第28話 宣誓の儀式
俺達は正式な連合の隊員となるべく、儀式の間で宣誓に入る。
場にいるのは俺達第七師団と、共に戦った第三師団の人たち、なんか偉そうな人たちと一部の職員だった。
それと通信用の錬金術で、連合国の偉い人たちと繋げられていた。
いくつかの儀式を行い、宣誓に入る。
内容は簡単に言えば、命を尽くして戦いますみたいなことだ。
「それでは最後に、元素確認を行います」
儀式を進行していた神父さんみたいな恰好をした人が、手を模した道具と水晶のような丸い透明な球を持ってきた。
「手をこの錬金器具に重ねることで、錬脈回路と接続し、どの元素と相性がいいかを水晶で映し出すことができます」
なるほど。元素との相性診断、ということか。
ひよりが前に言ってたな。元素と相性があるって。
「まずはシオン・ピカールさん、手を」
シオンはこくりと頷き、手形にてのひらをのせる。
水晶は四色に強く光だし、周囲がざわめき出した。
「これは……全元素に強い反応を示している……それにこの光の強さは一体……!?」
「全元素まんべんなく使えるのであれば、回復術の才能も……!?」
「いや待て! あの光り方はなんだ!? あそこまでの反応、師団長クラスでも目にかかれないぞ!?」
「ふむ、素晴らしい。歓迎しますよシオン・ピカール。ゆくゆくは我ら錬金連合国の専属錬金術師として迎え入れる日も来るだろう」
はっはっは。どうだシオンはすごいだろ。
やっぱりシオンの才能はとても稀有なものらしく、周りの反応もとても大きかった。
「お見事です。シオン・ピカール。あなたは私が見込んだ通り大変希少な才能を持つ錬金術士です。すぐにでも私とセッションをしましょう……」
ざわめきのなかにはリオさんの声もあった。
ていうかセッションってなんなんだろう……。
こほん、と咳ばらいをして神父さんは進行を続けた。
「大変すばらしい結果となりました。次にソーイチ・オトギリさん、手を」
次は俺の番か! てのひらをズボンで拭って手形にのせた。
シン……とその場が静まり返った。
……よく考えたら俺って元素と相性が全くよくないから水晶に映し出せないんじゃないか?
「ど、どういうことだ? 水晶に反応が全くないぞ!?」
「こんな事態は今までにないぞ!?」
「器具の故障なんじゃないか?」
周りもどよめき出した。やっぱこうなったかー。なんか嫌な予感はしてたんだよな。
神父さんの指示により、錬金器具の検査が入った。
異常がないことを確認し、念のためシオンにもう一回手をかざしてもらう。
先ほどと同じように水晶は強く光った。
「器具に異常はない……となればやはりあの男には四元素が使えない?」
「バカな! そんな人間見たことがないぞ!」
「錬金術の使えないものを錬金連合師団に迎え入れるとは、どういうつもりかねミラ師団長」
ま、まずい、ミラさんにまで飛び火が行った。ミラさんに迷惑をかけてしまう…!
ミラさんは平気な様子で言葉を返す。
「お言葉ですが、彼は錬金術が使えます。弔葬部隊と共に錬金術を用いて弔いの儀式を遂行しておりました」
「ならばその錬金術を見せてもらおうか」
「もちろん。ソーイチ君」
ミラさんに促されて、俺はこの広い舞台で錬金術のお披露目をすることになった。
とはいえ、戦いに使用するような、出力の高い術を使うわけにはいかない。
ここは控えめにいこう。
俺はてのひらから小さな火の玉をボウッと出して見せた。
「火の錬金術だ……」
「出力は低いが、確かに四元素を使っているように見える……」
「だが、器具に異常はない。あの者は確かに火の元素を使えないはずだ」
「ならどうやって火を出しているというのだ」
再びざわめきだすギャラリー。偉そうな人たちは神妙な顔で困惑していた。
「それでは、念のため錬脈回路を確認させていただきます」
神父さんは俺の手を取り、自分の手を合わせた。
この人、回路師も兼ねているのか。
すると――
「な……なんだ!……この回路と生命力は……!」
神父さんが戦慄し、顔には脂汗が滲んでいた。
「なんだ!?」
「どうしたというのだ!?」
周りがどよめく中、神父さんは静かに口を開いた。
「…………常軌を逸脱しているとしか思えない程の生命力と、この世のものではないかのような強靭な錬脈回路を持ち合わせております……」
再びシン……と場が静まり返る。静寂は十秒ほど続き、誰かが口を開いた。
「三……原質……」
全員が一斉に発した者へと視線を向ける。
この施設の重役らしき人が何かを思慮した末、再び口を開いた。
「我々の錬脈回路に含まれている三原質とマナに浮かぶ四元素が結びつき、従来の錬金術を作り出している。四元素と結びつくことによって今のパフォーマンスを発揮できるのだ。もし、回路と生命力のみで錬成しても、せいぜい1mm程度の矮小な物しか作れない。それが一般的な三原質の錬金術だ。……しかしもし、大量の生命力と強靭すぎる錬脈回路で、三原質の錬成を行ったら、あるいは……」
理論上不可能ではない、と重役が答えた。
前代未聞だが、と付け加えた。
誰もが口を開くことができないまま、俺達の入隊の儀式は幕を閉じた。
◇◇◇◇◇
「ソーイチ君マジ何者ー??」
バンビが目をまん丸くして俺の顔を覗き込む。
「まさか君の錬金術が三原質のみで構成されているとは……驚いたな」
ミラさんも顎に手を当てて関心を示していた。
「大変興味深い……。あなたを侮ってました。その稀有な錬金術をもっと見せてください」
リノさんも俺の手をとって、てのひらをまじまじと見つめる。
……この人結構ぐいぐい来るな!
「確かにソーイチクンから錬金術教わっても全然しっくりこなかったかも。そもそも錬成の仕方が全然違うんだもんね。そりゃそーだわ」
「しかし惜しいな。もし一つでも相性のいい元素があれば、君は歴史を揺るがす錬金術師になっていただろう。それくらい君の回路は特殊だ」
「はは、それは俺も思ってました」
ミラさんの言うことはもっともだ。
俺自身、錬金術始めたての頃はそう思ってたんだから。
「改めておめでとう、ソーイチ君、シオン君。君達は晴れて第七師団の正式な仲間となった。これからもよろしく頼む」
「はい!」
そうだ。これで俺達も仮登録から卒業だ。
士降として戦っていくのもだけど、弔葬部隊の仕事もこれからこなしていくんだ。
「私はこれから会議がある。それぞれ宿に戻って体を休めるといい」
今回は隊員全員分の宿が取れている。流石は国一番の都市だ。宿泊施設の数が違う。
一次解散となり、各員自由時間となった。
◇◇◇◇◇
「さて、どうするかな」
疲れもなく元気ピンピン有り余ってる俺は、宿に戻らず街をぶらついていた。
有事の際は持たされた通信機器で呼び出されるため、隊員全員が同じところに固まっている必要はない。
遠くに行かなければこうやって街をほっつき歩いていても文句は言われないのだ。
この都市の雰囲気はヒスイ村やハサの町とは違う。かなり都会的な景観となっている。
蒸気機関車が発展しており、いたるところに線路が張り巡らされていた。
建物も美しい鉱石のような硬い材質で出来ており、煌びやかな雰囲気すら感じた。
ていうのも当然か。国一番の都市なんだし。
……いい街並みだ。みんなが思い思いの幸せな時間を過ごしている。
子供たちの笑い声も聞こえる。あ、あれ美味しそうだな。なんだか腹減ってきた。
やっぱまずはどっかで名物でも食べに行こっかな。
らーめんとかってこの世界にあるのかな、などと考えていたら首がキュッと締められて後ろに引っ張られる。
なんだなんだ? 人さらいか? 路地裏に連れ込まれたぞ?
何者かと俺を連れ込んだ張本人のツラを拝むために振り返る。
するとそこにいたのは――
「よう糞尿野郎。さっきぶりだな」
先ほど揉めた第十一師団の輩隊員だった。
……なんで五人に増えてるんだよ。
第28話、いかがだったでしょうか。
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