第66話 戦いは終わらない
三日経った。
士降とジンの戦闘が始まってから太陽と月が三回も入れ替わった。
二人の殺し合いは未だに続いている。既に両者の得物は完全に砕け散り、互いの拳の応酬だけが繰り返されていた。
「はあ゛あ゛っ!……はあ゛っ!!」
「フハハハハ!! ハア゛ッ!!」
もはや、山をも切り崩す衝撃波などは出ていなかった。何度も拳を重ねる内に、士降とジンの打撃は行きつく先まで至っていた。打ち込んだ相手の体に、ダメージを、衝撃を全て逃がさず浸透させる。二人は武の境地、ある種の極みにまで達していた。
「う゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」
「グア゛ア゛ア゛!!……ハハハハハハ!!」
士降の蹴りが、ジンの腹部を蹴り抜く。砕け散った破片はダイヤモンドダストのように、キラキラと辺りに散った。
口から血を吐きながらもジンは笑みを絶やさない。心の底から楽しそうに戦いの快楽を味わっていた。
「ハハハハハ!!」
「う゛う゛!……ぅあ……」
ジンの拳が士降の右胸を殴り抉った。白い粉のような粉末が、血飛沫のように舞い散り、雪のようにふりしきった。
ジンとは対照的に、痛みと苦しみによって苦悶の声を上げる士降。臓腑からこみ上げたのか、食いしばり過ぎて口内を噛み千切ったのかは定かではないが、大量の血で口元を濡らしていた。
「ふっ! ん゛あ゛あ゛あ゛!!」
「ハハッ! ハハハハハッ!!」
空はオレンジと紫のグラデーションによって毒々しく色付き、夕焼けの薄暗い光が、二人の体から散った命の飛沫を怪しく照らしていた。
「はぁ……はあ゛あ゛あ゛あ゛! はあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」
士降の一撃がジンの腹部に突き刺さる。亀裂が走り、眩い光を撒き散らしていた。
「ガアッ!? ハッ……ハハッ……ハハハハハハ……」
笑みこそ崩さないジンだが、今の一撃は芯に響いたようで、膝から崩れ落ちた。
畳みかけるように殴り続ける士降だが、ジンのカウンターパンチを受け、体に亀裂が走る。意趣返しのように、ジンの殴りつけた場所は、同じ腹部だった。
「う゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!? ぐっ、ああっ!? あっ、ぐぉ…ウッ!? ……ふっ、あ゛ア゛ッ! 」
深刻なダメージを受けた士降は、悲痛な呻き声を上げ、腹部を押さえながら後ずさる。余りの痛みに過呼吸すら起こった。
「ハハ、ハハハハハ、ハハハハハハ」
乾いたようにジンは笑う。もはや感情で笑っているのではなく、本能から来る笑いであった。
戦いは終わらない。誰もこの二人の戦いを止めることは叶わなかった。




