第33話 アクシデントは唐突に
ミラさんから通信が入った。
この都市に敵性生命体が出た。
しかも離れた場所三か所にだ。街中にも被害が出ていると聞く。
丁度、この都市には三つの師団が揃っている。
各師団三手に別れて目標の殲滅に当たるのが今回の作戦だ。
俺達第七師団は、少し離れた街に出た敵性生命体を叩くために馬車に乗り込み、月夜が照らす森の中を駆けていた。
「んも~! ついて早々これなんだから! 最近あいつら出すぎ!!」
バンビはぶー垂れながらもピリついた雰囲気を出していた。
「私達の出る幕が無ければいいんだけどね……」
他の隊員もみんな表情を強張らせている。ヒリついた雰囲気がこの場を支配していた。
「へっくしょい!!」
そんな中、俺は間抜けにも大きなくしゃみをしてしまった。
「ソーイチクンったら呑気なんだからー!」
「ごめんごめん、なんか緊張したら余計に我慢できなくて」
バンビと俺のやり取りで、周りの緊張がほぐれかける。
それを感じ取ったマリアさんがパンッと手を叩いた。
「はいはーい! みんないったん深呼吸しましょう。気を引き締めるのも大事だけど、緊張し過ぎるのもよくないです! 冷静さを保って平常心を忘れないように」
マリアさんの言葉で周りに程よい緊張感が漂う。
なんか恥ずかしい思いをしたような気もするけど、結果オーライだ。
っていうか気を引き締めなきゃいけないのは俺の方だ。
誰も死なせやしない。俺がみんなを守るんだから。
そのためにはうまいこと隊から抜け出して、人知れず『《《錬金》》』しなければならない。
そのタイミングを見落とさないように気を張っていると――
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ! !
「なんだ! これは!?」
誰かが叫んだ。
地震と同時に、地面が隆起したり逆に沈んでいったりと、地殻変動が起きた。
なんだ!? 何が起こっている!?
地面が縦に、横に揺れる。
ある者は馬車から放り出され、ある者は馬車ごと盛り上がる地面に突き上げられて宙を舞う。
め、滅茶苦茶だ! なんなんだよこれ!?
バランスを崩して地面に放り投げられる。
隆起した岩盤に突き上げられる形で空高く大きく吹っ飛ばされ、地面の裂け目の中に頭から落ちた。
「がっ……!」
いっ……たいっちゃあ痛い。でも流石俺。全然平気だ。
肺のなかの空気は一気に押し出されたが、大きなダメージはなかった。
みんなは……!? 俺は平気でも、他のみんなは今ので致命傷になりかねない!
周りを見渡すと、隆起した岩壁で辺りを囲われていた。
この裂け目の中は何故か空洞になっている。地に足ついて歩けるようになっていた。
「誰か……誰かいないのか!?」
俺の声が響き木霊する。強化された聴覚には、仲間たちのほんの小さな声を上方から捉えた。
……言葉の内容はわからないが、まだ生きている人はいるみたいだ。
俺以外にも裂け目に落ちた人がいるかもしれない
とにかく辺り一帯を確認して――
「――ソーイチ君?」
後ろから声がかかる。振り返ると紅色の髪をきれいに伸ばした人が、左腕を庇うように歩いてくる姿が見えた。
「ミラさん! 無事でしたか!」
俺は急いでミラさんに駆け寄った。なんとかな、と返すミラさんの左腕は力なくブランと垂れ下がっていた。
「ミラさん……その腕……!」
「ああ、着地の時にヘマをした。だが、問題ない。動けるよ」
俺は急いでギブスと包帯を錬成し、応急処置を行った。
弔葬部隊も医療部隊からある程度の応急処置は教わっている。
医療部隊が機能できなくなった時の為にある程度の訓練は受けていた。
「ありがとう。さすが器用だな」
「ミラさん、他のみんなは……!」
「周辺にはいない。みんな恐らく上にいるだろうな」
ミラさんは錬金器具と取り出し、上空を見上げた。
恐らく、錬脈回路に反応するセンサーだろう。画面はX、Y、Z軸が映し出されている。
現在地の平面には反応がなく、上空に反応が出てるのを見ると、この裂け目に落ちたのは俺達だけのようだ。
「とにかくここから脱出しよう。風の力で少しずつよじ登る。君は私に捕まってくれ」
風の力で体重を支え、軽くなることで高所によじ登る技術だ。
風の力で空を飛ぶことは非常に高度な技術らしく、よほど空気の元素と相性が良くない限りできないそうだ。
俺一人なら可能だけど、ミラさんが見てる前では使えない。
……でもそんなこと言ってる場合か?
この地殻変動染みた現象は明らかに尋常じゃない。
地上がどうなっているかわかったもんじゃないんだ。助けを求めている仲間がいるかもしれないんだぞ? それに現在進行形で街が襲われているんだ。
すぐにでも地上にかけつけてみんなを助けなきゃいけないんじゃないか?
自分かわいさで利己的な行動を取っていては助けられる命も助からないんじゃないか?
そうだ、そうだよ。やるべきなんだ。
今はリスクをおかしてでも最善の行動を――
「危ない!!」
突然ミラさんが俺を突き飛ばした。
咄嗟のことに俺は反応できず、尻もちをついてしまった。
「ミラさん、何を――」
目の前に嫌なほどに赤い液体が飛び散る。
直後に俺が見た光景は巨大な爪を持った怪人と、鮮血に塗れ、膝をつくミラさんの姿だった。
第33話、いかがだったでしょうか。
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