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穢れとお化け。


大きく分厚い木のドアをそっと開けて顔を出すと廊下が見えて、吹き抜けの階段の上にある窓から光が差して見えた。



シンと静かな廊下を見る限り、お化けもドラゴンもいなそうだけど鍵も見当たらない。



ひとまずはこの屋敷を出ることを目標にしつつ、鍵を探そう。

万が一ここが例の別荘で、仕事でやって来たラヴィさんとこの屋敷で鉢合わせしたら、それはそれで大目玉を食らって音読50回では済まされないと思うし‥。



別の意味でゾッとしたけれど、今はここから脱出だ私!



キョロキョロと周囲を見回してから、ドアから出た。

カーテンのない窓から差し込む光のお陰で部屋よりは閉塞感はないかも。フカフカの絨毯が敷かされた廊下を歩くと、不意にひやりとした空気が足元を流れて体がビクッと跳ねた。



「え‥、なんか、寒い?」



さっきまでちょっと蒸し暑い空気だったのに、廊下に出た途端寒いってなんでだろう。首を傾げながらカーテンが締め切られている所は遠慮なく開け放ち、外を見れば汗ばみそうな天気なのに、なんだかどんどん寒くなってる‥ような。


外の天気とは正反対に部屋はどんどん寒くなり、それどころかどんどん部屋が窓を開けているのに暗くなっている気がする。


ちょ、ちょっと、これはお化けが出てきそうな雰囲気になってるぞ?


どうしよう。

以前遭難したら動かないのが鉄則ってラヴィさんに言われたけれど、ここは部屋へ戻るべきか?足を止めて、さっき出た部屋の扉の方を振り返ると、カーテンを開け放した廊下がいつの間にか真っ暗になってる。


「え‥、なんで」


驚いて呟いたその時、



「わーーーー!!!出たーーー!!!」



真横にあった扉から出てきた誰かに思い切り体当たりされ、ゴロゴロと一緒になって転がって廊下の柵に頭をぶつけた所でようやく止まった‥。


「い、いった〜〜〜!!」


頭を押さえながら体を起こすと、腕の中には長い青い髪を下ろし、乳白色の角が額に2本ある少年がいて、私は目を見開いた。



「つ、角!?」

「そんなのどうでもいい!!とにかく逃げろ!!」

「え、ええ?」



男の子がガバッと体を起こし、私の手首を掴んで廊下を迷いなく真っ直ぐに走り出し、いくつかの角を曲がると扉を開いて部屋へ入った。



息を切らせつつ周囲を見回すと、そこはカーテンが開かれていて本が沢山置いてある部屋だった‥。


「ここなら、大丈夫‥なはず」

「ちょ、ちょっと待って!?君、一人でここに入ってきたの?」

「色々あって。それより、お前なんでここにいる」

「えっと、突然ここに部屋が繋がって‥」

「え!?」

「え??」


男の子が足を止めてまじまじと私を見つめるので、私も見つめ返した。


よくよく見れば民族衣装っぽい格好をしていて、黒いチュニックには植物の刺繍がされ、金属の飾りも縫い付けられている。キリッとした金色のような色をした瞳がまた綺麗だ。うーん、この格好を見るにここいらの国の衣装ではないような‥。



「もしかして君も、どこか違う所からここへ来たの?」



私の言葉にその子は顔をギクリとさせた。

どうやらそうらしい。でも、その割りにはこの屋敷を知っているような足取りだったな。



「えーと、とりあえず私はヒロ。君は?」

「‥ナズ」

「ナズ君ね。よろしく。とりあえずなんでこの部屋は平気なの?」

「‥結界、してあるから」

「結界?!ナズ君魔法を使えるの?」

「‥石を使ってる」



そう言って扉の入り口を指差すと、そこには白い丸く磨かれた石が扉の両脇に置いてあった。


「でも、石、壊れそう」

「え?」


石をよくよく見るとヒビが入っていた。

もしかして、これって壊れるとマズイ‥のか?

私がナズ君をまじまじと見ると、ナズ君は自分の手首のブレスレットを指差した。



「これ、敵が来たら敵が怖いものを出してくれる」

「え」

「さっき、黒い影がいて‥それの怖いもの出したら、見たことない怖いもの出た」

「待って!!黒い影って、モヤモヤしてる感じ?」

「そう!あれ、なんだ?」

「‥もしかしたら「穢れ」かも」



私の言葉にナズ君が目を見開いた。


「あ、いや、でも、私も何度かしか見たことないんで確信は持てないけど‥。お化けの可能性もあるし」

「お化けない。あれ、確かにそれかもしれない」

「なんでそう思うの?」

「結界、今までここにいても割れた事なかった。あれは「危険」だと教えてくれるから‥」


ということは、「穢れ」の可能性が高いってこと?

なんてことだ!「鍵」がいるかもしれないと思ったら、「穢れ」もいるなんて‥。



「いや、やっぱり「鍵」がいるから「穢れ」が来たのかも?」

「鍵というと、金色のやつか?」

「そう!!知ってるの?」

「それが俺の国と、ここを繋げた」

「え、じゃあ、その鍵はどこにあるか知ってる?!」



私の言葉にナズ君は頷いて、



「さっきの部屋の中で飛んでた」

「一番最悪なパターンだ!!!」



思い切り頭を抱えて叫んでしまった‥。

神様、なんだってそんな動く鍵を落とすんだよ〜〜!!



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