ガチャと魔法。
ガチャン!
と、ガチャのつまみを回すと、今度は黄色の丸い球体が出てきたけれど‥、いつもはただの丸い球体なのにその切れ目の所に工事現場によく見かける黄色と黒の縞模様のシールが貼られている。
「なんだその模様は‥。何か意味があるのか!?」
「耳元で叫ばないで下さい‥。これは工事現場にあるマークみたいな物ですよ」
「工事現場?なんでそんなマークがあるんだ」
「危ないからここは通っちゃダメって意味があるんです」
「では、それは危険な物なのでは?!」
「‥それは神様に聞いて下さい」
神様が出した物が危険だったら、私は絶対にクレーム入れるぞ。
ハラハラした顔のラヴィさんを横目に私はシールを剥がして、丸い球体をクルッと回して開けると、そこには土嚢が重なったオモチャが入っている。
「‥なんだそれは?何か入っているのか?」
「そうですね。工事現場でよく置かれてる土嚢‥ですけど」
「土嚢??なんで土を??」
ラヴィさんが不思議そうに土嚢のおもちゃを見ているけれど、神様のいくつか出してくれたガチャを思い出すと、何かしら役立つ物だった。という事は、これも役に立つはず‥。
砂と、火事‥。
「あ、火事だ!」
「はぁ?火事??」
「山火事で水がない時、砂を撒くんです!」
「砂を‥、そうか!火元を断つという事か!」
「そうです!あ、でも土の精霊‥とかいます?」
私がラヴィさんに聞くと、ニンマリ笑って頷いた。
「その土嚢もどうせお前が手の上に出せば大きくなるんだろう。魔法と精霊を掛け合わせて、火事の現場に降らせよう」
「は、はい」
馬から降りて、手から土嚢のオモチャを地面に置くとあっという間に大きな土嚢になった。ラヴィさんはそれをまじまじと見てから、両手を上に上げる。
『原初の神の万物に、祝福の魔女から力を授ける。土の精霊よ起きろ!火に降り注げ!』
ラヴィさんがそう言うと両手から光が空に上がっていき、瞳が緑から青にみるみる変わっていく。
あ、やっぱり瞳の色が変わってる!
まじまじとその横顔を見ていると、土嚢から砂が勢いよく噴き出し、風に乗って、燃えている木々の上に雨のように降り注ぐと少しずつ火が消えていく!周囲で木を倒していた人達が驚いた顔をしつつ、その様子を見ている。
「よし、こんなもんかな」
ラヴィさんが火が消えたのを見て、両手を下ろすと青い瞳が緑の瞳にあっという間に変わっていく。
「ら、ラヴィさん、目が‥」
「目?」
「エルフって、青から緑に変わるんですか?」
「ああ、これは‥」
私の質問にラヴィさんが答えようとすると、
火が消えた事で歓声が上がって、言葉がかき消されてしまった‥。
「すごい‥!火が消えてる!!」
「ラヴィさん、ありがとうございます!砂が火を消す‥考えてみれば、有効な手立てでしたね!」
側にいた男性や、木を切り倒していた人達がラヴィさんと私を取り囲んでお礼を言うので、なんだか大変照れ臭い。なんとかこの輪から抜け出そうとすると、ラヴィさんが私の手をグイッと引っ張った。
「え」
「子供がその辺をウロウロ歩くな」
「だから、ちゃんと名前を呼んで下さい」
「後でな」
くそ、絶対あとで呼ばせてやる。
ラヴィさんは周囲を見渡し、
「火炎茸がまだ残っているなら、手分けしてある程度採っておこう。また燃えたら大変だからな」
皆がハッとして、周囲の人達に声をかける。
そうか、また燃えたら堪らないもんね‥。
「私達も火炎茸を採ってきますか?」
「やめとけ、お前じゃ持てないぞ」
「持てない??」
きのこじゃないの?
ラヴィさんを見上げると、林の奥を指差すのでそちらを見ると、大きな男性が腕に抱えるくらいの赤いキノコで、思わず目を見開いた。
「あのでっかいのが火炎茸?!」
「ああ。あんまり美味くないがな」
「‥それってラヴィさんが調理が下手くそなだけでは?」
私のツッコミに側にいた人がぶっと吹き出した。
‥どうやらラヴィさんの料理が下手なのは皆知ってるらしいな。ニヤニヤと笑ってラヴィさんを見上げると、じとっと睨まれて、
「じゃあお前が料理してみろ」
「いいですよ?じゃあ美味しかったら、ちゃんと名前で呼んで下さいね」
「な!さっき呼んだろ!」
「いや〜〜、楽しみだなぁ〜〜」
そんなことを話しつつ火炎茸をもう少し間近で見たい私が歩き出すと、ラヴィさんが私の手を繋ぎながら、「まったく、困った子供だ」と、ボヤいたのだった。
山火事で砂を撒くというやり方を最近知って、
メモっておいた私です




