表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/132

エルフ、慰める。


目玉焼きと厚切りのベーコンにパンという朝食のような夕食を、なんとか綺麗にしたテーブルで食べるとラヴィさんの目が輝いた。



「‥美味い!子供なのにすごいな」

「逆に私はラヴィさんが今まで料理も掃除も洗濯もせず、どうやって生きていたのか気になります」

「今回はたまたまだ‥。それに以前は城でお抱えの魔法使いとして仕事をしていたから、身の回りの事は、全部城の者がやっててくれて‥」



目をちょっと横に逸らしつつ綺麗な顔で目玉焼きを口に運ぶラヴィさん。

‥こんなにイケメンなのに残念な人だ。


「明日もお片付けしましょうね」

「‥なんでそんな可哀想なものを見るような目で俺を見る」

「いや、どっちかというと不憫だなぁって‥」

「日本人は奥ゆかしい性格じゃないのか!?」

「だからそれいつの時代ですか‥」


実際は日本人は奥ゆかしいとは思うよ。

最近はちょっと弾け過ぎているのも一定数いるけど。



「‥私はうちの親に小さい頃から一人でも生きていけるようにって、色々仕込まれたんですよ。掃除とか洗濯とか、片付けとか料理も。キャンプにもよく連れていってもらって、野宿もよくしたなぁ〜」

「野宿!??」

「こっちではしないんですか?騎士さん達、もう一晩森にいるって言ってましたよね」

「‥野宿なんて虫が出るだろ」

「っへ?」



虫苦手なの??

驚いてまじまじとラヴィさんを見つめると、拗ねたように顔を背けた。


「この家には、魔法で虫が生まれないようにしてある。だからどんなに汚れても虫はいない」

「‥魔法の無駄遣いでは?」

「お前は一人で虫と戦えるのか?子供なのに!」

「‥少なくともラヴィさんよりは」


うんざりした顔のラヴィさんを横目に、大きな口を開けて目玉焼きにかじりつくとベーコンの塩気が上手いこと染み渡っていて丁度いい味付けになっている。美味しい。



「そうだ!それよかラヴィさん、異変があったって連絡来たんですよね?どの辺ですか?ここから近いんですか?」

「その前に!ガチャだ!ガチャについて教えろ!」

「あ、そうだった」

「まったく‥、掃除に片付けに余計な時間を使って‥」

「じゃあ随時お片付けしておいて下さいよ。大人なんだから」



ブスッとするラヴィさんに私は速攻で言い返してから、首に掛けていたペンダントになったガチャ機を外し、「ガチャ回す」と呟くと、ポンと元の大きさに戻った。しかし、回すツマミの所にはでかでかと紙で、



『明日まで使えません』



と、ご丁寧に書いてある‥。

中を見ると赤い玉の他に緑や黄色の丸い玉が入っている。

‥これ、随時補充されてる感じかな。減った様子もないし、増えた様子もない。ともかくそれをテーブルの真ん中にドンと置くと、ラヴィさんがキラキラした瞳でガチャ機を見回した。



「これは一体何なんだ?一体何に使うんだ?」

「‥普通なら、おもちゃが入ってるんです。その時だけの特典とか?」

「特典‥。おもちゃを何故回して取るんだ?」

「ワクワクするんですよ。何かを選んで買えるのも楽しいけど、何が出るかなって期待しながら買うのが楽しくて、」



そう、そんな楽しい日常を過ごす予定だったのだ。



それなのに私が「当たり」を引いてしまったばっかりに、突然異世界に送られて、どこにあるかもわからない鍵を探さなくてはいけなくて、それが見つかるまでは帰れなくて‥。


帰れない。


不意に急に変わってしまった日常に、目が潤み始める。



「‥‥楽しかったのに、ふっ、ふぇっ‥」

「な、泣くな!ああ、いや、泣くのも無理はないが‥」



ラヴィさんは慌てて綺麗に洗ったタオルを私に渡すと、横に椅子ごと移動してきて背中をそっと摩ってくれた。



「‥不安だろうけど、大丈夫だ」

「うう〜〜〜〜!!掃除も片付けも料理も洗濯もできないのに‥」

「し、仕方ないだろう!少しづつ頑張る!俺は、大人だからな‥」

「‥約束ですよ」

「わかった!わかったから、その、今日はゆっくり休め。さ、皿はちゃんと洗うから」

「それは当たり前なんですけど‥」



ずずっと鼻を啜って涙目でラヴィさんを睨むと、ラヴィさんは何とも言えない顔をして私の頭を大きな手でガシガシと撫でた。


「‥‥本当に、泣かれるとどうしたらいいかわからん」

「今みたいにもうちょっと優しく頭を撫でて下さい」

「こ、こうか?」


そっとラヴィさんが私の頭を撫でて、私の顔をちらりと見つめた。

‥なんかこの人、不器用っぽいけど優しいんだろうな。ちょっと色々ダメな部分が多いけど。そう思ったら、体から力がちょっと抜けて、少しだけ気が楽になった。



私もちらっとラヴィさんを見て、



「‥‥ラヴィさん、ありがとうございます」



と、お礼を言ったらラヴィさんは目を丸くしたかと思うと、みるみる顔を真っ赤にさせ、「こ、子供は子供らしく甘えてろ!!」と言ってまた頭をガシガシと撫でられた。エルフ族って可愛いんだな。




ツンツンしたエルフが大好物なんですが、何故か

私が書くと全然違うタイプになってしまう‥。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ