異世界でガチャを回せ!後日6
蜂と言ったら殺虫剤でしょ!と、思ったのにまさかのジャムパンのオモチャ。
神様‥、私はやっぱりクレームを入れたいです。
水の中でコンマ3秒で考えていると、周囲の水が自分から離れ、突然ドームのようになって私を覆ったかと思うと、その中にラヴィさんが飛び込んできた。
「あれ?!ラヴィさん?」
「お、お前は!!大丈夫なのか?怪我は?」
「‥大丈夫、です。蜂に刺されないようって水に飛び込んだだけで」
「だから!!その考えを少しは伝えてから行ってくれ!」
「いや〜、咄嗟の出来事で‥。って、この水のドームすごいですね」
「ええい、感心している場合か!ガチャはどうした?」
「‥‥それが、これでして」
カプセルから出した小さなジャムパンのオモチャを手の上に乗せて、ラヴィさんに見せると私と同じように目を見開いてそれをまじまじと見つめた。
「‥‥どういう、ことだ?」
「私にもわかりません」
ラヴィさんは眉間のシワを指で揉むと、
「とりあえず、これは形は変わるのか?」
「‥わかりませんけど、この水のドームから出たら何か変わるかも?」
なにせパンに水は大敵だし?
ラヴィさんは私の言葉に頷いて、
「これからすぐに水のドームを消して、チェルナ達の方へ2人で行くぞ。そのパンに変化があれば、適宜どうにかする」
「わかりました!」
「よし、行くぞ!」
私が力強く頷くと、ラヴィさんが手を上げた瞬間水のドームが足元へとゆっくりと崩れていく。すると待っていました!とばかりに子犬サイズの蜂がこちらへ一直線に飛んできた!
「のわぁああああ!!」
「ヒロ、こっちだ!」
ラヴィさんが私の手をぐいっと引っ張ったその時、持っていたジャムパンがポロッと手から零れ落ちた。
「パンが!!」
地面に落ちていくパンを掴もうとしたその時、パンが急激に大きくなった。
「え?」
パンは本くらいの大きさから一気に布団くらいのサイズに、そしてバスくらいの大きさに変化した。こ、こんなに大きくなってどうするの?それを一緒に見ていたラヴィさんと私は目を丸くすると、ジャムの甘い香りが周囲に立ち込める。
と、それまでこちらを刺そうとしていた蜂達がジャムパンに飛びついたかと思うと、オレンジのジャムをムシャムシャと夢中で食べ始めた。
「た、食べてる?」
驚いてその光景を見ていると、チェルナ君達を刺そうとしていた大きな蜂の動きが止まって、触覚をひくひくと動かすと、突然こちらのジャムパンの方へ飛んできた。子犬サイズの蜂と違って竜になったナズ君のお兄さんくらいの大きさじゃ、このジャムパンはあっという間に食い尽くされるのでは?!そう思ったら、ラヴィさんがオーリさんに叫んだ。
「オーリ、このパンを大きくしてくれ!」
「は、はい!!」
「ナズは大きくしたパンに、ともかく祝福してくれ!」
「わかった!!」
ラヴィさんは両手を光らせて、オーリさんとナズ君の周囲に光のカーテンを垂らし、チェルナ君が私とラヴィさんを光のカーテンでその間守ってくれた。すごい連携だ。
オーリさんがパンのジャムを食べつつ睨みつける蜂にドキドキした顔をしつつ、パンに触れた。
『魔女の祝福よ、パンを大きくして!!』
そう叫ぶと、ジャムパンは更にみるみる大きくなっていく。
バスサイズから電車、大きなプールくらいのサイズになると大きな蜂がジャムの中に入ってすでにジャムを食べている蜂達に混じってジャムを食べ始めた。
「ナズ!祝福だ!」
『わかってる!なんか、起これーーー!!!!』
ナズ君が叫ぶと、食べ始めたジャムが急に粘度の高いとりもちのような物に変わった。蜂達も驚いて、そのジャムから逃れようと体をもがくが、もがけばもがくほど粘度の高いジャムの中に体が埋まっていくと、ラヴィさんがチェルナ君に視線を送る。
「チェルナ!光の精霊を呼ぶぞ!」
「はい!」
2人が手を白く光らせ、大きな蜂達に手をかざす。
『『光の精霊よ!このモノを追い払え!!!』』
眩しい白い光が黒い蜂達を覆うと、黒い蜂の体がビクビクと震え出したかと思うと、黒い雲達がバラバラになって、あっという間に白い灰のようになってホロホロと崩れ落ちると、ジャムパンも同じように崩れ落ちて跡形も無くなった。
けれど、その中央に以前オーリさんを困らせた緑の長い髪をした妖精と、黄色の髪をまとめた妖精がジャムまみれになって目を回していた‥。




