神と仏と日本人。
山のようにでっかい熊、ブラッドベアーだっけ?
無事に騎士団に倒されたそうだ。ものすごいスピードで走って獲物を捕まえるらしいけど、ガチャがあって良かった。いや、そもそもこの世界に来なければ良かった話なんだけどね。
熊を倒した騎士さん達はもう一晩見回りをしてから帰るらしく、私とラヴィさんは先に街へ戻る事になったけど‥なんで??思わず首を傾げてラヴィさんを見ると、ジロッと睨まれた。なぜ毎回睨む。
「お前は行くあてはあるのか?」
「‥ないですね」
「鍵の場所はわかるのか?」
「‥わかりませんね」
「それでこれからどうしようと思ってたんだ?」
「そんなん私も知りませんよ!神様の放置っぷりに、神も仏もいないってこういう事か!って体験中ですよ!っていうか、いい加減泣いても許される状況ですよね?」
こっちは17歳の非力な乙女だってのに、この放置っぷり!
ガチャを回して頑張ってね!って神様、流石に私はクレームを入れたって許されると思うんです。ラヴィさんはもうあと3秒で泣いてやるっていう私を見て、慌てて手を前に突き出した。
「泣くな!泣かれても困る」
「‥そんな殺生な」
「‥お前を責めた訳じゃない」
「どう考えてもそう聞こえました」
「悪かった‥。お前が一番混乱しているだろうに。配慮に欠けてた」
「‥わかればいいんです」
ちょっと鼻を啜って、じとっとラヴィさんを睨むと「‥これだから人間は」と言うけれど、人間だもん。どうにもできません。
「‥俺は普段は街で占星術で占ったり、薬を作ってギルドに卸してるが傍「異世界人」について研究しているんだ」
「異世界人を‥。だからすぐわかったんですか?」
「お前にすでに何カ国語を使って話しかけたが、お前は全部それぞれ流暢に話した。それが証拠だ」
「へ?」
あのちょっとの会話でそんな事してたの?
驚いて目を丸くすると、ラヴィさんが私をジロッとまた睨む。
「‥‥お前の言っていた鍵とやらは、確かにあるんだろう。この国で、最近あちこち異変が起きている」
「異変?」
「突然湖ができたり、かと思うと山が形を変える。しかもそれが突然戻る」
「結構大事件ですね」
「今回も山の気温が変わって、熊が現れたしな」
「じゃあ、ここに鍵が?!」
「いや、さっき違う場所で異変が起きたと連絡が来た」
神様‥、なんでそんな移動可能な鍵を作ったんだよぉおお!!
痛み出しそうな頭を抑えると、ラヴィさんが慌てたようにオロオロした。
「と、とりあえず、ここにいても何も解決しない。俺の家は狭いが、人が一人増えるくらいは大丈夫だ。そこで過ごしながら鍵を探せばいい」
「え、いいんですか!?」
「‥‥ガチャというのを見せてくれれば。あとそっちの世界の話も知りたい」
あ、はい。
そうでしたね、異世界人について調べているって言ってたし。興味あるんだろうな‥。でも、今日のガチャはもう終わっちゃったんだよな〜。その辺はおいおい説明しておけばいいか。
「えーと、じゃあお世話になっても?」
「ああ。鍵が見つかるまでだぞ」
「はいはい。私も見つかったらすぐ帰りますよ‥」
そんな念を押さなくてもいいじゃないか。
そう思いつつ、ペコっと頭を下げて顔を上げると、ラヴィさんが驚いたような顔で私を真っ直ぐに見つめると、「頭を下げた‥と、いう事は日本人か?!」と、声を上げた。すっごいな、日本人よ。異世界で見分けがお辞儀らしいぞ。
「‥確かに日本人ですけど、」
「初めて見た!!なるほど年よりも幼い顔立ちをしている国民だと聞いたぞ!お前は、ええと、13歳くらいだろう?」
キラキラした顔で私に聞くラヴィさん。
「17歳ですね」
「え」
「17歳です」
「子供じゃないのか?!」
「‥確かに子供ですね。来年で成人ですけど」
「来年で成人!??」
驚いて声が裏返ったラヴィさんは私を見つめた。
確かに今日は白いパーカーにハーフパンツという軽装だけど、れっきとした17歳だぞ。
「‥‥子供を送る神のいる世界は、大丈夫なのか?」
「絶対大丈夫じゃないですね。そんな訳で申し訳ありませんがお世話になります」
もう一度頭を下げると「子供なのに‥」と言われた。
いや来年で成人だってば。
17歳‥エルフでも人間でも若いですよね(トオイメ)
懐かしいぜあの時の体力。カムバック代謝力。




