表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
グルメこそ最強ゲームの世界で愛の告白を!〜恋か?喫茶店の夢か!?NPC猫の店長との譲れない戦い〜  作者: 元毛玉
第一章 イートインワールド

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/16

第十二話 珈琲スタッツ

〜ここまでのあらすじ〜

峰大は萌奈香に告白するため、VRMMO(イートインワールド)での学区ランキング1位を目指す。

埴 津丸(ワンバウンド)と共に参加していた討論会で思わぬ現場に遭遇した。

兄の翔と萌奈香の関係性を目の当たりにし、ショックを受けた峰大。 ☜イマココ


〜登場キャラ紹介〜

・ガッツリン:多部 峰大(たべ ほうだい)

 主人公。高2。取柄はゲームの腕で負けず嫌い。


・ローカロリー:相須 萌奈香(あいす もなか)

 峰大と同じクラス。ハイスペックな天然女子。


・TKG:瀬瑠 泰夢(せる たいむ)

 中学時代の同級生。中二病は高校からデビュー。


・爆殺クチャラー

 ネット上の親友。関西弁が特徴のエンジョイ勢。


・ワンバウンド:埴 津丸(はに つまる)

 学区2位の男。理屈屋で余計な一言が多い。


・ガシマ店長

 喫茶店開業を目指す銀毛の二足歩行猫。語尾はニャ~。


・マロン

 推定メスのタヌキャット。ガシマ店長が命名。



 ◇◆◇◆◇ギルド拠点部屋。



 討論会から明けて数日が経つ。

 まともに萌奈香の顔を見ることが出来ないし、避けている自覚はある。

 学校でも、VRMMO(イートインワールド)でも。

 俺はひたすらランク上げに専念して、あの一件のことを頭の隅に追いやっていた。

 今はガシマ店長の存在だけが癒し。


「ガッツリン氏、これも教えて欲しいニャ~」

「何でも聞いてくれ、幾らでも相手するからさ」


 出会った頃は、なんでNPCにチュートリアルをしなければならないのかちょっと釈然としない、とも思っていた。けど、レクチャーをする間は、嫌な記憶(こと)を少しだけ忘れることができる。

 店長は、無知な設定のNPCの割には物覚えが早い。

 学習型AIなのだろうか。そう考えていたら、店長はポンと肉球の手を叩いた。


「大量に珈琲を納品するには、ここを喫茶店に改築するのが吉と出たニャ~」

「だからどさくさに紛れて改築しようとすんな店長」


 店長は、ぺしゃりと垂れさせた耳と眠そうな目で、抗議の上目遣いをしてくる。

 居候の癖に、乗っ取りを画策してくる厚かましさがあるのは、玉に瑕なところ。


 ガシマ店長の珈琲は、恐らく最高品質の部類。

 正直、ヤバイ代物なのでギルドからも出所を追及されているし、ワンバウンドからの追及も厳しくなってきている。

 相談して、「謎の旅商人から譲って貰った」の設定でゴリ押しをしているが、いつまで持つやら。


 VRMMO(イートインワールド)では、食事の幸福度に応じてレベルアップの上昇値が変わる。納品したら「3倍なんて前代未聞だろーが!」と、ギルドマスターにブチ切れられた。

 当然だろう。

 ドリンクの組み合わせ効果は、普通1%~7%程度なのに、200%オーバーのぶっ壊れ性能。

 珈琲を摂取した俺らは、同レベル帯では抜きん出た実力を付けつつあった。

 今の筋力であれば、以前見送った装備品も扱える。

 カタログを見ればもっとテンションが上がっても良いはずなのに、討論会のことを引きずり気持ちは沈んだまま。

 俺の繰り返す溜め息に、つられて尻尾を下げた店長。


「ガッツリン氏、何かあったのかニャ~?」


 普段は空気を読まないガシマ店長が気遣ってくれるのだ。

 俺は安心させるために笑顔を作った。


「何も問題ないよ。ほら、店長。喫茶店に使えそうな備品のカタログあるから一緒に見ようぜ」


 尻尾を弾ませながらカタログを見る様子を横目に、あの件を思い返す。

 あれから俺は、意識して萌奈香とログイン時間をずらしている。

 こんなことはいつまでも続けられない。それは分かっているんだ。でも、向き合う勇気が持てず、時間だけが過ぎていった。



 ◇◆◇◆◇峰大の部屋。



 昨日、爆殺クチャラーにも勘付かれてしまい、今夜はそのことについて話すことになっている。

 VRMMO(イートインワールド)は既にログアウトして、連絡を待っているところだ。

 時間は深夜2時。窓の外は土砂降りが続いている。

 ぼんやりと雨を眺めていたら、プライベートチャットのランプが点灯した。


『爆殺クチャラー:待たしてもうたな。ほな、何があったんか説明してくれるか?』

「実は……」


 以前から、事あるごとに相談に乗って貰っていた。

 年上のクチャラーには何でも相談できてしまうし、何度もアドバイスをくれた。

 萌奈香への告白を焦る必要が無いと言ってくれたのも彼だ。


『爆殺クチャラー:なんや悪かったな。俺が余計なアドバイスをしてもうたばかりに』

「いや、クチャラーは悪くないよ」


 そう。俺の勇気が足りなかっただけ。

 汲み取ったクチャラーは「自信を持てるまで告白を先延ばししたらええ」と、望む言葉をくれたし、俺の心が幾分軽くなったのはクチャラーのお陰だった。

 結果的に失敗だったとしても、彼を責めるのはお門違いだと思う。


『爆殺クチャラー:そん幼馴染とはちゃんとそのこと話したんか? 気乗りせぇへんことを後回しにするんはガッツリンの悪い癖やで?』


 耳に痛い。

 けれど、声色から本気で心配していることが伝わってきて、心が温かくなる。


「分かってるんだけど、中々時間が合わなくて……」

『爆殺クチャラー:は? ガッツリンがローカロリーと時間をずらしとんのやろ?』

「ちょ!? いつから気付いて?」


 萌奈香のことは幼馴染としか話していなかったし、ローカロリーの正体が萌奈香だと一言も言っていない。なのにクチャラーにはバレバレだったみたいだ。


『爆殺クチャラー:あんな? 分からんとでも思っとんのか? 皆気付いとって言わへんだけやぞ?』


 筒抜けだったことが衝撃で、言葉が出てこない。

 思考も体もフリーズしてしまう。


『爆殺クチャラー:ガッツリン。前もゆうたが自信を持ちや。想いはちゃんと伝えんといつまでも引きずってまうから、どないな結果になっても伝えや。俺は全力で応援するから』


 声色で、心からのエールだと伝わってくる。

 これほど真面目なトーンで喋ることは少なく、真剣さがうかがえた。

 彼の激励に応えたい。

 卑屈になって塞ぎ込むよりは、告白を前向きに捉えてチャレンジしたい。

 その想いを伝えたら、「頑張りや」と、返してくれるクチャラー。

 リアルでは一度も会ったことが無いけれど、長年の親友に背中を押され、俺は昨日よりも一歩、前向きになることができた。


「クチャラー、本当にありがとう。俺、やるだけやってみるよ!」

『爆殺クチャラー:どういたしまして』



 ◇◆◇◆◇ギルド拠点部屋。



「昨日よりガッツリン氏の顔色が良くなったニャ~」


 翌日。

 ガシマ店長がまじまじと顔を覗き込み、一つ頷いて満面の笑顔で迎えてくれた。

 目を細め「良かったニャ~」と繰り返す店長。


「店長にも心配かけたよな。俺はもう平気だから」

「とっておきのを淹れるからそこで待ってるニャ~」


 店長はトテトテとキッチンの方へ向かった。

 どうやら豆を挽いているようで、部屋には焙煎された豆の良い香りが増す。

 淹れ方がいつもと違うのか、音が濃縮されたような強烈な圧力音が鳴り響く。

 それが落ち着いたと思ったら、辺りには甘い香りが漂いだした。

 鼻歌交じりの店長がマグカップを二つ運んでくる。


「ガッツリン氏の分ニャ~」



【店長印の青春と大人のチェック柄ラテ】



 差し出されたカップの上面はアイボリーとダークオレンジでチェック柄になっていて、焦がしキャラメルの芳香がする。いつもはブラックばかりなのに珍しい。


「店長、これは?」

「キャラメルマキアートニャ~。元気を出して欲しいときに淹れるニャ~」

「なんで店長の分も?」


 そこが疑問だったのだが、問われた店長はモジモジくねくねと照れている。

 俺は茶化さないで店長が落ち着くのをじっと待つ。

 すると頬を赤らめた店長が、マロンへの恋心をぽつぽつと語り出した。


「ガッツリン氏、オラも恋をしているニャ~。マロンさんへ告白するために気合いを入れ直すニャ~」


 真面目に聞いてみると、店長なりの孤独があったことが分かった。


「そっか。かつての同胞にそっくりなんだな」

「ニャ~」


 他に店長みたいな存在は確認されていない。

 作られた設定と流さないで向き合ってみたら、言葉の節々から読み取れる寂しいという想い。

 気付けば、自然と店長へ頭を下げていた。


「店長、今まで悪かった。これからは告白に向けて一緒に頑張ろうな」

「ニャ~。そんなガッツリン氏にプレゼントニャ~」


 サムズアップした店長から「店長のイチオシ!」というシールを貰う。

 俺もサムズアップして笑顔を返す。


「お互い、諦めずに頑張ろう」

「頑張るニャ~!」


 俺と店長の間に、新しい約束が出来た。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
今日も店長が可愛い( ˘ω˘ )
お互いに恋をしている、ホウダイとガシマ。あ、爆殺クチャラーはリアルではあったことないんですね♪ もしかして、ホウダイくんと何か関わりある人だったりして…?
 ガシマ店長のキャラメルマキアートが美味しそうです。温かくて甘くてほろ苦い飲み物は、恋に傷ついた時にはうってつけだと思います。頑張れ、峰大君!!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ