第39話 三節棍
三節棍。
三本のぼっこを、鎖などで一直線になるように連結した武器。複数の関節部分を持ち、振り回して敵を攻撃する武器。
マンガやアニメで手練れのキャラクターが使ってた記憶がある。
ウリコさんにちょっと広い個室を貸してもらい、これの練習をしている。
はっきり言ってクッソ扱いづらい。なんなのこれ。誰が考えたの?
一応取扱説明書? 的なのは貰ったけどさ。
っていうか中世ヨーロッパ風な世界観なのに中国発祥の三節棍があるってどういうこと? この世界の武器のルーツはどうなってんの?
そういえば徒手空拳の時のように戦い方が頭の中に浮かんでこなかったな。
っていうかなんで俺普通に戦えてたんだ? 喧嘩とか武道とかやったことないのに。アニメの必殺技を練習するのとは訳が違うぞ?
両肘のブレードに関してもそうだ。あんな使いづらそうなのに、ずっと昔からあれで戦ってたかのように使いこなせる。
士降由来の力だからわかるのか? 三節棍は士降関係ないから使えないと。
なんかそういう理由ある気がする。
でもまあ何はともあれ、使っているうちにそこそこ使いこなせるようになってきてるわけで。
最初のうちは振り回してるだけで体中に多段ヒットしてたけど今ではそれなりに形になってきてる気がする。
真ん中のぼっこを掴んでぐるぐると振り回す、あの動作は初心者にはちょっと厳しすぎる。
最初は端っこの二本を持ちながら戦うのがいい。鎖に繋がれてる方の部分を持って二刀流の構え。
――――~――――~――――
↑ ↑
ここの部分ね。
古武術のカリスティックに近いかな? やみくもに振り回すと真ん中のぼっこが邪魔しちゃうけど、肩甲骨をグングン動かして振ると邪魔しないでいける。機関車の車輪のように伸びる感じだ。
屋内戦や狭いところで戦うとしたらこの構えの方が絶対に戦いやすい。
次は左右のスティックの両端を持ってみよう。
――――~――――~――――
↑ ↑
ここの部分ね。
この構えは持ってるところだけじゃなく、真ん中のぼっこも当たり判定となる。
点だけじゃなく、線での制圧もできるということだ。
当たり判定になるってことは、防御にも使えるってこと。
三節棍って攻守ともに揃えている完璧な武器だったのだ。
端を持つことのメリットはそこだけじゃない。片手を離し、ビュッと突き出すことで中距離の攻撃もできちゃうのだ。
次は端のぼっこと真ん中のぼっこを持ってみよう。
――――~――――~――――
↑ ↑
ここの部分ね。
持ってない方のぼっこをヌンチャクのように肩の後ろに回して、真ん中の棒を振るようにして、持ってないぼっこを相手にぶち当てるのだ。
ブォン!!
おお、すごい音だ。こんなの当たったらひとたまりもないぞ!
腕の力だけじゃなく、腰や身体全体を使って振った方がそれっぽくできる。
グルンと身体を一回転させながら振ると遠心力もついて威力が底上げされるんだ。
最後にはやっぱり真ん中を掴んでぐるぐる回したいよね。
――――~――――~――――
↑ ↑
ここね。
推摇棍って技からやってみよう。
真ん中のぼっこを両手で持って、左棍が背中周りに横払い、右棍を前側に円状にX字を描きながら振る。
なんだか複雑で難しそうな動きだけど、てこの原理が働いて勝手にその動きになるから、あまり考えないで振るのがポイントだ。右棍を前にX字を切ると、勝手に左棍が脇から背中回ってくる感覚。
強く掴まず少し軽めに持って右手を前に、左足を後ろに構えよう。
お待ちかね、縦方向にビュンビュン振る舞花棍、撩花棍だ。舞花は上から振り下ろすように、撩花は下から掬いあげるように回す感じだ。腰を使って回さないと脛にバチバチ当たってしまう。
三節棍は長いから、こういう縦に回すときはあまり膝を曲げない方がいいらしい。曲げ過ぎちゃうと地面にバチバチ当たって軌道が変わり、回しにくくなってしまうからだ。
推摇棍、舞花棍、撩花棍。これらの動きを最初はゆっくりと丁寧に軌道をなぞっていく。
動きを体になじませるように何回も何回も反復練習していく、そうしていくと――
キ゛ュハ゛ハ゛ハ゛ハ゛ハ゛ハ゛ハ゛ハ゛ハ゛ハ゛ハ゛ハ゛ハ゛ハ゛ハ゛ハ゛ハ゛ハ゛ハ゛ハ゛ハ゛ハ゛ハ゛
徐々に加速させ、最終的にはものすごいスピードで回せるようになってくる。
今俺は無心に三節棍を回している。五点棍という動きだ。
舞花棍のように振り下ろすように回していく動きだが、重心を低くしてわざと地面に当てるように回している。
タタンタタンタン、タタンタタンタンと小気味よく地面を打ち鳴らしていく。
今までのことを反芻したり、考え事をしていた。
この世界に転生……もとい錬成されて、俺は大切な人を得ては失い、また得てきた。
シオンやミラさん、バンビ達やトニックさん。今の俺を形作るかけがえのない人達。
セーヤおじさんにユミウおばさん、村のみんな。俺が取りこぼしてきた命。
俺はこれからも戦い続ける。大切なものを守るために、もう何一つ失わないように。
理解者だっている。ミラさんは俺が士降だとしても受け入れてくれた。ウリコさんやクリスさんだって俺をバケモノ扱いせずにフラットに接してくれた。
……いやまあ、ウリコさんはちょっと俺の事貴重なサンプル扱いしてるような気がするんだけどさ。生物兵器扱いしてたし……。
でも、その戦いの果てには何があるのだろう。いつまで戦い続ければいいのだろう。
その答えに辿りつくためには、あのジンバック・アルファウルブズとかいう正体不明の存在と再び相見えなければいけない気がする。
あいつとまたやりあうんだ。
今度こそ勝ってやる。この前みたいにはいかない。
新しい力、パラディオーディナーを扱えるようになってあいつを打ちのめすんだ。
――タタンタン
「ふう……」
こんなところかな。結構サマになってきた。後は実践あるのみだ。
ジャギッと三節棍を片手に収める。收棍と呼ばれる収め方だ。
おお、なんかだいぶ使いこなしてるな俺。結構センスあるんじゃないか? 武術、前の世界でもやってればよかったかな。
「ソーイチ君! いるか!?」
俺が自分の秘められた才能に酔っていると、ガラリとドアがバーンとあけ放たれて、ミラさんがエントリーしてきた。
せっかくだ! 俺の新しい武器、技術をミラさんにお披露目しよう。
「あっ、ミラさん! 見てくださいこれ! ウリコさんにもらっ――」
「ソーイチ君、帰ってきて早々すまないが任務だ。落ち着いて聞いてくれ」
「また奴らが出ましたか!?」
丁度いい。パラディオ―ディナーの実践には丁度いい。
相手は魔獣か、怪人か、はたまた幹部級か。
いずれにしろ今ノッてる俺の敵じゃないさ。
ミラさんは少し何かを噛みつぶすような顔をして、ゆっくり口を開いた。
「トニック・クォーツァーに外患誘致の疑いがあり、重要参考人として指名手配された。我々に課せられた任務は速やかに彼の身柄を確保することだ」
第39話、いかがだったでしょうか。
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