第26話 副団長は錬金マニア
土の国中央にある最重要都市、グラニデ。
そこに辿り着いた俺たち第七師団は、錬金連合軍土の国支部が所有する最も大きな建造物に立ち入った。
トニックさんとはこの建物の前で別れた。近くにいるとのことだが、用事があるらしい。
ここで俺とシオンの正式な入隊手続きが行われるらしい。今はまだ仮登録なのだ。
中へ進んでいくと、背の低い金髪の女の子が率いる集団が目に入った。
金髪の子は十三か十四くらいの年齢だろうか?
ずいぶん若い子も入隊してるんだなあ。
それとも学生さんかな? 将来、連合に所属するために今いろいろ学んでるとか?
その女の子がミラさんに敬礼をすると、ミラさんもそれを返した。
「ご苦労。息災か、リノ」
「問題ありません。こちらは死者ゼロです。師団長」
リノと呼ばれた女の子は俺に目を向ける。
察したミラさんは彼女に俺たちを紹介する。
「こちらは新しく弔葬部隊に配属されたソーイチ・オトギリ君、そして彼女が医療部隊配属のシオン・ピカール君だ。二人とも我々の新しい仲間だ。仲良くしてやってくれ」
「ソーイチ・オトギリです!よろしくお願いします」
俺は深々と頭を下げる。
どうやら学生さんではないらしい。
「先に言っておくが、シオン君は訳あって喋ることができないんだ」
シオンもぺこりと頭を下げた。
「紹介しよう。彼女はリノ・クノケロス。第七師団副団長だ」
副団長!? この中学生くらいの女の子が!?
「そうは見えないって顔をしてるな。気持ちはわかるが、リノは全師団でも屈指の武闘派だ。単純な戦闘力なら私よりも高い」
うそだろ!? こんな小さな女の子がミラさんより強いなんて!
「……疑ってますね?」
リノさんは鋭い眼光で俺を睨む。
「いやっ、そんな……」
「……」
じとーっとした目つきで見つめられる。
か、完全に見透かされている。視線が痛い……!
「す、すみません......」
この人に嘘は通用しない。素直に謝っておこう。
「別に怒ってません。慣れているので」
リノさんはプイッとそっぽを向いた。
怒らせちゃった……ほとぼりが冷めたらあとで謝っとこ。
どうやら錬金術師に年齢は関係ないらしい。
まぁ、錬脈回路の強度とか生命力の量とかは才能が大きいだろうからなぁ。
リノさんもそのどちらか、あるいは両方が優れているのだろう。
「……あなた」
リノさんはシオンに近づいて見上げるように目を合わせた。
「とても美しい錬金術を使いますね」
そう言ってシオンの手を取った。
「手を見ればわかります。あなたはとても繊細に元素を扱っている。回復術をお使いですね? 答えなくともわかります。わかっていますから」
そう言って質問攻めをしながら自己完結をしていた。
シオンも困惑している。
「ミラさん、もしかして彼女もマナが見えるタイプの人間だったりするんですか?」
「いや、リノはそういうのじゃない。何というか、錬金術マニアなんだよ彼女は。わかる人にはわかると言うやつだな」
なるほど、好きこそ上手なれ、というものか。
シオンがマナや元素が見えていると知ったらどういう反応をするのだろうか。
リノさんの気迫に気圧されて、シオンが錬金術で氷のバリアを張った。
おそらく心の壁だ。
しかしそれは悪手だ。実力の開示、リノさんの追求は加速する。
「美しい。薄氷が幾重にも重なって層を作り出している。ただ強固にするのではなく、あえて脆くすることでそれを何枚も重ねて衝撃を和らげる効果が期待できます。すごいです。何より美しい。どうでしょう? 私と合わせをやってみませんか? 私の生命力とあなたの緻密な元素操作が合わされば更なる高みへと――」
「リノターーーーーーーーン!!!」
第三勢力、リノさんに横から抱きつく者ココにあり。
「バンビ……あなたですか」
そう、バンビだ。金髪のギャルが金髪の中学生に抱きついて頬擦りしている。
何やってんだ。
「ひっさしぶり! リノタン元気してた? お姉ちゃんがいなくて寂しかった? 大丈夫! バンビココニイル。バンビモウリノタンカラハナレナイ」
「離してください……!」
お姉ちゃん? お姉ちゃんって言ったか?
「ミラさん、バンビとリノさんは姉妹なんですか!? ……はっ! そういえば髪の毛の色が同じだ!」
「いや、正確にはいとこなんだ。ウラリスとクノケロスは密接な関係があってな」
「……もしかしてバンビって結構いいとこの出だったりします?」
「まぁ、上流階級の出ではあるな」
はー! バンビってお嬢様だったのか!
普段の言動からは想像つかないな!
どうしてこうなったんだ?
「あれっシオンちゃんじゃん。チーッスお疲れ♪」
バンビの軽すぎる挨拶にシオンはぺこりとお辞儀をして返した。
「バンビ、あなたは仮にも一つの部隊の副長なのですからもう少し慎みを持ってください。私が恥ずかしいんですから」
「慎み? うん! 持ってる持ってる! はっきり言ってめっちゃ慎ましいし私! 昨日だってまだいける! って思ってたけどおかわり我慢したから慎ましさの化身? って感じで!」
「あなたは慎ましいのハードル設定が間違ってます……」
ミラさんは苦笑して二人を見守っている。俺の知らないところで何度も繰り広げられていたんだろうなぁ。
「とにかく! しばらくは一緒なんだよね? じゃあ一緒にごはん――」
「おいおいくせーっと思ったら糞尿部隊がいるじゃねーか!」
粉女舞台? なんだって?
振り返るとそこには、師団制服を着崩した、いか~にもな輩達がいた。
第26話、いかがだったでしょうか。
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