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第61話 Chase2

 束の間の休息から数日経った頃。


 ミラさんから通信があった。

 グラニデから遠く外れたところにある山脈、デスティノ山脈に敵性生命体が出たそうだ。

修理に出していたアルケスの改修が終わったそうなので、俺はみんなよりも一足早く、そこに向かっていた。


 なんだか胸騒ぎがする。恐らくジンもいるのだろう。また近隣の住民を殺して回っているのだと思うと、ハンドルを握る力が強くなる。一刻も早くあいつとケリを付けなければ。


『ソーイチ君、聞こえるか?』


 耳元でミラさんの声が聞こえる。ウリコさん特製のワイヤレスイヤホン型の錬金器具だ。


「はい!」

「デスティノ山脈でジンバックの目撃情報が入った」

「わかりました! 今度こそ奴と決着を付けます!」


 俺は意気込んでそう言った。


「近隣住民の避難は完了しているそうだ。周囲の被害は気にせず戦ってくれ」

「はい! がんばりま……!」


 目の前からこちらに猛スピードで迫ってくる存在を目撃する。

 あれは.……バイクか!?


「どうした!? ソーイチ君!」


 岩石でできたバイクのような乗り物に乗った怪人達が、俺の首を取ろうと解き放たれたんだ!


「また後で連絡します!」


 刺客達のうち二人が、ピアノ線のような物をピンと張ってこちらに突っ込んでくる。

 俺をそのワイヤーで真っ二つにするつもりか!


 奴らの目論見通りワイヤーを首、胴体にぶち当てる。たが、俺の体が真っ二つになることはなかった。むしろ奴らは、俺に引っ張られるようにバイクから引きずり落ちる。


「うぎゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」 

「あがあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」


 いつかの豹の幹部のように、血と火柱を背中から噴き上げながら、ガリガリと削られるように引きずられていく。


 邪魔だ! とばかりに身体に纏わり付いたワイヤーを千切ってやる。


 前方を走る二人乗りのバイク。後部に乗った怪人が飛び掛かってくる。

 グリップを握っている左手だけを支えにし、身体全体を投げ出してカウンターキックを食らわす。その反動で身体を戻し、再びアルケスに跨る。


「ぎあっ」


 蹴りを喰らった怪人は、血しぶきをあげながら破裂した。


 「トアッ!」

 

 真正面から突っ込んでくる怪人を、サマーソルトキックのように、アルケスで打ち上げて宙に浮かぶ。ホイールからチェーンソーのような刃を出し、相手の車体ごと、ガリガリと削るように真っ二つにしてやった。


 どこからか現れたのか、後ろからもバイクに乗った怪人たちが俺を追いかけていた。

 ジンの乗っていたバイクよりも造りが悪いのか、大したスピードは出ていない。千切ることも簡単だが、犠牲者を出さないためにもここで始末してやろう。 


 並走してきた二人乗りのバイク。後ろの一人がこちらに蹴りを放ってきた。

 蹴りを脇に抱えるように受け止め、膝関節をへし折った。


「あぐっ……!?」


 そのままアキレス腱を掴みながら地面に引きずり下ろす。頭部をぐちゃぐちゃに紅葉卸された怪人を振り回し、運転していた奴に叩きつける。

 バイクは横転し、二体の怪人を巻き込みながら爆散した。


 後ろにはりついている一人乗りのバイク。急ブレーキをかけ、奴の前輪に、こちらの後輪の横側がぶち当たる。怪人は勢いよく前方に投げ出されるが、俺はそいつの首を掴む。すると、いつかのモグラ幹部のように脊髄と首から下がおさらばした。適当に放り投げて再び走り出す。


 まだまだバイクの刺客達は後ろから湧いて出てくる。今度の怪人は、ジンが錬成していた銃のようなものを持っていた。


 グレネード弾を一斉に放ってきたが、俺はバイクに乗りながらも後ろ回し蹴りを繰り出し、弾を弾き返す。バイクたちの何台かは、爆発に巻き込まれて爆死した。

 続いて四台のバイクが俺を囲むように陣取る。それぞれが、俺にロープのようなものを飛ばす。俺の首、右腕、左腕、胴体にロープが絡まる。そのまま散会して俺のバランスを崩させる気か!


「しゃらくさいんだよ!!」


 俺は絶妙な加減でブレーキを踏み、車体を回転させる。そのままコマの様に回転し続けると、刺客達はバイクから投げ出され、俺を中心にグルグルと回り続ける。

 さてここで問題だ。濡れたタオルをブンブンと振り回したらどうなるだろうか。

 ……そう、遠心力で水分が飛び散るよな? 生物の身体だって同じさ。

 振り回された四体の怪人達は、身体の穴という穴から体液を撒き散らせて絶命していった。


 前方から、数十メートルの巨大な蛇の怪物が襲い掛かってくる。

 上等だ。引き裂いてやる。俺はウィリーアクションでアルケスの前輪を持ち上げた。前輪の刃をギュラギュラギュラと回転させ、こちらへ噛みついてくる大蛇に突っ込んでやる。

 大蛇は縦に真っ二つに裂け、血しぶきを撒き散らせてその命を絶ち切られた。後続のバイク達が蛇の血でスリップして転倒していく。


 ざまあないね。でもまだ息がある。


 俺はブレーキをかけて止まる。アルケスから降りて生き残りの処理をしよう。

 ヴェロ・ニィカを引き抜き、倒れ呻いている怪人の首を、近い順に刎ねていく。


 あと、三匹。残りは立ち上がり、俺に歯向かってくる。生き残りはやはり幹部級か。


 パラディオーディナーとヴェロ・ニィカを連結させて両刃の三節棍、というよりフレイルだな。両刃のフレイルにする。


「まずはお前からだ」


 殴りかかってきたシマウマの幹部級の、チャクラムのような武器による一撃をフレイルで叩き落とす。勢いを殺さずに、フレイルを振り回す。炎、氷、水、雷の属性による最速の連撃は、一瞬でシマウマの存在を消した。

 そう、消えてなくなったのだ。そのプロセスの一部始終を、俺の類い稀なる動体視力は全て捉えていた。

 炎で灼け焦げたシマウマを、炎ごと凍らせ、水をウォーターカッターのように噴出させて切り裂いた。トドメに雷の力が粉々になったシマウマの破片を焼き尽くした。

 それを一瞬の内に繰り返すことで、奴の痕跡を何一つ残さずにこの世から抹消したんだ。


 続いて猿の幹部が俺の周りをチョコマカと駆け回る。攪乱のつもりだろうか? 残念だが俺には見えている。

 奴が俺に襲い掛かるタイミングを見計らって、フレイルから薙刀モードにしたPVN(パラディオーディナー=ヴェロ・ニィカ)の矛先を文字通り置く。猿は吸い込まれるように矛先に刺さってしまった。

 そのまま電気と水の力を同時に送る。水は電気を通すとよく言うが、その性質を利用させてもらう。奴の体全体は水浸しにし、絶え間なく電撃を浴びせる。

 そんな軽い体だと耐えらんないだろ。目論見通り奴の体は膨張し、破裂した。


「う、うわあああああああ!!」


 幹部の一体が背中を向けて逃げ出した。インパラのような姿をした幹部だ。逃げ足が速い。だが、


「逃がすか!」


 俺は薙刀を逆袈裟に切り上げて斬撃を飛ばす。地面を奔る氷の斬撃はインパラにぶち当たり、下半身を凍らせる。


「うぎぃ!?」


 薙刀を地面に突き刺し、俺は助走をつけて奴の背中に飛び蹴りを食らわす。ボギン、と凍っているところが砕けて、インパラの上半身と下半身が泣き別れした。


「あ……え……?」


 自分の命が風前の灯だということに未だ気付かないインパラ。


 ――今、楽にしてやる。


 インパラの上半身を上空に放り投げ、肘のブレードでその首を落とした。




◇◇◇◇◇




 刺客達を葬った俺は、再び亜音速の世界に突入し、デスティノ山脈付近を走る。

 すると――


「あれは……!?」


 はるか前方のそのまたはるか上空に、巨大な隕石が地表に向かっている。あんなものが落ちたらひとたまりもないぞ!? 一体何が起こっているんだ! 早く向かわないと! 俺はハンドルをより一層強く握り込み、音速を超えたさらなる速さで現場に向かった。

第61話、いかがだったでしょうか。




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