不器用エルフと花束。
翌朝。
ちょっと眠そうなラヴィさんと朝食を食べていると、テーブルの上の白いお花が綺麗に咲いていて、それを見るだけで私は大変嬉しくてついニマニマしてしまう。
「‥朝から頬が垂れ下がりそうだぞ」
「いや〜、今日も綺麗に咲いていて嬉しいなって。でも切り花ってすぐ枯れちゃうから寂しいですよね」
ラヴィさんが焼いてくれたちょっと焦げたパンをかじりつつそう呟くと、ラヴィさんが白い花を見て、フンと鼻を鳴らした。
「そりゃ生きているものはいずれ枯れていく」
「それはそうですけど‥」
「ただ、この花は種が採れるから、それを植えればいい。そうしたら花を咲かせるだろ」
そう言って自分の焦がしたパンをかじって「焦げてる‥」と呟いたけど、本当にこの人は朝から不器用だな。小さく笑うと、すかさず「笑うな」って言ったけど笑っちゃうでしょ。嬉しいし、可愛いんだもん。
「じゃあこの花の種が採れたら、ラヴィさんの庭に植えてもいいですか?」
「‥勝手にしろ」
「やった!そしたら一緒に白い花見られますね」
「‥そうだな」
ラヴィさんが私をじとっと見てから焦げたパンの残りを口に放り込むと、「そろそろいくぞ」と言うので私も慌ててパンを口に放り込む。昨日はてんやわんやだったけど、今日は落ち着いてお花を売れるといいな‥。でも、お祭りだし今日は大変だろうなぁ〜〜。
「お祭りってどんな感じですかねぇ」
「普段食べられる物をわざと高く売ってるわ、うるさいだけのものだな」
「なんでそんな悪意に満ち溢れた言い方をするんですか」
ラヴィさんを睨みつつ、一緒にお皿を洗って片付けると、玄関の扉を叩く音がする。
「誰だ、こんな朝早く‥」
しかめっ面したラヴィさんが扉を開くと、そこには花束を抱えたオーリさんとチェルナ君が立っている。
「あれ!?オーリさんにチェルナ君!?」
「おはようございます!あの、これ‥」
「え、私に??」
腕に抱えきれないくらいの花束をオーリさんに手渡され、目を丸くすると赤い顔のオーリさんが私を見て、
「あの、今日はきっと忙しくて渡す暇がないと思ったので‥」
「ええ?だからってこんな朝早く持ってきてくれたんですか?」
「はい。あと、お祭り良かったら一緒に行かないかとお誘いもしたくて‥」
ちょっと猫背気味の背中がさらに丸まりつつ、誘ってくれたオーリさんに嬉しくなる。そんなの一緒に行くに決まってるじゃないか!ニコッと笑って、
「もちろ‥「祭りか、久々に行ってみるか」
「え?ラヴィさんさっきうるさいって‥」
「長く行ってなかったら、たまにはな」
うーん、でもオーリさんは今私を誘ってくれたような気もするんだけど‥。
するとオーリさんの隣にいたチェルナ君が私をちらっと見て、
「先生は僕が面倒みるよ」
「こら!!!チェルナ!!そこは一緒に行こうだろうが!」
「‥先生、言葉が圧倒的に足りてないです」
「いや、そ、そんなことはないぞ?」
オロオロとしながらも私と花束をチラチラと見ているラヴィさん。
‥この人、もしやお祭りに興味があったけど尤もらしい事を言って一人だと怖くて行けなかったのかな。
「‥ラヴィさん、お祭りで奢ってくれます?」
「は?」
「いや、今まで誰にも誘われなかったから寂しいんですよね?一緒に回りますから、その代わりに色々奢って下さい。ご存知の通り私、子供なんで」
「はぁああああ!??違うぞ!?誘われなかったことなどないぞ!た、ただ、確かにお前は子供だからな!保護者は必要だな!!」
赤い顔で尤もらしいことを言ったけど、可哀想に‥誰にも誘われた事ないんだな。慈愛の瞳で見つめたのに「誤解してるぞ!!」と叫んだけれど、それは無理があるな〜〜。オーリさんを見上げ、
「保護者同伴ですけど、いいですかね?でも、目一杯奢って貰えますよ?」
「‥‥そうですね。次回もありますし、今回はそれで」
「次回ってなんだ!!次回って!!!」
「先生〜〜、言葉が足りないですってば〜〜」
ラヴィさんがすかさずチェルナ君に「そんなことはない!」と叫ぶと、オーリさんは私を見て太陽のように微笑む。
「ヒロさん今日もお願いしますね」
「はい!あ、お花を花瓶に入れてくるんで、そしたら一緒に行きましょう!ラヴィさんは一人でギルドに行けますか?」
念の為ラヴィさんに聞いたら、ジロッと睨み、
「送るに決まってるだろ!お前は子供なんだから!」
と、雷を落とすのだった。
‥本当にこのエルフは素直じゃないな〜〜。
不器用はいいですよね‥
不器用はいい‥
(大事な事なので2回言いました)




