろう。

 だから、心の中だけで二人へ感謝を伝え、俺は萌奈香へ謝罪をしに向かった。



───用語説明:

【TKG語】

 ガシマ店長はTKGのことを日本人だと認識しておらず、祖国の言葉を話していると思い込んでいた。それだけに日本語を話せたことにショックを受ける。


───TKG語説明:

【奈落なる深海は光届かぬ絶望の淵、祝福は無く即時帰宅であろう】

 ガッツリンがルビをつけるのをためらうほどの痛烈すぎる酷評。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
特設割烹へのリンクバナー
 

i1046590
― 新着の感想 ―
今回のTKGはカッコよかったですね〜!!(*^^*) さぁ、行くんだホウダイ! 色々なことがホウダイくんの早とちりでありますように…
青いですねぇ。主人公くんがだいぶこじらせているので。物別れでも、現実なら致し方ないぐらいの状況ですね。言い過ぎというよりも、ここで、こんなこと言ってくる相手が異性として良いかどうかぐらいの問題かも。相…
うおおお、いっけええええ!!!!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ