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妖精と水路。


ラヴィさんが私の為にお茶を買ってくれたあの日から早いもので1週間である。うららかな日差しを浴びたラヴィさんの植物達が風に揺れ、洗い立ての白いカーテンが綺麗に波打つ。



つまり‥、


「なーーーーーーんにもない!!」

「はいはい、音読音読」

「嫌だー!!そろそろ異変が起きてくれ!!」

「物騒なことを言うな。平和が一番だぞ」

「ううう、確かにそうなんだけど‥」


テーブルに顔だけ乗せ、横で分厚い本をめくって熱心に読んでいるラヴィさんを見上げる。今日も見惚れるほどイケメンである。‥朝食に人参の酢漬けを出したら嫌そうな顔をしてたけど。



「もう少ししたら買い物がてらギルドに行きます」

「子供が一人で行くな」

「チェルナ君はここまで一人で来てるじゃないですか」

「あいつは魔法が使える。お前は使えない」

「ガチャが使えるもーん」

「神から賜ったものを簡単に使うな」



ガチャを回すと誰よりも顔を輝かせるくせに〜〜。

ぷうっとわかりやすく顔を膨れさせると、ラヴィさんは私を見て目を丸くし、「‥この章を読んだら買い物がてらギルドに行く」と約束してくれた。よしよし。



ラヴィさんが本を読んでいる間に、ささっと掃除をして部屋の中を見渡す。



いや〜〜、あれだけ来た時はものすごい汚部屋だったのに随分と綺麗になった!そこまで家事力ある方じゃないと思ってたけど、それなりに備わっていたらしい。父一人、子一人で育ったけどお父さんありがとう。お陰でヒロはたくましく育ってます。



「おい、終わったから行くぞ」

「はーい」



のっそりとラヴィさんがやってきて、玄関へ向かうとラヴィさんが慌てて私の手を握った。


「だから!お前はなんで異世界から来たにも関わらず警戒せず外へ出る!」

「え、ラヴィさんいるし大丈夫でしょ?」

「!だ、だ、だから、そんな信用されても‥」


ゴニョゴニョと赤い顔で話すけれど、後半は何も聞こえない。

この人、女性に耐性がないってたけど128歳なのに女性と関わってこないまま生きてきたのかな?というか、この人いいように女性に騙されたりしないのかな‥。



「おい、なんだその目は」

「ラヴィさんがいいように女性に騙されやしないか心配で‥」

「お前じゃないから心配するな」

「心配しているのに酷くないですか?」

「お前のように警戒心がない訳じゃない」

「私だって人並みにありますよ!」



手を繋ぎながらそんな風に話すのもいつもの光景になりつつある。

私の順応力のお陰か、さり気なく私が寂しくならないように気を遣ってくれてるラヴィさんの優しさのお陰か‥。私は優しいので両方って事にしておこう。


と、ギルドまで近付くとギルドの前が何やら騒がしい。


「何かあったんですかね?」

「‥言っておくが、そんな嬉しそうな顔をしてギルドへ入るなよ?」

「大丈夫ですよ、ちゃんと気をつけますよ」


そう言いつつキリッとした顔にすると、ラヴィさんが口をもごもごと動かしたと思うと、自分もキリッとした顔をする。‥エルフってまだ何を考えてるかよくわかんない〜。


すると、ギルドの前で指示をしていた一人の男性がこちらを見ると駆け寄ってきた。



「ラヴィさん!丁度いいところに‥」

「どうかしたのか?」

「水路工事の現場で事故が起きて、妖精が閉じ込められてしまったんです」


「帰るぞ」


「こら!!ラヴィさん帰らない!!」



慌ててラヴィさんの手をギュッと自分の方へ引っ張った。

差別は良くないって思ってるくせに妖精は別腹なんてダメでしょ!‥確かに前回はちょっと大変だったけど。


「ラヴィさん、困ってる人がいたらどんな種族でも助けてあげましょうよ」

「‥わ、わかった、わかったから、その、」


赤い顔で迫る私から後ずさろうとするラヴィさんに私は更にずいっと顔を近付けると、ラヴィさんはそれはもう耳まで真っ赤である。よし、あと一押し!



「一緒に行くから!ガチャも必要があれば回すから助けに行きましょう!」

「〜〜〜〜うう、わかった!わかったから離れろ!」

「よし、言質は取りましたからね」



すっと後ろへ引くと、未だ真っ赤な顔のラヴィさんは私をジロッと睨んで、「とんだ妖精だ」と呟いたけど、顔は可愛いって事ですよね。わかってます。赤い顔で未だ私を睨みつつ、ギルドの人に場所を聞くラヴィさん。



「北の水路か‥、確か工事現場にあいつがいたろ」

「その奴が巻き込まれてしまったようで‥」



あいつ?

ラヴィさんを見上げると、大きくため息を吐いた。


「本当にお前が来てから色々起こる‥」

「1週間は平和だったじゃないですか」

「昨日、フライパンを燃やしたろ」

「ちょっと焦がしたと言って下さい」


油を多めに入れたのが良くなかったのはわかってるよ。


お互い料理だけはまだ精進あるのみだからな。

帰ったら料理を頑張る!と、話すとラヴィさんはまた大きくため息を吐いて、



「子供が一人でなんでもしようとしなくていい」



と、呟いた。‥うん、今日もなんていうか優しい、のか?




いつも読んで頂いてありがとうございます〜〜。

雨やら晴れやら体調崩しやすいのでお気を付けて〜〜。

(四十肩デビューでしょんぼり中‥(T_T))

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