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サード、ガチャ!


ガチャンと軽快な音を立てて、緑色の丸いカプセルが出てきた。


と、それと同時に外にいるはずの黒いドラゴンがこちらへ向かって咆哮を上げ、思わず耳を抑えてしまう。ラヴィさんはガチャをキラキラした瞳で見ながら「ただの威嚇だ!安心しろ」と言うけれど、一体どこに自分の数倍もある大きなドラゴンに威嚇されて平気でいられる女子がいるのだ。



「ううっ、私の世界にはドラゴンなんかいないんですよ?」

「知っている!だが日本人には龍という生き物がいるんだろ?」

「それは架空の生き物です〜〜!!」



そう言いつつ、ドラゴンがドアから鋭い爪がある大きな手を伸ばすので、皆慌ててドアから逃げて反対の壁ギリギリに走っていく。ですよね!私もそうしたい!


パカッとカプセルを開けると、



中には腕時計が入っているだけだった。



「と、時計!??」

「なんだ?何の道具なんだ?」

「そんなワクワクした顔しないでください!!うう、できれば飛び道具が良かった」

「ドラゴンは硬い鱗を持っているからな。下手に傷つければ怒りを買うぞ?」

「今すでに怒ってる感じですけど?!!」



ドラゴンの鋭い爪がまるで床板をガリガリと鰹節でも削ってるの?ってくらい抉っていて怖い!震える手で腕時計をカプセルから出すと、ポンと大きくなったけど‥一体これをどう使えと?


と、腕時計をまじまじと見ると時計の秒針があるけど、なにも動いていない。



「壊れてる‥?」

「壊れている物が出てきたのか!?」

「いえ、なんていうか違和感があって‥」



時計の針は午前中で、多分今の時間を指しているのかもしれない。

でも動く気配は見られない。

横のつまみをちょっと右に回してみると、急にギャアギャアと騒いでいたドラゴンが巻き戻るように外へ行き、削り節のようになっていた床が綺麗になっている!!



「え」

「時間が、戻った!?」



ラヴィさんが驚いて、外を見てから私の腕時計を見た。


「もしかして、時間を巻き戻すことが可能なのかもしれん」

「こわっ!!あ、でも、そうしたら私は当たりを引かない所まで行ける?」

「原初の神がそんなことしないだろ」

「無慈悲な否定!!でも、私もそう思う‥。じゃあ、これ、どうすれば‥」

「もう少しだけ戻せるか?外へ出てドラゴンがこちらへ来ないようにする!」

「そんなことを?!」

「ほら行くぞ!!戻せ!!」


すっごい無茶いってる〜〜!!

針を慎重に戻すと、チェルナ君がカウンターにいて、私とラヴィさんはあっと声を上げたけれど、まずは外だ!ラヴィさんは私の手をしっかり握ると、



「絶対、手を離すなよ!!」

「は、はいい!!」



そう言って、綺麗なギルドのドアを勢いよく開いて外へ出ると‥、



街中の風景なんだけど、壁が大きくそびえ立っていて‥、それはまるで迷路のように入り組んでいた。



「迷路になってる!!」

「やはりか‥。しかも、これは他の土地に通じているな」

「他の土地???」

「ドラゴンが生息しているような土地と通じているんだ。だからドラゴンがここに来た」

「ってことは、それをどうにかしないとまたドラゴンが来るってことですか?」

「‥‥ドラゴンだけならいいんだが」



恐ろしいフラグを立てないで。

私は腕時計のつまみを回そうと、ラヴィさんの手をそっと離すと、慌ててラヴィさんが私の手を握った。


「だから!!手を離すな!危ないと言っただろう!」

「でもそうしないとツマミを回せないじゃないですか」

「そ、そうだった!だが、いいか?すぐに何かあれば手を‥」


そう言った途端、ズシン!!と地響きのような音がして、私とラヴィさんがその音のしたほうを見ると、さっきギルドに手を突っ込んできた黒い鱗をしたドラゴンがジロリと黄色の瞳で私達を見つめていて‥、



「逃げるぞ!!!!」

「はい!!!!!」



二人三脚だったら絶対に一位を取れるんじゃないかってくらいダッシュをすると、ドラゴンは私達を追いかけるようにズシン、ズシンと迫ってくる。なんでこっちへ来るんだ〜〜〜!!


「ラヴィさん!!攻撃!攻撃魔法ってないんですか!」

「あれだけデカいと長めの詠唱が必要なんだよなぁ」

「じゃあ、隠れて詠唱!!」

「だけど、迷路になってる場所でどうやって隠れろと!?」

「んぁああああ〜〜!!ツマミを回したいのに回せないしどうすればいいんだ!!」


二人で息の合った走りをしつつ、壁を曲がったそこは行き止まり。



「ぎゃあああああ!!!」

「仕方ない。飛ぶぞ!」

「え?」



ラヴィさんがそう言って私の手をグッと上に引っ張ると、ものすごい勢いで空中を10mは飛んで、壁の向こうへと着地した。


「すごい!!これで逃げればいいじゃないですか!」

「‥‥無理だ。これは一回しかできん」

「ええ〜〜!?」

「おえっ、浮遊感で気持ち悪い‥」


なるほど、ラヴィさんはジェットコースターが乗れないタイプか。



なにはともあれ、これでどうにかできる?!

私はもう一度時計のツマミをドキドキしながらぐるっと回してみた。




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