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ちぐはぐエルフと子供。


家事全般苦手で、お風呂と虫も嫌いな上に私を男子だと間違え、常に子供扱いするエルフ族のラヴィさん。鍵が見つかるまで家にいさせてもらう事になったけど‥。



今朝、起きたら黒焦げのパンがテーブルに置いてあって私は目を丸くした。


「えーと、これは?」

「ちょ、ちょっと焼き加減を間違えたんだ!」

「パンを黒焦げにできる魔法があるんですか?」

「うるさい!ちょっと本に夢中になっただけで‥」


本に夢中になるな。

家の中で火事を起こしたらどうするんだ。

まだ焼いてないパンがあったのでフライパンの上に置いて焼くと、ラヴィさんがハラハラした顔で私とパンを交互に見る。



「‥子供なのに大丈夫なのか?」

「子供でもパンくらい焼けますよ。昨日だってアヒージョ作ったじゃないですか」

「‥俺だってポトフを作れるぞ」

「何対抗してるんですか。あ、でも朝食べたらもう終わっちゃいますし、また何か作りますか」

「また作るのか!?」

「‥ラヴィさん毎日ご飯をお店で食べてたらお金すぐなくなっちゃいますよ」



私の言葉にラヴィさんがじとっと睨みつつ「ちゃんと金はある」と言ったけれど、本当か?


「昨日チェルナ君がお金を取りに来てって言ってたし、朝食食べたらお金を取りに行きましょうよ。パンもついでに買い足しておきたいし」

「‥人間は本当に忙しなく動くな」

「時は金なりですよ」

「なんだその言葉は!!お前の国の言葉か?意味は?」

「うわー、そうだった‥。研究してたんですね」


掻い摘んで説明しつつ、上手に焼けたパンとポトフをテーブルに置くとラヴィさんが悔しそうに湯気の立つ朝食を見て、「次こそは‥!」と呟いていたけど、まぁ子供に作らせるわけにはいかない!と朝食を作ってくれたその心意気は有難い。黒焦げのパンだったけど。



「今日はギルドへ行ったら、何かしら情報来てますかねぇ」

「どうだろうな。今思えば異変は不定期に起きてたしな」

「うう、なんで移動するんだ‥」



なんとも言えない顔でパンを食べると、ラヴィさんが考え込むようにじっとスープの表面を見つめる。


「ラヴィさん?」

「‥いや、鍵の移動する理由を考えていてな。何か法則性があるのか‥、それとも理由があるのかを考えていた。占星術で占えればいいんだが‥。神の持ち物だからな‥」


真剣なその表情に思わず目を丸くする。

そんな事パッと考えられるのすごいな。私なんて情報が来たらそこへ行けばいいやってくらいしか思ってなかった。



「‥ラヴィさんっておいくつなんですか?」

「は?」

「いや、大人だな〜〜と思って‥」

「大人‥」



私の言葉にラヴィさんが反芻するように言うと、


「俺は全然大人じゃない」

「え」

「ただ言っておくが子供ではないからな?年齢は確実にお前よりはずっと上だ」


胸を張って宣言された。

そっか‥、まぁとりあえず私よりは確実に上なのか。



「じゃあ、大人なラヴィさん。お皿を洗ってから行きましょうね」

「なんで毎回お皿をいちいち洗うんだ‥」

「綺麗なキッチンは気持ちいいですよ。っていうか、よくあんなキッチンで水の精霊に怒られませんでしたね」

「‥俺は精霊と仲が良いから」

「絶対呆れてたと思うんですけどねー」



ラヴィさんは「呆れてない!」とジトッと睨むように私を見たけど、じゃあ諦めてた‥かな。二人でお皿を洗って、家を出ると向かいの家ではお花に水をあげていた。うんうん、のどかな朝だ。



早速ギルドまで歩いて行くけれど、昨日歩いただけあって似た建物が多いけど少しずつ道も覚えていかないとなぁ。


「ここって、街並みが似てるから迷いそうですよね」


何の気なしにそう言ったら、ラヴィさんが慌てて私の手を急に握った。



「え?ラヴィさん??」

「子供はすぐ迷子になる」

「‥私は来年には成人ですけど」

「どう考えてもお前は子供だ」



至極真面目な顔で言われたけれど、長命なエルフなら確かに私はものすごく子供なんだろうな。うーん、ラヴィさん本当に幾つなんだろう。


しかし、家事全般できない大人なのに未だ真剣な顔をして、子供扱いするラヴィさん‥。このちぐはぐな感じ面白いな。そっと手を握り返すと、ラヴィさんがハッとした顔をして、自分が女性に耐性がないのを思い出したのかみるみる顔が赤くなっていく。



「‥ラヴィさん、よくうっかりしてるって言われません?」

「言われん!俺はしっかりしてるからな」

「へ〜〜、そりゃ頼もしい」

「お前、絶対頼もしいって思ってないだろ!」

「そんな事ないですよ。家事もお風呂も虫も嫌いな大人だなって思ってます」

「お前な‥」

「でも、こうやって心配して手を繋いでくれる優しい大人だとも思ってますよ」



そう言うと、ラヴィさんは動きを一旦停止したかと思うと、耳まで赤くなって、


「あ、当たり前だ!!」


と、叫ぶので私は思い切り笑って睨まれてしまった。ごめんって。




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