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鍵と穢れと祝福と。


岸へ辿り着き、二人でゼイゼイ息を切らせながら地面に倒れこむと、私を見るなり驚いた顔をした妖精さん。



「こ、小人?」

「‥いえ、こんなサイズですけど人間です。ちなみに17歳です」

「17歳!?僕より年上?!」

「えっと、あなたは?」

「あ、も、申し遅れました。巨人族のハーフでオーリと言います。16歳です。その、助けて頂いてありがとうございます!」



大きな体でペコペコと頭を下げる姿は、妖精??って感じだ。

薄い茶色の髪が水で濡れてしっとりしてるけど、顎くらいまである長さの髪を耳にかけると、優しそうな茶色の目とそばかすの散った顔がよく見えた。


ともかく助かって良かった。私はニコッと笑って、


「私は人間のヒロと言います。オーリさん、怪我は?」

「怪我は、大丈夫です。ぼく、丈夫なんで」

「そっか、良かった〜〜」


ほっと息を吐いて、ぐるっと周りを見回した。

どこか薄っすら明るいけれど、水路だから?というかここから地上へ戻れるんだろうか‥。



「あの、どこからか地上へ戻れますか?」

「は、はい。でも、水がまだ暴れているみたいなので大丈夫かな‥」

「確かに地上に出てきたのは、蛇みたいになって暴れてましたね」

「地上に?!それはやっぱりおかしいですね‥」



おかしい‥。

ってことは、これは「異変」なのでは?

ともかく地上に戻ってラヴィさんに相談した方が良さそうだな。


「あのオーリさん、どうにかして地上へまず戻りたいんですけど」


そう言いかけた途端、水がざばっと動いた気配がした。



「え」



水の中に黒い‥人のような塊が出てきた。


なにあれ‥、魔物?

思わず身構えると、ものすごい勢いで体が宙に浮いた。


「え?」


目を丸くして、横を見るとオーリさんが私を抱き上げて走っているではないか!そんな細い体なのにすごい力だな?驚いていると、オーリさんの顔が真っ青だ。



「オーリさん、今の真っ黒なやつって‥」

「け、「穢れ」です!!!」

「え、穢れ???」



穢れって、この間窃盗犯に入ってたやつ?

あれってあんな風に出てくるんだ。

オーリさんの後ろから水の中から出てきた「穢れ」を見ると、黒い人のような形をした塊が何かをキョロキョロと探しているようだ‥。


「何かを探してる?」


もっとよく目を凝らして「穢れ」を見ようとすると、バチャバチャと水音が響くトンネルの中を走っていく音に混じって、何か金属音のような音が聞こえた。



「う!??なんだこの音‥」

「オーリさん、聞こえるの?」

「う、ん‥、なんかすごい音が聞こえる!」



そう言った途端、金色の光がパッと水中に現れた。



「あれ‥「鍵」だ!!!」

「え、鍵?」



フヨフヨと水中の中を泳ぐように漂う鍵を見つけて、私はオーリさんの体からぴょんと飛び降りた。


「ひ、ヒロさん!??」

「ごめん!あの鍵を捕まえなきゃなの!」

「でも水が暴れてるし、穢れが‥」


オーリさんがオロオロした顔で、私と鍵と後ろにいる「穢れ」を見ている。



「オーリさんは私に構わず逃げて!それで地上に行って、エルフのラヴィさんを呼んできて!私は鍵を捕まえる!」

「え、ちょっと、待って!!」



ザブンと水の中へ潜って、腕をかいてみるけれどさっきより動けてない?でもまずは鍵を捕まえなくちゃ!ザブザブと水の中をかき分け、金色の鍵に手を伸ばす。



「あと少しっ‥」



もう少しで手が触れられそうな距離になったその時、水が私を持ち上げ、水路へ叩き落とされそうになる。



「わ、わぁああああ!!!」

『風よ!体を受け止めろ!!』



ビュッとものすごい勢いの風が私の体を包んだかと思うと、ボンとマットの上に落ちたように地面に転がり落ちた。


「あれ‥」

「大丈夫ですか!ヒロさん」

「今のって‥」


体を起こして、オーリさんの後ろを見ると、全身びしょ濡れになって息を切らせたラヴィさんが般若の顔で立ってる!!



「このっ、大馬鹿が!!!怒り狂っている水の中へ入るとか死にたいのか!!」

「だって鍵が!!」

「鍵ぃ!??って、なんで「穢れ」がいるんだ!」

「あ、「穢れ」もついでにいまして‥」

「先に言え!!!」



ラヴィさんが私をジロッと睨んでから、手を差し出すのでその手を握ると、いつもはちょっとひんやりしているのにあったかい。‥もしかして探し回ってくれた?


チラッと顔を見上げると、顔は汗だくで赤くなってる。


なんだかそれだけなのに、心配してくれた事が痛いほどわかって、私はラヴィさんの手を握る力を込めた。



「‥ラヴィさん、怪我は大丈夫なんですか?」

「ええい!子供はまず自分のことを心配しろ!「鍵」も大事だが、まずは「穢れ」だ!恐らく「穢れ」が水の中に入った事で、水達が怒っているんだろう」

「な、なるほど‥」

「俺一人で対処できるかわからないが‥」

「え!?そうなんですか?」

「あんなでかい実体を持ってる奴は初めてなんだよ!」



ラヴィさんが叫ぶと、オーリさんがおずおずと手を挙げ、



「あの、僕も「祝福」持ちですけど‥」



と、驚きの申告をしてくれた。




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