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第37話 Alchemy Weapons Development Center

 ガタンガタンと揺れを感じる。 

 なんだか柔らかくていいにおいがする。


「ん………」

 

 ……目の前が真っ白だ。あれ、俺眠ってたのか。


 ゆっくりと目を開けると、目の前にはミラさんの顔が。


「ん、起きたか。ソーイチ君」

「あれ、俺……」

「無理をするな。今はゆっくり休んでおいた方がいい」


 ミラさんはゆっくりと俺に微笑む。……ってあれ? これどういう状況?

 俺は仰向けに寝ててミラさんの顔と下乳が見える。ってことは……


「うおあっ!?」


 膝枕じゃないか! 驚いて膝から滑り落ちる。


「ゆっくり休めと言った途端それか。身体は大丈夫なのか?」

「ええ。まあ、おかげさまで?」


 あの後、本部から連絡があった。

 俺達が向かっていた町の敵性生命体は数名の犠牲者を出した後突如どこかへ消え、第三師団、第十一師団と交戦していた生命体も撤退したそうだ


 こちらも状況を報告し、俺たちは派遣された馬車に乗り込んでいた。

 その途中で眠ってしまったのだろう。


 俺とミラさんは二人並んで座っている。


「……」

「……」

「聞かないんですか? 俺のこと」

「そうだな……聞きたいことは山ほどある。……君はその、元からあの力を持っていたのか?」

「いえ、ヒスイ村が襲われた時に突然目覚めたんです。どうして俺にあんな力があるのかは俺にもよくわかっていなくて……」

「そうか……やはり君が虎の幹部級を討ったのか」

「はい。シオンを守るのに必死で、気がついたらあの姿に」

「そうか……」


 ミラさんはそれだけ呟き、再び考え込む。

 沈黙が再び流れ始めた。


「あの、俺、これからどうなるのでしょうか」

「……そうだな……君はどうしたい?」

「どうしたいって……」

「君はこれからどうしたいか聞いているんだ。奴らと戦い続けるかそれとも、これを機にどこかで平穏に暮らすか」

「俺は……俺は、みんなを守りたいです。ここの人たちとか、ハサの人達とか、見知らぬ誰かでもいい。あいつらが誰かの笑顔を、幸せを、大切なものを奪おうとするのを見て見ぬ振りができない。もし師団を離れることになっても、俺は戦い続けます。これからも」

「……そうか」

 

 ミラさんは噛み締めるように口角を少しだけあげて笑った。


「君の希望はわかった。悪いようにはしない。私に任せてくれ」


 ミラさんはそう言って、俺の頭を撫でた。


 そこから先は一言も話していない。馬車が揺れる音だけが俺の耳に鳴り響いていた。




◇◇◇◇◇





 しばらくしてグラニデまで辿り着く。


 怪我人の多い第七師団はすぐに医務室に運び込まれたが、ミラさんは腕を折っているのにも関わらず俺を連れてどこかへ行こうとしている。


「私だ。診てもらいたい者がいる」


 俺は誰かと通信しているミラさんの数歩後ろを歩く。お互いに会話はない。


「あの、どこに向かっているんです?」

「心配するな。信用できる奴らのいるとこさ」


 ミラさんと俺は庁舎から数十分歩いた距離にある工場のような建物に入った。

 Alchemy Weapons Development Centerと書かれている。


 ミラさんが大きな扉を開けると、広い部屋に出た。


 そこで白い作業服を着た人たちが錬金術を用いて何かを作っているのを見た。


「よう、久しぶりだな。ミラ」


 白衣を改造したような衣装を着た、二十代半ばのギラついた目つきの女性が、口角を釣り上げながらこちらに歩いてくる。

 メガネをかけ、紫色ポンパドールの髪型をしている。


「調べて欲しい物があるんだ」


 そう言ってミラさんは砕かれた鉱石の破片のようなものを取り出して女性に渡した。


「なんだよこれ? っていうかこの坊やは誰だ?」

「紹介が遅れたな。彼はソーイチ・オトギリ。私の団の弔葬部隊の一員だ」

「どうも」


 俺は軽く頭を下げて会釈する。女性は興味なさそうな顔で「フーン」とだけ溢した。


「そして彼女がここ錬術兵器開発局、通称AWDC局長ウリコ・カヘラテだ」


 錬術兵器ってのは錬金術で作り出した、あるいは錬金術を用いて起動する兵器のことだ。


 ミラさんの炎剣も、炎の元素を強化する術が施されている剣状の錬術兵器から作り出されている。


「んで、これなんだ?」

「先日の敵性生命体の事件で地殻変動があっただろ?」 

「お前んとこの隊が巻き込まれたってあれか」

「それを起こした張本人の体表組織だ」

「はぁ!?」


 ウリコさん? とやらが口を歪ませながら驚いた。 


「ミラさん、そんなものいつのまに……」

「おいおい待て待て! 地殻変動だぞ? 地殻変動! そんなもん水銀階級でも無理だろうが! なにもんなんだそいつは!?」

「ジンバック・アルファウルブズと名乗っていた」

「……!」


 ウリコさんは目を見開いて口を閉ざした。


「……正気か?」

「そして、そのジンバックが体表に纏う鉱石を砕いたのが彼だ」


 ミラさんが俺の肩をポンと叩く。あ、ここで俺が関わってくるのね。


「意味がわからん。説明しろ」

「そうだな、まず彼の体を――」

「ミラ!」


 ガチャン! と扉から不機嫌そうな顔をした女性が入ってきた。


 ウェーブがかった茶色の長髪の女性だ。髪の毛の艶がすごい。めちゃめちゃ手入れしてる人の髪だ。


「来たか! クリス」

「来たか! じゃないわよ。休日に呼び出すなんてどう言うつもり? 私今日デートだったんだけど」

「すまない。急ぎで見て貰いたいんだ。彼を」

「……誰? このかわいい子」

「ここじゃちょっとな……奥で話そう。ウリコも来てくれ」


 そう言ってミラさんは俺の手を繋いで奥の部屋へと入って行った


「ったく、何が何やら」

「なんなのよ一体……」


 お二人もそれに続いた。

 



◇◇◇◇◇

 



「改めてこちらは錬金連合軍直属の回路師長、クリス・ヘカスチアだ。ソーイチ君、彼女達にあの姿を見せてもらってもいいか?」

「えっ」


 マジすかミラさん。大丈夫なんですかそれ。


「大丈夫。この二人は私が最も信用できる人間だ。決して口外はしないだろう」


 ミラさんは俺の肩に手をおきながらそう答えた。


「おいおい高く見積もられたもんだな」

「何見せられるのかわからないけど、時と場合によるわよそれ」


 お二人はジトっとした表情でミラさんを見つめた。

 俺もほんとうにだいじょうぶなんですか? って目で訴えると、ミラさんはゆっくり微笑んだ。


「大丈夫だ。私を信じてくれ」

「ミラさんがそう言うなら……」


 観念しよう。ミラさんが大丈夫って言うならきっと大丈夫だ。


 頭の中で敵性生命体達と対峙した時の情景を浮かび上がらせ、戦闘体制に入る。

 体中に亀裂が入り、心臓が熱く鼓動する。


「……錬金」

「あらま」

「おいおい、マジかよ……!!」


 二人は士降に変わった俺を見て二者二葉の反応を見せた。


 クリスさんは両手でを口押さえて驚いたように目を見開き、ウリコさんは犬歯を剥き出しにして目を爛々と輝かせた。


「おいミラ! こいつぁ!!」

「そうだ。彼がオクレイ高原の戦いで突如出現した未確認生物、通称士降張本人だ」

「あなた、とんでもないの連れてきたわね」


 クリスさんとウリコさんは興味深そうに俺の身体にベタベタ触る。


「硬いのね……素敵……」

「読めたぜ。こいつの体調べ上げて新しい兵器を開発しろってことだろ?」

「いや、そうじゃない。彼がどうして士降の力に覚醒したかを調べて欲しい。彼はもともと普通の人間だ。この力が彼の体に負担をかけたりしていないかを解明したい」


 それに、とミラさんは付け加える。


「本部にはまだ報告していない」


 あっけらかんと言うミラさんだが、クリスさんは顔を顰めて追求する。


「本部に隠すつもり? それって重大な規律違反になると思うのだけど」

「今日の会議でドルクス総団長には話すつもりでいる。ガルドス師団長は士降の力を危険視しているし、ブリジラ師団長は危険な思想を持っていてそもそも信用できない。折を見てこっそり話すよ」


 それでは私は会議があるから、とミラさんは部屋から出て行った。


「本部なんかにくれてやるかよ。こんな唆る素材、初めて見たぜ。とにかく隅々まで調べてやるからついてきな」


 ウリコさんは高まるテンションを抑えきれずに肩を回して部屋を出た。


 クリスさんも「やれやれ、また面倒なことに」とボヤきつつも私服らしき服装の上から白衣を通していた。

第37話、いかがだったでしょうか。




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